ドジっ娘ちゃんは愛されたい。〜フロレンス魔戦記外伝〜

駿 銘華

第1話 ニューゲームにようこそ。

 かちゃかちゃ。

 ぴっ。


 メールアドレスとパスワードでログイン。


 それは現実リアル理想ゲームが交差する瞬間。


 大抵のヒトはスマホやパソコンチップに記憶させてるけど、


 私は別。


 自分でタイプする瞬間が楽しいの。


 だって、そうじゃない?


 それは自分にだけ与えられた特権だから。




 さあ、新しいものがたりニューゲームへようこそ


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 私、里山みかんはネットの記事に『オンラインR P G』ってモノが、仕事のストレス解消にイイってカイてあったからなんとなしにはじめてみたの。だって『初回無料』だって言うじゃない? だから物は試し、なになに、今は『フロレンス魔戦記』が一番人気なんですって。どれどれ、ふむふむ。あのドラクエとF Fをモチーフにした世界観なのね。それなら私もヤッた事あるし、面白そうだわ。よしっと、コレに決ぃーめたっ!


 最初は会員登録シなくちゃイケないの? まあ、無料だしイイかな。


 かちゃかちゃ。

 ぴっ。


 メールアドレスとパスワードでログインね。


 今度は何? 『自分のアバターを決めて名前をつけましょう』だって? うーん、ナニにしようかな。アバターって『自分の分身ってコト』よね、なるべく可愛らしい魔法少女系の女の子にシちゃお。名前はそうねぇ、そうだ、『オレンジパイ』にしよう! それはね、私が手作り出来て大好きなお菓子だからよ。


 次はと言うと、『ジョブと初期装備を決めましょう』だって。やっぱり魔法使いと言えば『魔道士』かな? 初期装備って持ってる武器の事よね。魔法使いには『ステッキ』が必須、最初は無料の『小枝トゥィングの杖』でイキましょう。


 さあ、新しいクエストの始まりよ。


 ここはオンラインR P G『フロレンス魔戦記』の中の第一階層のムラヴィレッジ


 まずはギルドね。ここで冒険者として登録よ。あらあら。『女剣士』もオオイのね。みんなツヨそうな名前だわ。そしてナニより必要なのは『情報収集』よ。まずは勇者たちが集まる『酒場』にイッテ知識を広めましょう。


 スタタタタ


 ここかぁ。名前は『ラプソディ』ってイうのね。


 ガチャ

 カランカラン


 まあ、やっぱりコワモテの人ばっかり集まってイルわ。さあ、バーにイッテ注文シましょ。


「オレンジビールをイッパイ下さいな」

「あらぁ、アナタは新イリね。名前が『オレンジパイ』だから『オレンジビール』なのね、カワイ♡。ハイ!」


 ゴトッ

 んぐんぐ。ごっくん、ぷはー


「まあ、イイ飲みっぷりだコト♡」

「どーもー。ところでおネェさんのお名前は?」

「アタシは『リンダ』ヨ」

「ネェ、リンダさん。この『フロレンス魔戦記』にはナニが必要かオシエテもらえマスか?」

「そうねぇ。まずは『コル』かしら」

「コル?」

「このファンタジー・ワールドの通貨、つまりオカネね」

「えっ?『初回無料』ってカイてあったのに?」

「コルはモンスターをやっつけたり、仕事をこなす事でゲット出来るわヨ」

「まずはどれくらい必要なんですか?」

「そうネェ。10万コルくらい?」

「イレマンコルっ!?」


 いきなりヒワイな言葉が出てキタわっ」


「オレンジパイちゃん、アナタ変な事考えなかった?」

「イエイエそんな。私はただ・・・」

「小学生のお遊びじゃナイんだから。ぷっ。」

「笑わないでクダサイよっ!」


 私はおつまみにビーフジャーキーを頼むの


 もぐもぐ

 シャキシャキ

 ごっくん


「それでオレンジパイちゃん、アナタ今夜は泊まるトコあるの?」

「・・・。それが、まだなんです」

「じゃあ、ワタシの所にお泊まりなさいな」

「えっ、イイんですか?」

「お代は5万コルね」

「うっ」

「まあ、アナタ可愛いからタダにしてアゲても良くってよ」

「本当ですか?」

「その代わり、ワタシを気持ちヨクしてもらえるかしら?」

「え、遠慮シテおきます」

「それじゃあ、納屋の藁葺きのベッドね」

「ありがとうございます」

「ワンチャンがいるから」

「別に構いませんけど」

「ワンチャンやられないように気を付けてね♡」

「・・・・・」


 チュンチュン


「んあ?」


 シコシコ


「やっ! ワンチャンやってるしっ!!」


 シコシコシコ


「しっ! しっ!!」


 きゅぅう〜ん


「ちょっと、私のいっちょうらを汚さないでよね」

「あら、おはよう、オレンジパイちゃん」

「おはようございます」

「ヨク眠れたかしら?」

「はい、それはイイんですけど。実はあのワンチャンが」

「あはは、いつものコトね。おいで、洗ってアゲルカら」

「すみません」


 ゴシゴシゴシ


 このオネェ様、親切なのはウレシイんだけど・・・


 ジロジロジロ


「あの、あんまり見ないでもらえますか?」

「いいじゃないの、減るモンでもナイし」

「そうイウ意味じゃナクて」

「イイお尻とおっぱいシテるわね」

「いやぁっ! ハズカシ」

「ふふふふふ♡」


 さあ、服もキレイになった事だし、ダンジョンにハイッテみようじゃない


 ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ

 ヒュルルルル〜


 ここがダンジョンの入り口ね

 あら? ナニかが入り口を塞いでイルわ

 あのブニョブニョした形から見るとスライムかしら?

 最初の敵にはちょうどイイわ


 ブニョブニョブニョ


 ち、近づいて来たわ

 えっと、まずは『ステッキ』で魔法攻撃ね

 え〜っと、呪文が書いてある取扱説明書はっと・・・

 って、あれ? マニュアルが見つからない!


 ブニョー!

 きゃあっ!!


 いきなりスライムが飛びかかってキテ私のカラダにカラミついたわ!


「いやっ! ダメよダメダメそんなトコ! んあっ!? 服が溶け始めてるしっ! 誰か、誰か助けてくださーいっ!!!」


 シャキーン!

 ぼてっ


「大丈夫ですか、お嬢さん?」

「あっ、あなたは?」

「やれやれ、あなたはまだ初心者じゃないですか。もう少し村のチュートリアルでレベルを上げてからクエストに来ることをお勧めしますよ」

「そ、そうですね」

「では、ボクはこれにて」

「あ、あの! せめてお名前だけでも!」

「なあに、名乗るほどのモノでもありません、それでは道中お気を付けて」


 スタタタタ


「まあ、なんて高潔なお方なのかしら。それにしてもあの方のお名前、頭の上に『じょっしゅ』って表示が浮かんでいたんだけどなあ」


 ダンジョンのナカに入ったわ


 ピチチチチ


 想像してたのと違って、お花畑が続いているわ

 これならカンタンにクリア出来るかも


 んがががが


 あら、あれはゴブリンかしら?

 なんだか見た目は強そうだけど、顔立ちが沖縄のシーサーみたいでちょっと愛嬌があって可愛いわね。さあ、早速覚えた魔法の呪文を使うわよ!


 んがーっ


 きゃあっ! いきなり飛びかかってキタわ!


 がぶがぶ


 んあっ! イヤよダメダメそんなトコ!


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