集団免疫と人口の割合

 集団免疫は人口の一定数がウィルスに対する免疫を持っていることによって発揮され、その割合はウィルスの感染力と関係しています。


 こと新型コロナウィルスの集団免疫に必要な免疫を所持するべき人口の割合は現在(二〇二〇年九月六日)分かっていません。


 正確にいうと、分かっていないということが、分かっています。


 別に私が情報収集をさぼっていた訳でも、全てにおいて投げやりになった訳でもありません。


 私が少し調べた中でも人口の割合についての正式な学術的論文が一つも見つからず、探し当てたのは学術雑誌の編集者の方への手紙一通(二〇二〇年三月掲載)、学術雑誌に掲載されたコメント一つ(二〇二〇年五月掲載)、個人的に信憑性に欠けると睨んでいる公表はされていない論文一稿(二〇二〇年五月ウェブ上に掲載)、そしてアメリカの政府の発表一つ(二〇二〇年七月)のみでした。

 しかもアメリカ政府のもの以外は目まぐるしく変化しているコロナの研究の今の状況に適用するのかどうか怪しいほど古いものばかり。

 書くかどうかも悩みましたが、おそらくこの先覆される研究としてここに書き残すのも一興と思いました。


 まずは学術雑誌に掲載された手紙から。


 二〇二〇年三月十三日の各国の記録されている感染者数から割り出された割合は、日本では人口の32.9パーセント以上がウィルスに対する免疫を所持していれば良いというものでした[4]。同時に国によって大きく違うと予想されており、特に高い国では人口の85.0パーセント以上が免疫を持っていなければ、集団免疫は働かないとされていました[4]。


 各国で数値に違いがあるだろうという予測はおそらく当たっているでしょう。何せ集団免疫を算出する際に考慮するのは一人当たり何人にウィルスを移すのかというものです。国によっては政策は違うので、移しやすい移しにくいという差が出ても何ら不思議ではありません。


 ですが日本の32.9パーセント[4]はあまりにも低いように思えます。三月と言えば感染者が増える前の話ですし、計算し直せばもっと高い割合が出てもおかしくありません。


 二〇二〇年五月に学術雑誌に掲載されたコメントは人口の六割を目安とし[5]、同じ月にネットに挙げられた論文でも通常の計算式ではこの六割を妥当だとしています[6]。しかしこの論文は更に年齢別の感染力などを考慮すべきだとうたい、集団免疫が発揮されるのは実際は人口の四十三パーセントからだと低く予測しています[6]。


 門外漢である私ですら六十パーセント以下の数値がにわかに信じられないのは、一般的に集団免疫に必要な、免疫を持っている人口の割合というのが七十から九十パーセントとされているという理由が大きいのです[7]。

 感染力が高い新型コロナウィルスは私の素人目にも七十パーセントを切るとは、どうにも思えません。

 それ以下と申すのであれば、証拠を突きつけよ! という感じです。


 実際に検査キットの精度の低さや、無症状故感知されていない感染者のことを考え、二〇二〇年七月のアメリカ政府の発表内容も要約すると「集団免疫に必要な人口の割合が現時点では分からないということが分かった」というようなものです[7]。


 なのでこちらの研究は乞うご期待ということで。

 取り敢えず今は集団感染の前提についてでもお話ししましょう。


 集団免疫の大前提として、同じ人が二度は感染しないという必要があります。

 しかしこの大前提ですら、新型コロナウィルスには適用されないのではないかと研究者達は懸念していました。

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