結論を出すのは時期尚早

 実はこの再感染の話題はもっと後に取り扱おうかとも考えていました。


 というのも、再感染の患者を記録した論文は現在二つしかなく、それらも厳密にいうと、現在(二〇二〇年九月六日)はまだ「正式な論文」ではないからです。

 これらはオンライン公開されている「Preprintプリプリント」、つまり「正式な論文」の一歩前の段階なのです。


 例えるならば、反抗期真っ只中の十代です。

 まだ成人していなければ、お酒も飲めません。


 しかし今はまだ荒々しいこちらの「Preprintプリプリント」もいつかはきちんと大人の階段を登ることでしょう。現に一方は既に査読が済んでおり、正式なる発表待ちの状態のようですし。


 因みに論文にとってのこの階段、或いは試練とは、同分野の専門家達による査読、つまりは評価や検証です。

 この研究論文はきちんとした手法で行われているか、必要な重要文献は網羅しているか、何かしら研究として今までのものとは違う、新しいことは含まれているのか、などなどが審査の対象になります。

 それらが済んで初めて、学術雑誌の正式な研究論文となるのです。

 なので通常の査読で論文が待たされる期間はもっと長いです。一年待たされるということもざらです。


 対して現在コロナの研究が発表されているペースというのは速いものであれば、提出から一週間以内に正式な研究として発表されています。


 異常です。

 でも大変助かっています。

 論文を掲載するどこの学術雑誌も、コロナに関する研究を率先して処理している、いわば科学界の決断力と実行力の結晶だと感動するばかりです。


 しかしその短い待ち時間すら待てぬ! という研究の為に、「Preprintプリプリント」というものがあります。まだ正式ではないけど、急を要するような研究が多く使います。つまりコロナ関係の研究ではポンポン出てきます。


 以上から、この話題はもう少し論文が発表されてから、少なくとも現在「Preprintプリプリント」である二稿が正式な論文になってから書こうかと考えていたのですが、そもそもこのエッセイの趣旨が普段日の目を見ないコロナの研究を、一般の皆様に知ってもらおう! というものだと思い出しました。

 今回の再感染の論文は二稿とも「Preprintプリプリント」になるだけの価値がある、世界中の研究者達が優先的に知りたい情報の上位に入ります。だとするとこの研究を分かり易く書くことに意義があるのではないかという考えに至りました。


 なので正直に申しますと、生肉とレアステーキの中間のような料理を出しているような心持です。ですが「おい、これまるで生じゃないか!」と言われる覚悟はあります。

 勿論再感染の研究に何か新たな動きがあった場合、新たに一筆書かせていただく所存です。その時は、少なくともミディアムを達成したいです。


 因みに私はステーキはウェルダン派。柚子胡椒でいただきます。

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