正しさの意味と自由の刑

@fly_taku

第1話 サイダーキャンディ

 

 高校2年に上がった都立高校生、宇佐美匠海は昨今流行っているウィルスが猛威を奮っているというニュースを聞き流しながら紅茶を口に運ぶ。

「まぁ、俺には関係、無さそうだな……。」

彼はそう呟くと、カップに残る2口程度の紅茶を口へと流した。

 

 金曜日の6限目が終われば大抵の高校生諸君は、少なからず喜怒哀楽の感情の「喜」の字を頭に思い浮かべ、各々の友人や恋人と遊びに出かけに行くことが多いだろう。宇佐美もその1人であったが、しかし彼の頭の中には喜怒哀楽のどの字も浮かんでは無く、強いて言えば面倒の面の字が浮かんでは消えてを繰り返していた。

 そうしたまま約束の時間まで無人の教室で黄昏ていると、

「あれ匠海だ……ん、金曜日も終わったって言うのにつまらない顔するじゃん?」と声をかけられた。

「あぁ、二葉か。忘れ物でもしたのか?」宇佐美は彼女の質問には触らないように話し返す。

「…いや?部活も暇だし誰か教室に残ってないかなぁってさ……。」話を変えられた事には気づいたものの、そこに突っ込むのは面倒らしい。続けて

「あ、そう言えばサイダーキャンディあるけど、匠海食べる?」と二葉は言う。

「(甘いのは好きだな……。)貰う。ちょうだい」二葉からサイダーキャンディを2粒貰い、1粒を口に入れた。

その後はしばらく二葉と会話をし、彼女は部活があるからと言って教室を出て行った。

 再び教室は無人になる。宇佐美は二葉との会話を思い返していた。「…つまらない顔するじゃん?」

それもそのはず、宇佐美は1つ上の学年の角田に喧嘩話を持ち込まれていたのだ。なんて面倒くさいんだ。……そもそも何故俺が?俺が何をした?彼は何が気に食わない?

 これらの疑問が宇佐美の頭の中を埋めつくし、答えを出そうとすればする程沼にハマっていった。今にもこぼれそうなため息を何とか飲み込み、代わりに二葉から貰ったもう1粒のサイダーキャンディを口に押し入れた。

「うん、まぁとりあえず行ってみよう。」

宇佐美は半ば強引に自らの「考える」という動作を止め、角田から来たLINEに書いてある、いわば「決闘の地」へと自転車を走らせた。視界の真ん中に映る真っ赤な夕日は二葉に貰ったサイダーキャンディのように赤く丸かった。

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