幼馴染パーティを追放された援護師、フェンリルを拾う〜おまけに1人でも強かったので未踏の迷宮攻略します〜
ギンヌンガガプ
鮮血の狂鬼編
#1〔追放〕
「フィルル、お前はもう要らない。このパーティから出て行ってもらう。」
ギルドと併設された酒場の一角で、そんな言葉が端正な顔立ちをした男から放たれた。
下から、
「え?」
フィルルと呼ばれた少年は信じられないといった表情で男を見る。
「なんでかわからないみたいね。後ろで立ってるだけのあんたは要らないって言ってんの。さっきの戦闘、あなたは何かした?したなら言って見なさいよ。」
次に発したのは横にいた女だ。美しい金髪に整った顔立ちは、世の男を魅了することは間違いがないだろう。
フィルルは頭の中で回想する。さっきの戦闘、というのは
「…… 私も…そう思う。」
そして気弱そうな女が追い討ちをかける。4人で構成されたパーティに於いてうち3人が同意したとなれば、即ち決定を意味すると言って差し支えない。既にフィルルに一切の権利はないのだ。
「……… わかった。」
それだけを告げ、フィルルはギルドを後にした。
✳︎ ✳︎ ✳︎
俺たち4人は幼馴染だった。あらゆる宗教の聖地とされる聖都市で生を受けた俺たちはいつも一緒だった。何をするにも、何処へ行くにも。
俺たちはいつも夢を語った。冒険者になって、英雄と呼ばれて、幸せに暮らすんだ、と。だから16歳になって、みんなで都市を出た。そこからは順調だった。
戦士のレイン、魔法詠唱者のルリナ、盗賊のローラ、そして、援護師のフィルル。
早さは異例だった。早すぎるスピードで昇り詰めて行く俺たちは、いつしか有名パーティとなった。
みんなで切磋琢磨してきた。——いや、そう思っていたのはきっと俺だけなのだろう。それでも、少なくとも俺の目には、今日のような横暴な様子は映らなかった。
ずっと信頼していた。それが故に、追放されたショックは並大抵ではなかった。
どうすればいいんだろう。このまま1人で冒険者を続けるか。いっそのこと、吟遊詩人にでもなって各地を彷徨ってやろうか。それならば旅人でもいいかもしれない。全ての枷を外して遊び尽くそうか。
そんなできるはずもない妄想に思いを馳せる。現実から逃げるように、頭の中の仮想世界の住人になろうとする。
喪失感のせいか。いつの間にか俺は森に居て。今の状態こそ、真に彷徨っていると言うべきかも知れないな。全てがどうでもいい気がした。このまま死んでもいいかもしれない。睡魔のせいか、それともこれも喪失感なのか。
俺は、意識を手放した。
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