第8話 やっぱり姫って怖いよな
《能力奪取》を手に入れた日、俺はヒヤル村の宿屋に泊まった。
そして翌日、ヒヤル村の停留所で再び乗合馬車に乗った。
向かう先はアルトバーレ。
そういえば行商人がこの街の名前を出していたな。
冒険者が多いというのは事実だ。
それはアルトバーレの周辺にダンジョンが4つ点在しているからだ。
DSOはストーリーが無いに等しいものの街の背景や設定、情勢などはしっかりと作り込んでいた。
だからこそ、プレイヤーは自分がDSOの世界の住人になったかのような錯覚に陥っていたのだろう。
……あれ?
俺はもうこの世界の住人じゃないか。
他のDSOプレイヤーが俺の状況を聞いたら泣いて喜びそうだな。
でも悪いが、あくまで俺の一番の目的は日本に帰ることだ。
無事に帰れたらかなりの時間になるだろう。
まぁ「嘘乙」と言われて終わりだろうがな。
乗車から1日経過して、乗合馬車はアルトバーレに到着した。
残金は12000ソウル。
そろそろ金策も始めていきたいところだ。
とりあえず、魔物の素材を回収できるようにバックパックを買おう。
装備屋に行くと、
「10000ソウルになります」
これで残金は2000ソウルだ。
次に俺は冒険者ギルドへの登録に行った。
「登録料は2000ソウルになります」
結果、俺は無一文になった。
「あ、あの先ほど冒険者登録をしていましたよね!」
「ん? ああ、はい」
ギルドにいると、他の冒険者から声をかけられた。
しかも女性。
オイオイ、これは俺にもモテ期到来か?
「あっちに私の仲間が2人いるんですけど、よろしければ一緒にパーティを組みませんか?」
女性が言う「あっち」の方を見てみると、椅子にブサイクな男2人が座って待機していた。
……こいつ、もしかして姫プレイヤーか?
姫プレイヤーとは、周りにブサイクでモテない可哀想な男で身を固め、彼等からチヤホヤされることで承認欲求を満たす俺の嫌いな人種だ。
何故嫌いかと言うと、昔俺が所属していたDSOのクランが姫によって潰された。
ただそれだけだが、姫プレイヤーは害悪だという思想は俺に強く根付いてしまった。
「お断りします!」
「……え? ど、どうしてかな?」
「僕一人が好きなので!」
「ッチ、あっそ」
舌打ちをし、露骨に不機嫌そうな表情で女性は去って行った。
……やっぱり断って良かった。
それにパーティはあまり組まない方が俺にとって都合がいい。
《能力奪取》でスキルを奪取するには、敵モンスターと1対1で戦わなければならない。
だから変に邪魔してこない奴じゃないとパーティを組むことは出来ない。
つまり忠実な仲間を俺は求めている。
もしくは、才能がある奴だな。
育てば、俺には至らずとも最高クラスの実力を身につけられるような奴がいい。
まぁそんな奴らが都合よく俺の仲間になるなんてことは無いんだろうけどな。
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