僕がいない世界でも、彼女だけは・・・
壊れた星座
第1話 プロローグ
ある夢を見ていた。
そこの世界は全体的にぼやけて、且つ歪んで見えた。
これは、俺だけか?
人の顔がはっきり見えそうで見えないような。
輪郭やしゃべり方で区別はつく。
匂いでも嗅ぎ分けることができる。て俺は、全く犬か?!と思えるくらい嗅覚に自信がある。とでも言っておこうか、、
「何寝ているの?」
誰かの優しい声。声の後に続く男を虜にするいい香りが続く、柔軟剤なの匂いなのか香水の匂いなのかそこら辺はいまいち分からない。ベッドで寝ている男の子を揺さぶる長髪の人。
「もうちょっと、だけ…」
寝ぼけ眼ながらに涎を垂らしながらにやにやして言う。当の本人は涎を垂らしているなど知らない。なぜなら意識して出すものでないから。その表情は何を想像しているのかが想像できる。
「今日は、優希にとって楽しい日でしょ?お母さんも色々と準備しないといけない事があるんだから〜」
少しだけ怒ったように、言葉を走らせる。顔の表情は、笑っているのに声色が怒っているのが丸わかりだ。お母さんと名乗るこの女性は髪をブラウン色に染めていて長さ的にはミディアムロングくらいだ。
「んーー。あっ、やっっっべーーー!」
ベッドから勢いの良い魚が飛び跳ねる。
痺れを切らしたのかお母さんが、カーテンを勢いよく開ける。目に映るお母さんの顔が何故かくっきりと捉えることができない。
『なんでだ??』
眩い光が部屋を照らし部屋が大変なことになっている。闇に包まれていた部屋が光を齎すことによってこうも分かるとは。昨日から準備をしていたからか部屋中、土砂崩れがいたるところで起きている。
そう、優希にとっては夏休み最大のイベント『キャンプ』だ!なんなら、今年の場合は地域のみんなと一緒に行くのは最後と言っても過言ではない。修学旅行を控えている優希。小学生のなかでの思い出では誰もが一番の思い出のはず。よっぽど、中学受験とかをする人にとってはそんな事をしている余裕もないだろうが。
朝の最終確認のときにひとつ無いことに気がついた。朝から部屋中を探している。それもそのはず朝起きたときから足の踏み場がない程ものがいたるところ散乱しているのだから、入れ忘れや、何処かにいった等ということは有り得ることだ。探し物は机上の教科書のなかに挟まっていた。普段から部屋を掃除していないからこういう時にこうなる。案外身近にあるものだ。
そう、優希は懐中電灯を探していた。
なぜだか分かるだろうか?
キャンプ=肝試し。やはり夜の肝試しがこれまた暑さを吹き飛ばしてくれる。テレビでよく見る心霊映像は確かに怖いが実際に暗いなかで友だちや彼氏・彼女とお化け屋敷や肝試しをするのもまた良き。
4、5人乗れる青色の乗用車のトランクに荷物を乗せていく。
空は青く澄み渡り一つや二つ綿菓子がある。雨が降っていないのは幸いだ。今回のキャンプでは、地域の人とするものだから現地で友だちに会うのが楽しみだ。準備も終わったところでいざ出発!!
「ねー、どのくらいで着くの?」
ワクワクを抑えられない優希は、お母さんに聞いた。助っ席にいるお母さんが後部座席のほうに顔を向けて答えた。天使のような笑顔がこちらにむける。
「1時間ぐらいかな」
「優希は、毎年楽しみだもんな」
今日起きてから1回も喋っていないお父さんと今日初めての会話だ。優希は、髪質がツンツンしているのに対してお父さんは、サラサラだ。
「2人も楽しみじゃない?!」
「そうだな」
「そうだね」
2人が微笑みながら、答える。
そんな中、赤信号の為横断歩道の前で停車する。家族が楽しく会話をしている最中、前方から何が勢いよく迫り来る。というか、飛んでくる!?黒い物体…。次の瞬間…。
ドン!!
“うわゎあぁぁ…。”
悪夢をみた。身体中に汗をびっしりとかいている。夏の暑い昼中に校庭を10周したあとの汗の量ぐらいかいている。なんて最悪な一日の始まりなのだろうか?
