第11話 透明彼氏
透明彼氏
「はあぁーっっ…」
見覚えのあるその笑顔から無言で視線をそらすと、大きくため息を吐きながら頭を抱える。
(ダメだ…!!斗真の幻覚まで見てる、あたし。…よし!!)
気合いを入れ直すように気持ちを落ち着け、いざもう一度うつむかせた顔をあげると今度のそれはあたしのベッド付近で漂いながら浮いている。
「なぁなぁ!! 奏お前ぬいぐるみと寝てんの?かっわいー‼」
「○△◆☆□я◎@Σーーーっ⁉
てか、別にぬいぐるみいたっていいじゃないー‼」
「なんで、文句のとこだけペラペラしゃべれてんだよ。その前なんかエイリアンみたいな言語喋ってるのに…」
「誰がエイリアン…‼~っじゃなくて、どうして斗真がここに……」
(斗真はもういないはずなのに。もう逢えないはずなのに…)
変わらない、斗真の笑顔。
それを見たとたん抑え込んでいた、またせき止めていた何かがあふれてきて止まらなくなる。目頭が熱くなって、涙が頬を伝うのを感じる。
「なんで、ここにいるのよ…。とうまぁー…?」
「おっと…」
思わず勢いづいたまま斗真に抱きつくあたし。
少し体勢を崩しつつも、斗真はしっかりと抱き止めてくれた。
「ほら なきやんだか?」
「ん…」
斗真が、優しい声で顔をのぞきこんでくる。
「斗真…ちょっと 動かないで」
「え?なんで…」
すびーっっっ!!
「ふぁ…ぜんぶでた」
「ってなに満足げに人の服に鼻水ふいてんの!!
普通ここは涙拭くーとか、そういうかわいい展開じゃないの!?
あーあ…これ、おちるのかぁ…?」
「ごめ… ティッシュが遠かっ…」
すびーっっ!!
「ごめ… ティッシュ、間に合わなくて…」
「はぁ…。 もう、いいよ」
「そっか、いいならよかった。あ、まだちょっとでるかも…」
ずびーっっ!!
「………………。」
「それで、どうして斗真がこんなところに…?」
「そんなの 決まってるだろ?約束、したからさ」
「やく…そく…?」
まだ涙声のあたしの声が、精一杯声を絞り出す。
「俺はずっと… 奏に ついててやる。って」
(ん゛あれ…?
なんか今の斗真の”ついててやる”って発音、やけにおかしかったような…)
不思議なほどに引っ掛かりを感じた率直な疑問を、恐る恐る斗真に投げかけた。
「あのぅー…それって、心の中にずっと寄り添うー…的なあれだよね?」
「心の中?寄り添う? 何言ってんの、奏?」
「や 何言ってんの、はこっちのせりふ。だから、つまりー…」
「俺、奏の後ろにずーーっと”憑いててやる”。
そしたら、ずっと一緒にいられるもんな♪
んじゃそういうわけだから、しばらく居候になりますわ。よろしくな」
「ついてるってそっちーー!?」
こうして、あたしの家に透明彼氏が居候することになりました。
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