上 15

視界がますます狭くなる。薫は孤島にて、独り限界を迎えていた。見ず知らずの男たちに抵抗する術なく、良い様にされている。薫は時が過ぎる事だけを願い静かに目を瞑る。


薫が意識を失いかけていた頃、閉ざされた地下室に白衣のボスが現れる。


「おいお前ら!また侵入者だ!捕らえに行くぞ!」

それを聞いた男達が薫を乱暴に蹴り飛ばし、地下室を立ち去った。


ここが孤島である事と立て続けの侵入者という2つがミスマッチし奇妙な違和感を覚える。まさか、薫を助けに?レスキュー隊でも来たか。ついに救世主の登場かと薫が期待するも、しばらくして現れたのはまたしても白衣のボスだった。


「面白いモノを見せてやろう。」

腕を乱暴に掴まれ、見知らぬ部屋に案内される。



「何すんだ!やめろぉお!」

そこにいたのは、最愛の夫、隼人だった。


「隼人!?どうして!?」


「薫!?お前ら俺の薫に何しやがったんだアァ!」

隼人は獣の様に吠える。隼人は必死にもがく。お互い、逃走できる気配は無い。


「もういい。そこまでだ。俺は嫌いなんだ。お前らみたいな野郎共が!」

そう言って白衣の男が隼人を殴る。


「よし決めたぞ。お前らには今から実験台になってもらおう。あれを持ってこい!」

すると、男達が部屋の奥からなにやら椅子の様な物を運んできた。


「これは電流マシーンだ。人間に電気を通す実験を行う。成功するといいな。」

白衣の男が嘲笑う。


「やめて!お願い!隼人を殺さないで!」

隼人がマシーンとやらに座らされ、必死に薫が叫ぶ。


「さあスイッチオンだ!目を瞑っておいた方が良いぞぉ!」


「うぎゃあああ!離せ!クソ共!」


「死なないで、隼人、隼人、隼人おお!」

薫の叫び虚しく白衣の男がボタンを押そうとしたその瞬間、


ドォン!


けたたましい轟音が鳴り響く。



「何の騒ぎだ!?」

白衣の男が戸惑い、リモコンを落とす。


「どうやら、研究所にヘリコプターが墜落した模様です!」

部下の男が走ってきて言う。


「何だと!?一体何者だ!!」


「ボス!大変です!ヘリが墜落して制御装置がやられました!」


「制御装置だと!?本気で言ってるのか!?あそこはこの島の全てだぞ!あれがやられたらこの島の怪物共は…」

白衣の男が、部下の胸倉を掴み吠える。

しかしなぜ、ヘリコプターが落ちて来たのだろうか。こんな辺境の地に。


「ボス!もうこの島は危険です!早く逃げましょう!」


「言われなくても分かってるよ!そいつらは放っておけ!行くぞお前ら!」

白衣の男がそう言うと、部下の男達が薫を乱暴に突き飛ばした。

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