第3話 甘い味と苦笑い
苦い思いと同時に過去の暗い出来事が頭を巡り始め、髪をぐしゃぐしゃに掻き毟る。
ふらふらとベッドに向かい、倒れ込むように横になった。
先程挨拶の時に貰ったマドレーヌを一つだけ、寝ながら齧っていた。
「隣がいなくて快適だったのに…」
聞かれないよう枕に顔を埋めて呟いた。
「だけど下手な奴が来るよりマシか…それに綺麗な人だったし…」
まあ、いくら隣人が美しくても、一目惚れなんてドラマの世界でしかない。
桐谷さん…彼女は愛らしい容姿をしていたが、僕のような人間とは関わり合いのないはずだ。
華やかな世界で羽ばたいて、すぐにでも素敵な恋人を作るだろう。
悔しさではないがモヤモヤとした気持ちを消すように、やめたタバコを吸う真似をした。
素敵な人だとか好みだとかそこまでは思わないけど……
ただ、彼女が僕に向けてくれた笑顔をまた見たいと思えた自分がおかしくて独り笑った。
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