「ここ最近悪い夢ばかりみるな…。」
ベッド付近にある目覚まし時計がなっていた。軽く押して、止める。その目覚まし時計は南の方向を指していた。外を見れば小雨がシンシンと降っている。
「今日もまた学校か…」
新しい季節は、いつだって雨が連れてくる。
時は梅雨。梅雨前線が佇まい爽快に晴れる日は何時おとずれるのやら。
紫陽花が白・ピンク・青に色付き、雨の世界に華をもたす。
蛞蝓やカエルも忙しい活動時期になり今年も働く。蛞蝓は、コンクリートブロックの上をよじ登って、緑色の巨体は、メスに自分の魅力を伝えるためにゲコゲコと鳴き求愛行動をする。最終的にもっとも表現力の高いものだけがカップル成立を成し遂げることができそれ以外は眼中に無い。何とも可哀想だ。
上を見上げれば空を一面灰色クレヨンで覆い尽くす。湿度は高くムシムシとしている。ヨーロッパでは、湿度がない分ジメジメとしていない。そのため、汗をかいても纏わり付くことはない。日本人はこのようなサイクルを毎年繰り返している。
さてここは、日本の吉寄市で一人の男が闇に落ちていった。
実を言うと吉寄市はここ数年で急成長を成し遂げた。その為、野山ばかりだった街並みの風景も都会と化した。そして、重工業に特化していることもあって港や倉庫など工業団地も充実して来ている。
吉寄市には、都会化するなかで山は伐採され表面が剥き出しになり緑の割合がだいぶん減ってきた。
そんななか、緑平山だけは残された。緑平山には木や草などの植物は勿論、動物も色々な種類のものがいる。
その山頂と見られる場所に制服姿の男がいた。山頂は地上と比べても寒い。冬のように息が凍るくらいの寒さ、夏の暑い太陽。梅雨という何とも言えない時期は半袖では居られない。
いわゆる中間服と呼ばれているものだろうか?
「ぼくひとりが居なくなったところで誰も悲しまない…。学校も楽しくなく、家に帰ったところで体が休まるわけでもない……。ぼくには居るべき居場所なんてないんだ。」
緑の新芽が発芽しそう、そんな時期に彼は命を絶とうとしていた。
梅雨という時期は、服の調整が難しいものだ。そのため、長袖の白いシャツを着用した男がいた。男はパッとみても寝癖があり決して怖そうではなさそうだ。緑色のバッジがありこれは学年の色を表していると見る。
自分と葛藤することかれこれ30分後_______
そんな男が山の頂上で佇んでいるとなにか近づいてくる音がするが、あまり優希にとっては気にしなかった。自分は今それどころではないから。両手で頭を抱えて人生最大の決断をしようとしている。
湿ったこの場所に誰かが走ってくる音がする!
タッタッタッ。
茶色味がかったローファーで濡れた地面を蹴りながらこっちに向かってくるのがわかる。地面を蹴る度に、水溜まりにローファーのつま先があたり泥が付着していく。
ん、ん…!?
男は目を大きくする。
「こんなところで何しているのよ!優希!!もしかしてだけど自殺なんてしようとしたんじゃないでしょうね?!もし、それなら承知しないわよ!!」
怖い表情をしながら一歩ずつこっちに向かってくる。表情の瞳のなかはヒバナが散っていた。肩くらいまでありきれいなストレートな髪の女子高生だった。この女子高生も学年バッジのところを見る限り緑色だ。この喋り方、そしてバッジの共通点からこの女子高生は優希の同級生ということ。
「そ、そんなわけないじゃん…、ていうかなんで彩香がここにいるの!?」
「だって、いつもなら一緒に帰るか部活に行くかだけど優希どこにもいなかったし…それより、なにしていたのよ!」
「風景見ていただけだよ」
「絶対違う」
刹那の間だった。
「ほら、家に帰るよ!」
白い手でいい感じに焼けている手を引っ張った瞬間に嫌だと言わんばかりに手を勢いよく離した。まるで幼い子どもが地団駄を踏むようだ。
その力により崖の端の岩が崩れた。
ジャリ!
優希も慌てながらもこのままではダメだと手を伸ばした。考えるより先に体が動いたのだ。
2人は地面まっしぐら......。
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