AGENT-エージェント-

yuyu

プロローグ

第1話 とある絵本

 この世界には、かみさまがいます。

 かみさまはみんな平等に、時にやさしく、時にきびしく接していました。なのでみんなもかみさまを尊敬していました。



 ある日、かみさまは自分が犯した罪に気付いてしまいました。


 わたしたち人を創ったことです。


 人にはいい人もいれば、わるい人もいます。

 そのわるい人たちが暴れてしまい、かみさまが創ったものをこわしてしまいました。


 どうにも手におえなくなったかみさまは考えます。


 考えに考えた結果は、その世界をあきらめることでした。

 かみさまはこのことを一生こうかいしましたが、これしか方法がなかったのです。


 そして新しい世界を創りました。

 わるい人たちがいないように、と願って。


 しかしまたその人たちがあらわれて、かみさまはまたしも諦めてしまいます。


 かみさまは何度も何度も同じことをくりかえしました。

 が、何度も何度もあきらめました。


 かみさまは疲れてしまいます。


 そこでかみさまは


『こころがあるからいけない』


 と、答えを出し、感情のない人を創りました。


 しかし感情のない人はつまらず、かみさまはあきてしまいます。


 しかし感情のある人を創ると、以前と同じになってしまう。

 それを恐れたかみさまは、感情のない人でがまんしました。


 そしてかみさまは、かみさまになったことをこうかいしました。




 とある豪邸のリビングにある大きい暖炉の前で、ロッキングチェアに座っている母親が、同じく膝の上に座っている娘に読み聞かせをしていた。母親が読み終えた本を閉じた時、暖炉で燃えている薪が音を立てて二つに割れる。


「お母さん、もう一度読んで!」


 長い赤毛で二つ編みの女の子は、同じく一つ編みの母親におねだりする。


「ごめんね。そろそろ仕事なの」

「えー」


 娘は体を揺らして愚痴を漏らす。暖炉に焚べられた薪が共鳴するようにまた割れた。

 木製のドアを叩く音がコンコンと、リビングに鳴り響く。


「入れ」

「失礼します」


 母親は男気のある口調に変えて返答する。

 ドアが開き、男が入室した。がっしりとした体躯が執事服越しからでもわかる。


「アリエチカ様、そろそろお時間です」

「わかった。今行く」


 アリエチカは娘を膝から降ろして立ち上がる。絵本を本棚に戻し、着ていたワイシャツの上から無数の勲章がぶら下がっている濃緑色の常装を着用する。

 そしてリビングから出る前に、駆け寄ってきた娘に対して膝を曲げた。頭を撫でて膝を曲げ、娘の目線と合わせて話し掛ける。


「帰ってきたらうーんと読ませてあげるからね。皆の言う事を聞いて、ちゃんと大人しくしているのよ」

「うん!」


 娘は元気良く答える。

 アリエチカが腰を上げ、執事と共にリビングから出て職場へ向かった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る