いちめんの花
鈴木ムク
いちめんの花
花が咲きました。春の訪れです。
赤や、黄色や、青や、白。
大きい花も、小さい花もあります。
赤ん坊のつやつやした花も、おじいさんのしわしわの花もあります。
いちめんの花です。
空は青くまぶしく、どこまでも澄んでいます。
暖かい陽差しが降り注ぎ、花はぽかぽか、お昼寝です。
ときどき、ちょうちょやみつばちが遊びに来ます。
風がやさしくふきました。
花が揺れます。まるで、ニコニコ笑っているようです。
雨がふりました。
花はうれしそうに、水浴びです。
ドシン、ドシン。大きなけものが花をふみつけていきました。
それでも、いちめんの花。
強い風がぴゆーっとふいて、花を何本もふき飛ばしました。
それでも、いちめんの花。
太陽の陽差しがだんだん強く照りつけるようになりました。
花は一本、また一本と、しおれ、枯れていきました。
とうとう全部、枯れて、なくなりました。
代わりに緑の草が生えました。
いちめんの緑。
雨がふり、風がふき、動物が通りすぎました。
それでも、いちめんの緑。
夏がすぎ、秋がきました。
緑の草は、黄金色に染まりました。
いちめんの黄金色。
秋がすぎ、冬がきました。
黄金色の草も、もうありません。
いちめんの大地。
雪がふりました。
灰色の空から、キラキラ白い雪が舞い降りて、大地をすっぽりおおいます。
いちめんの白い雪。
太陽が顔を出しました。
雪がとけて、小川となって流れます。
また、春になりました。
あちこちで、一つ、また一つと、花が咲きます。
いちめんの花。
そんな美しい星がありました。
いちめんの花 鈴木ムク @muku-suzuki
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。いちめんの花の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます