第25話 エピローグ
「真城せんぱーいっ!今日って流星群見れますかー?」
「ミナちゃんまたそれー??流星群はそんなに毎日流れないよー?」
「えー」
「もうミナってば…。すみません、真城せんぱい。
ミナ、『校舎の裏庭で二人きりで流星群を見た二人は結ばれる』って噂、すっかり信じこんじゃって…」
「あはは。いい人と、結ばれるといいねミナちゃん♪」
「はいっ!!それじゃ、お先に失礼します!!」
そういって後輩のミナちゃんと、優那ゆなちゃんが部室を出ていく。
斗真がいなくなって一年がたち高校二年生になったあたしは今、天文部という部活を作りその部長を務めている。
部員はいまださっきの一年生の二人と、あたししかいないような状況だ。
(もう少し部員増やしたいな… ね 斗真)
斗真の残していったあの望遠鏡をぎゅ…っと抱きしめて誰もいなくなった部室でそんなことを思っていると、部室内にノックの音が響き渡り続いて誰か男の子の声がする。
「すみません、入部希望なんですけどー」
「はーい、どう…ぞ」
部室の扉を開いて、立っていたその男の子を見ておもわず言葉を失う。
優しそうな目元、柔らかそうでちょっとクセのある髪。
それはまるで斗真を思わせるような面影があった。
何かに気づいたように向こうも黙り込んで、一沈黙置いた後あたしは男の子の用を思い出して対応にあたる。
「あ。あ…っ、ごめんなさい。ちょっとある人に似てたものだから…。それで、えーと入部希望、だったよね?この入部届に学年とクラスと名前書いてくれるかな?」
「あ。はい」
あたしが入部届を手渡すと、すぐそばにあったテーブルに用紙を置いて記入を始める。
「今、男のコで天文部は君が初めてだよ。どうして天文部に?」
「兄が…。小さいころから、兄が星が大好きで俺も好きになったんです。……よし、できました」
「はーい。わかりまし…た」
書き上げた入部届を男の子から受け取り、参考がてら読んだ名前で目がとまる。
「え 名前…これ」
「新真にいま。新真です。風桐 新真」
そこで斗真のなくなったとき、病室で斗真の傍らで母親と一緒に泣いていた男の子が思い出される。
(斗真の、弟だったんだ…。
だから似てるんだ。優しそうなその瞳も、その髪も…)
考え出したら止まらなくなってたまった涙は頬を伝って床に滴り落ちる。
「せ、せんぱい?」
突然泣き出したあたしに、どうしたらいいのかわからず新真くんは困った顔あわてる。
「えと…俺、何か悪いことしましたか?」
「ううん。違うの。違うけど…」
泣き顔を見られたくなくて新真くんの胸に顔をうずめる。
「ごめん、泣き顔見られたくないから…」
「せんぱい…。」
新真くんがしばらく黙り込んだ後、突然思いついたようにこう切り出す。
「じゃ…俺からも一つ、お願いいいですか?」
「え?お願い…?」
「突然で…あの、変なのかもしれないですけど…。
今週末の流星群、校舎裏で一緒に見てくれませんか?」
『校舎の裏庭で二人で流星群を見たら結ばれる』。
ふとミナちゃんたちの言っていた噂が頭を巡る。
「それって、告白?」
「…かもしんないす。」
あたしがくすっと笑ってうずめた顔を上げると、照れたような顔で横を向いて視線をそらす。
「やっぱおかしいですかね…。初めてあった人にこんな想うっていうのは」
「そうかな?あたしは素敵だと思うけどな」
頬を赤らめながら目をそらしたままの新真くんから離れて、あたしは軽く背伸びをして窓に歩み寄ると部室の窓からすっかり暗くなった空に瞬く星を見上げる。
(ね。斗真。まるで”運命”みたいだね…。)
幾千もの星のなか、一番小さな星が一度だけキラリと瞬いた。
トウメイ・カレシ はるた。 @utahalu
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