6章

第253話 自宅の朝

 真祖を倒し、転移魔法陣を整備して自宅に帰った俺は、ガルヴと一緒にすぐにベッドに入った。


 ガルヴはモフモフなので、抱き心地がいい。

 真祖は倒したが、残党がどれだけいるかわからない。

 また、昏き者どもは近いうちに良からぬことをし始めるに違いないのだ。


「とはいえ真祖を倒せたわけだし、奴らもしばらく大人しくなるかもな」

「……わふぅ」

「ガルヴもそう思うか?」

「……わむ…………わぬ……ぅ」


 返事がおかしいので見てみると、ガルヴはもう眠っていた。

 ベッドに入ってから一分もたっていない。

 つまり、それほど疲れていたのだろう。


「ガルヴもお疲れさま」


 俺は労わる意味を込めてガルヴをやさしく撫でる。

 ガルヴは仰向けになり寝言みたいに鳴きながら気持ちよさそうに眠っている。


 その姿を見ていると、俺も眠くなってくる。

 ガルヴを撫でているうちに、俺もゆっくりと眠りに落ちた。


 …………

 ……


「がうがうがうっ!」


 ふと気が付くと、仰向けの俺の上にガルヴが乗っかっていた。

 吠えるだけならまだしも、べろべろ、べろべろと顔を舐めてくる。

 とてもではないが、眠り続けることができない。


「ガルヴ、起こしてくれてありがとう」

「がう!」


 ガルヴはどや顔をして、尻尾を振っている。

 とりあえず、俺は褒めてガルヴの頭を撫でた。


 窓の外を見たら、明るくなっている。

 とはいえ、まだ日の出からさほど時間は経っていない。


「疲れているから、もう少し寝かせてくれ」

「がう?」


 ガルヴは太陽が昇ったら朝。朝なら起きるとしか考えていない。

 そして、朝起きる、つまりご飯と考えている。

 ガルヴは二度寝の概念が、よくわかっていないようだ。

 ガルヴにも二度寝の気持ちよさを教えてやるべきだろう。


「ガルヴも、もう少し寝ときなさい」

「がうー?」


 きょとんとしているガルヴをころんと仰向けに転がし、お腹をやさしく撫でる。


「ガルヴも昨日はがんばったからなー」


 ガルヴの尻尾がばっさばっさと揺れている。

 そのまま、しばらく撫でているとガルヴが眠りに落ちた。


「がぅふぅー」

 気持ちよさそうに寝息をたてはじめた。


「ちょろい」


 ガルヴは体は大きいが、まだ子狼なのですぐ眠ってしまっても仕方がない。

 それに子狼だからこそ、ガルヴには睡眠が必要だ。

 いっぱい眠って、大きく育って欲しいものだ。

 そして、俺もガルヴを撫でながら二度寝をした。


 …………

 ……


「ここここここ」

「……ゲルベルガさまか」

「ここぅ」


 俺が起きると、ゲルベルガさまが俺の枕の横にいた。

 そして、くちばしで俺の耳をやさしくかんでいる。


 窓の外を見てみた。二度寝を始めてから一時間といったところだろう。

 つまり、まだ眠っていてもいい時間だと思う。


「ゲルベルガさま、わざわざ起こしに来てくれたのか」

「ここ」

「ゲルベルガさまも、昨日はお疲れさま」

「ここぅ」


 ゲルベルガさまも俺たちと一緒に狼の獣人族の集落を回った。

 そして、ヴァンパイアが大勢襲来したときには、鳴き声で活躍した。


「ゲルベルガさまもお疲れだろう。ささ、ここは布団の中にでも」

「こ?」


 きょとんとしているゲルベルガさまを布団の中に入れる。

 そうしてから胸の前で抱いて、優しく撫でる。


「まあまあ、ゲルベルガさまもゆっくり眠って疲れをとるといい」

「……こぅ」


 布団の中は暗い。

 暗い中で優しく撫でたおかげか、ゲルベルガさまがうつらうつらしてきた。

 そのまま撫で続けると、ゲルベルガさまも眠りに落ちた。


「さて」

 そして、俺は三度寝に入った。


 …………

 ……


「ここここ」

「がふぅがふぅ」


 今度はゲルベルガさまとガルヴが一緒に俺を起こそうとしていた。

 ゲルベルガさまは俺の耳辺りを優しくつついている。

 ガルヴは俺の顔をベロベロ舐めている。


「もう起きたのか」

「こ」「がう」


 俺が起きたことに気づいて、ゲルベルガさまもガルヴも嬉しそうだ。

 ガルヴが尻尾をバッサバッサさせるので、布団の中に空気が入る。

 ゲルベルガさまも控えめに羽をバタバタさせていた。


「ゲルベルガさま、ガルヴ、お腹が空いたのか?」

「ここぅ」

「がう!」


 どうやらお腹が空いたらしい。


「じゃあ、朝ご飯を食べに行くか。俺もお腹が空いた」

「ここ!」

「ががう!」


 ベッドから出ると、ゲルベルガさまとガルヴはお行儀よくついてくる。

 ゲルベルガさまはガルヴの背中に乗っていた。

 そのまま、みんなで食堂に行くとミルカが走ってやってくる。


「お、ロックさん、起きたんだな! おはようだ!」

「ミルカおはよう。フィリーとタマもおはよう」

「ロックさん。おはようございます」「わふ」


 フィリーとタマも食堂にいた。

 タマは俺に気づくと足元にゆっくりと寄ってくる。

 そして体を静かにこすりつける。

 そんなタマを撫でていると、フィリーがつぶやくように言った。


「ロックさん。興味深い魔道具を見つけたらしいじゃないか」

「爆弾のことか? 爆弾は調べてもらいたいんだが、文字通り爆散してしまったからな」

「話だけでも聞かせて欲しいのだが」

「そうだな。わかった」

 俺はフィリーに爆弾について語ることにした。

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