第5話 物語の始まり

鐚 蕭 蝲 は 靺 瞰 勘 憑 碌 や 琇 醬 ………

無限の文字が散乱する世界でただ一人宙に浮いていた。ん?

宙に浮いていた?

って?!

なんで宙に浮いてんだ??俺

宙に浮いているのはこの際よしとしよう。いや、してはダメな気がするが、一応よしとして。ここはどこだ?そこら中に文字があるし、まず現実世界ではない。ゲームとかそんな世界でならありそうだが、いやそもそも現実世界の定義ってなんだ?地球ー円形であり人間が住める場所………それだ!ここには人が住んでいない、否住めない。だからここは現実ではない…………ってそんなしょうもないことしてないで、何かすることないかな?

いや、暇だなんて思ってないよ。こう言う非現実的世界ってラノベみたいで少しワクワクするし、いるだけで…………

ごめんなさい、ウソつきました。暇です。ヘンテコな世界に迷い込んだ挙句そこで暇するなんて、俺の人生どうしたんだ?

あっ、死んでましたね。それも自分から。はいそうでした。じゃあ、精一杯の感情をこめてーー


それじゃ、はい

セーノっ「待たせてすまんかったのう」





「………」

「………」




いやなんか出てくるんかい。危うく声に出して突っ込むところだったよ。しかも初対面の人に。ん?人???

この世界に入ってから疑問が多いな。つか、ここに人っていたの?まぁこう言う場合大抵自分じゃないから。はやくでてこーいまたせてるひとーーー


「………」

「………「…………「…………「……………………

「君じゃよ……」


おーいでてこーい。きみーーー。


ぱしっ


「き・み・じゃ・よ」

「うおっと、いきなり叩くな老いぼれ。」


いきなり目の前にいる老人が杖で思いっきり叩いてくるからそう言ってしまった。


「お、老いぼれじゃと?!わ、わしだってなぁまだまだ現役の20代くらいまで届くわ」

「そ、それは無理があるんじゃないでしょうか」

「うん、盛った。すまんのぅ。この年まで来ると物事を理解するまで少しばかり時間がかかるんじゃ。」

「そうだ。なんであんなに来るのが遅かったんだ?おかげで少し暇してたんだが。」

「あっ、それもちょっと近くのコンビニ行ってたら面白い雑誌をみつけてのぅ」


このジジイコンビニで雑誌読んでたのかよ。どんだけ近代的なじじいなんだよ……


「おいこら、じじいじじい聞こえておるぞ。初対面の人にじじい呼ばわりはないじゃろ全く。これだから最近の若者は困るのう。時代に取り残される気分がわからないんじゃよ。わかるかの、気づいたらスマートフォンとか出ててガラケー使ってる人周りに誰もいないあの気持ちが。line交換したくてもできないんじゃよ!!ガラケーだから。それでわしはまだガラケーじゃから交換?できんって言ったらなんて言ったと思う?「まだガラケー使ってるん?だっさー。今はスマホっしょ。スマホ。ガラケーとか使ってる人今時いないよー。時代遅れだねー」だって。初めて人を殴りたくなったよ。ほんとに全く。」


「………」

俺も初めて人を殴りたくなったよ。しかも、じじいを。

つかなんで心読めるのこのじじい。ハイスペック〜

しかし、このじじいどんだけ周りの奴ら最先端なんだよ。おれもつかってるけどさぁ、スマホ。たいして変わんないよー結局連絡先交換したの三人くらいだし。一人は「あ、じゃあついでに」とか言って交換したものの。挨拶すらしてないよ。ほんとについでだよ。


「んで、なんで俺はこんなところにいるんだ?そもそも何故俺は生きているんだ?死んだはずじゃないのか?」


「うむ、疑問が多いやつじゃのう。まずは、「何故死んでいないか?」について話すとするか。お主はそもそも死に値するほどのダメージを受けていない。」


ん?ん??なんだって?今なんつったこのじじい。死に値するほどのダメージを受けていないだと?俺は確か、電車に轢かれて死んだんじゃなかったのか?


「そこじゃよ勘違いしとるのは。自分から電車に轢かれようとして、死のうとした。そう、死のうとしたんだよ。そこで誰かに押された。それはイレギュラー。本来あるべき姿でない。本来ならば、お主は自分から電車に自分から轢かれ、誰かに押されるようなことはない。」


ん?確かにそうだ。確かに押されて死んだ。そこに自分の意思は伴っていない、が結果死んでいるんじゃないのか?事実が変わっただけだ。押されて死んだか、自分から轢かれて死んだか。


「結果がどうであろうと、異点は異点。物語では必ず正しい道ではないといけない。この場合では、お主は自分から電車に轢かれて死ぬ。そして神城梓が荒れ自暴自棄になり夜叉ヶ池翟を殺し神城家の地は途絶える。そこで物語は終わる。はずだった。」


そこまでは納得できる。梓は本当に俺のことを心配してくれる。だから、そう言う結末を終えて、じじいの言う物語ってのは結末するんじゃないのか?


「違う、違うんじゃよ。そうじゃない。そうあるべき物語は今現在狂ってしまって。先が見えない。いや、どうなるかわからない。お主は世界の秩序はどう保たれていると思う?」


そんなの簡単だろう。いつも聞かされていたことだ。ソレも俺の大切だった。父親から。


「どう保たれているって。そんなの一人一人が一つの歯車で、すべての関わりうる人たちと組みその中心となる歯車を中心とした物語が伝承されている。んじゃないのか?」


「そうだ。ようわかっているの。ソレが一つ欠落したらどうなる?」


「歯車が狂いだす」


「そうだ。だが、お主が死んでいないとなったらどうなる?」


「それは…………」


「言い方を変えよう。お主が今、生き返るかもしれないとなったらどうなる?」


「それだと………」


そんなの、みんな希望を持つか、もしくはみんな死ねば良かったのにとなる。

どちらにしろなんらかの期待を持つに決まってる。


「そう。期待。ソレを持つことによって、崩れていた、崩れるはずだった未来がなくなった。だからこうやってそもそものイレギュラーである儂が干渉せざるを得なくなった。こう言った事例はまずない。だが、最近でも何件あったんじゃよ。」


「なんだ?なんなんだ?俺に関係することなんだろ。」


「話が早くて助かる。儂が干渉したのはお主の母じゃよ。お主の母はここに来ている。いや、一度この世界に来ている。」


なんで言い直したんだ?何故か含みのある言い方だし。何か重要なことなんだろうな。


「そして、生き返った。イレギュラーはイレギュラーのまま。終わったんじゃよ。そう考えると、やはりお主の家族いや、お主の血族全員がイレギュラーなんじゃろう。」


ん?それは、それは必ずここに来る道を俺の家族は血の繋がったものたちは全員辿るってことか?


「そう、それでものは話なんじゃが。お主勇者にならないか?」


は?はああああああああぁーー?

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