第61話

 俺は適当に美味しそうな食べ物を屋台で買う。

 シアやルッチラ、ミルカは俺と食べ物は同じなので問題ない。

 だが、ガルヴはあまり濃い味のものは避けたほうがいいだろう。

 ゲルベルガは果物とかがいいのだろうか。


「ガルヴは生の肉とかのがいいのか?」

「がう?」

「霊獣だからあまり気にしなくてもいいでありますよ?」

「そうなのか?」

「玉ねぎとかにんにくとかも余裕であります」

「そ、それはすごいな」


 さすがは霊獣である。ただの狼ではないらしい。

 とはいえ、玉ねぎを与える気にはならない。


 適当に食肉販売店に向かって、肉を買った。


「ほれ。ガルヴ食べていいぞー」

「がうがう!」

「ガルヴのおやつが、おれの普段のごはんよりも、ずっとうまそうだ」


 ミルカがショックを受けていた。

 これからは美味しいご飯を食べさせてあげようと思う。


「ルッチラ。ゲルベルガさまはどんな食べものが好きなんだ?」

「そうですね。やっぱり虫とか好きですよ」

「虫?」

「昆虫とか。あとは果物とか野菜も好きですね」

「なるほど」

「ここ」


 ゲルベルガはルッチラに抱えられたまま、期待のこもった目でこっちを見ていた。


「ゲルベルガさまは、今なに食べたい?」

「こぅ」

「果物とか野菜でいい?」

「こぅ!」


 果物や野菜でいいらしい。とても、よかった。

 虫と言われたら、捕まえるのが大変なところだった。

 適当に野菜などを売っている店でスイカを買った。


 店を出てから、スイカを切ってゲルベルガにやる。


「こうこぅ」

 喜んでいるようなので良かった。

 とはいえ、ゲルベルガ一羽でスイカ丸ごと全部を食べられるわけではない。


「ミルカも食べる?」

「いいのかい?」

「いいぞ。ゲルベルガさまだけでは食いきれないからな」

「コゥ!」

「ほら、ゲルベルガさまも食べていいって言ってるぞ」

「ロックさん、ゲルベルガさま、ありがとうな!」

 ミルカもスイカを美味しそうに食べていた。



 ゆっくり歩いて、自宅に帰ると、家の前にセルリスがいた。


「家に帰ったんじゃないのか?」

「帰ってから、走って来たのよ」

「そうか。早かったんだな。用事はもういいのか?」

「もちろんよ」


 それから、セルリスはミルカに向けて言う。


「掃除道具見せてちょうだい」

「いいぜ、こんなのがあるんだ」


 どや顔で掃除道具をミルカは見せていた。


「ふむふむ。じゃあ、これとこれ借りるわね」

「いいけど。セルリスねーさん、それをどうするんだい?」

「風呂を掃除しようと思うのよね」

「掃除はおれの仕事だぜ。任せておくれ!」

「じゃあ、二人でやりましょうか」


 そういって、二人で風呂掃除に向かった。

 なぜセルリスが風呂にこだわるのかはわからないが好きにさせておこうと思う。


「せっかくでありますし、あたしも通路の補強手伝うでありますよ!」

「ココッ!」


 シアとゲルベルガは張り切っていた。

 チンピラやその親玉を退治したりもしたが、今日の目的は秘密通路の補強だ。


「そういえば、エリックにも今日、顔を見せるって言ってたな」

「急いだほうがいいかもですね」


 ルッチラは真剣な表情だ。

 国王たるエリックを待たせるわけにはいかないと考えているに違いない。


「そうだな。急ぐか。シアも頼む」

「任せるであります!」

「がう!」


 俺たちは地下室から、秘密通路に入った。

 ルッチラが魔法灯マジックライトをつけて周囲を照らしてくれる。


「通路も補強しながらいこう。移動が遅くてすまないな」

「気にしないでほしいでありますよ!」

「がう」


 俺が通路の壁に硬化ハードニング状態固定パーマネンスをかけながら進む。

 面倒だが手を抜くわけにはいかない。

 ゆっくりと進んでいく。


「毎回魔法灯を使うの大変だし、後で魔道具の灯りを設置するか」

「そのほうがいいかもですね」

 エリックが通るとき、真っ暗では不便だ。


 ゆっくりと進んでいくと、昨日応急処置をした箇所に到着した。 

 改めて、下水道とつながっていた部分をふさぐ。


 下水道側はなるべく元の石を使う。真新しい岩を使うと目立つからだ。

 砕けてしまった部分など、やむを得ない部分だけ買った石材を切断して使った。


 そうしておいてから、厳重に魔法をかける。

 硬化と状態固定だ。


「ロックさんがかけた硬化に状態固定なら、侵入するのは、まず無理でありますよ」

「こっこけ」


 シアの言葉にゲルベルガも同意しているように鳴く。

 ゲルベルガは徒歩で俺の後ろをついてきている。

 時折、虫などを捕まえて食べているようだった。

 ゲルベルガがいれば、屋敷に虫が湧くこともなさそうだ。ありがたい。


「通路側の方には新しい石を積もう」

「了解であります!」

「がう!」


 シアと手分けして、石を積む。大きさが合わない石は魔法で切断しながら積んでいった。

 一方、ガルヴはふんふんしきりに臭いを嗅いでいた。

 もしかしたら、縄張りを主張するつもりかもしれない。釘を刺しておかねばならぬ。


「ガルヴ。縄張りは主張するなよ」

「が、がう!」


 ガルヴはびくっとした。油断も隙も無いとはこのことである。

 通路におしっこされてはたまらない。


 穴を綺麗にふさいだ後、魔法で補強する。

 それからはまた通路の補強だ。慣れてきたのでスピードも速くなる。


 あっという間に、エリックの寝室の隣の部屋に通じる壁までの通路の補強を完了した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る