第10話
フェム達にも手伝ってもらって、牙や肉などを村へと運ぶ。
巨大な牙をみた村長は腰を抜かした。
村人は肉を見て大喜びし、ミレットは「すっごーい」を連呼した。
しれっとフェムは小さくなって、村の中まで付いて来ている。
「もふもふだ!!」
フェムは子供たちに大人気だ。
肉を各家庭に分配した後、俺はミレットの家に呼ばれた。
コレットはまだベッドで寝ている。
「コレット、調子はどう?」
「もう大丈夫なの。でもお姉ちゃんがまだ寝てなきゃダメって」
「まあ、今は寝ておいた方がいいぞ。また具合悪くなったら嫌だろう?」
「うん」
そんなコレットのベッドにフェムが顎をのせる。
まるで「撫でていいのだぞ?」と言わんばかりだ。
「かわいい!」
コレットにもふもふされて、フェムは気持ちよさげだ。
コレットはフェムを撫でながら、
「おっしゃん。ありがとうね」
「いや、まあ、気にしなくていいぞ」
幼女にお礼を言われると照れる。
「おっしゃん」
「どした?」
コレットがほほにキスをしてくれた。
「お礼」
「あ、ありがと」
フェムがじとーっとした目でこっちを睨んでいる気がするが気にしない。
「おっしゃんは姉ちゃんのことどう思う?」
「ミレットか?」
「うん」
「どうっていわれてもなー」
正直返事に困る。
「姉ちゃん、料理もうまいし、優しいし。両親が死んだあと、薬師をしてコレットのことやしなってくれるし」
「うん」
「手先も器用で服とかかごとか作るのうまいし。お嫁さんにしたい男の子いっぱいいるんだよ」
「もてもてなんだな」
「おっしゃんは、姉ちゃんのこと好き?」
「えっと……」
嫌いではないが、そういう対象として考えているわけではない。
なにより娘でもおかしくない年の差だ。
「きっとね。姉ちゃんはおっしゃんのこと好きなんだよ。だからお嫁にもらってあげて」
「え、えぇ……」
「今すぐじゃなくていいから、考えてあげてね!」
「お、おう」
「それと、今言ったことは内緒ね?」
ミレットにそんなこと言えるわけない。
「うんわかった」
「なになに、なんのはなし?」
そこにミレットがお手製のお菓子を持ってやってくる。
「なんでもないよ!」
「えー、気になるなー」
楽しそうに姉妹が笑う。
ミレットの家で夕食までごちそうになった。
猪の肉は少し硬いがうまかった。
夕食の席で、ミレットが聞いてきた。
「おっしゃん、猪って大きかった?」
「うん。ものすごく大きかった」
「どのくらい?牛ぐらい?」
「いや、もっともーーーと、でかかった。この家の五つ分ぐらいあった」
「えー! すっごーい」
コレットは元気に驚いた。
「あんなでかい猪がいたら、怖くなって衛兵も募集するよな」
ミレットが首を振る。
「このあたりは猪と狼がおおいけど……」
「そういえば、衛兵募集の紙にもそんなこと書いてたね」
「うん。でも、そこまで大きい猪がいるなんて聞いたことない」
「なるほど。でも薬草を食い尽くされるぐらい猪の被害は増えていたんでしょ?」
「例年より、数も多くて、身体も大きい猪が増えていたのは事実かな」
「ふむー」
『安心するがよい。アルが巨大魔猪を倒してくれたから残りの雑魚は人里に迷惑かけない程度に狩ってやるぞ!』
フェムが自慢げに尻尾を振る。
「ふぇむすごーい」
コレットがフェムの頭をわしわし撫でた。
当面、魔猪も魔狼も村の脅威ではなくなった。
明日からは温泉入りながらまったりしよう。
俺はそう考えながらも、猪の魔獣があそこまで大きくなることの異常さに胸がざわつくのだった。
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