陰謀のブルースカイ

住原かなえ

上 01

風は強風、しかも強烈な向かい風だ。


「本当に降りる気なんですか?」

フラット・ヘリコプター社の運転手がそう言う。


「ええ。取材なもんでね。どうしても行かなければならないんですよ」

スタッフの六井が険しい面持ちで答える。


「そうですか。それではそろそろドアを開閉しますので、準備してください」

運転手も、その真剣な態度に根負けして、説得するのを諦めた様子で言う。


扉がバタンと開く。

突風が入り込んでくる。

鳴り響くプロペラの轟音がやけに大きく感じてしまう。


一気に緊張感が漂う。

カメラの長戸も焦りを隠せない様子だ。


本当に、ここから降りるのだ。

私は下を見て呆然とする。



「西角、早く行け」

六井が低い声で言う。


「えっ!?私ですか?」

私は困惑する。


私は、最後に飛び降りる筈では…



そう言おうとした時、背後から何かの重力を感じた。


重力の法則に従って、前に体が押し出される。



えっ。



私は茫然自失とする。


足の下に、あるべきモノは既に無かった。


快晴の空の中、私は太陽に別れを告げられてしまった。


下を見れば、広大な森林が私を待ち構えんとしていた。

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