第18話 神の忖度

「神父見習い様、ありがとう。」

「気をつけて変えるんですよ。」

 春は教会の神父見習いをしている。

「迷える子羊の懺悔部屋へようこそ。」

「いじめられて嫌なんです。もう死にたいんです。」

 春は教会で人の悩みを聞いている。

「あなたの命と引き換えにね。」 

 まだ春は何もしない。

「いじめられたくない!」

 迷える子羊が天国に行く。

「あなたの恨みを晴らしましょう。」

 春が迷える子羊の敵討ちを決める。

「ターゲットはあのゴミか。」

 春はターゲットの日常を見る。

「悔い改めよ!」

 春はターゲットを地獄へ送る。

「警察だ。」

 春の元に警察がやって来る。

「まさか!? 子供が!?」

 春の正体がバレそうになる。

「これは貸しですよ。」

 春は警察の捜査を助ける。

「逮捕する!」

 春と警察の戦い。

「知られたからには消えてもらいます。」

 春は正体を知った警察官を消す。

「神父見習い様、おはよう。」

「おはよう。みんな。」

 春は何事も無かったように日々の暮らしに戻る。


「手塚治虫大先生の13構成の2行書きで400字。」

 これに肉付けをしても、事件を3回、ヒロインの心配、刑事同士の会話。そんなところが関の山。毎回毎回事件を起こして、誰かが死んで、60分ドラマで60話にもっていくか?

「良しとしよう。」

 全ての物語は同じことの繰り返しでできているのだから。

「良い設定の作品を作ろう!」

 設定が違うだけなら、良い設定だけを考えよう。

「内容は同じなのだから。」

 例えると野球とサッカー。内容は青春モノで同じだ。

 医者モノも決めゼリフが違うだけで毎回新しい患者、毎回の手術をする。同じだ。

 探偵、警察モノも同じ。毎回誰かが死に事件が起こる。事件を解決する。

「違うモノは設定だけだ。」

 否定するな。受け入れろ。それでいい。


「うおおおおおおー!?」

 全話でも書いたが、素人は良心の呵責に苛まれる。

「パクリスペクトルイージ!」

 悪に手を染めて初めて、他の作品と同じ様な小説を書けるのかもしれない。

「神も手を悪に染めれば邪神。」

 ただそれだけだ。

「邪神男(ダーク・ゴットマン)。」

 アベンジャーズの敵役で出れるかな?

「確かにアメリカンヒーローだ。」

 世界標準の正義貫徹路線だから、日本のオタク向けではないのかもしれない。

「この10万字も、あと1万字くらいだ。」

 そろそろパクリスペクトルイージの作品を真面目に考えて書こう。

 アハッ!


「戦争を知らない心優しい魔王様は世界の平和を願う。(仮)」

 借りタイトルだが概念のギャップの面白そうな設定は簡単にできた。

「心優しい魔王は、世界を支配しようとする勇者と世界の平和のために戦う。」

 正義と悪の入れ替わり。あえて他でもありそうな作品。簡単で単純な作品を目指そう。シンプル&イージー。


「今日もいい天気だな~。」

 魔界で平和に暮らす魔王がいました。元々、勇者がやって来た時に恐怖を与えるために暗黒が広がっていた魔界であったが、平和になったので魔王が太陽の光が入るように自然光が入るように魔界の天井を開閉式に変えたのであった。

「空気もきれい。」

 元々、勇者にダメージを与えるべく腐った悪臭漂う魔界の空気であったが、平和になったので魔王が空気清浄機をつけ魔界の空気を透明で新鮮な空気に換えたのであった。

「水も透き通っている。」

 元々、勇者に水分補給させないためにドブ川のようだった魔界の水であったが、平和になったので魔王が水質調査からの水質浄化を行い透明で透き通る川の水に変えたのであった。

「道端にはお花が咲いている。」

 元々、勇者を魔王城に近づけないために毒の沼やビリビリバリアを張っていたが、平和になったので魔王がトラップを撤去しきれいなお花を植えました。

「なんて平和なんだ! 僕は幸せだな~! アハッ!」

 過去の勇者との激しい戦いを知らない心優しく育った魔王は平和を愛していました。

「もうすぐクリスマスだ。地上の子供たちにおもちゃを届けに行かなくっちゃ!」

 魔王の名はサタン! サンタではない。

「子供たちに喜んでもらえれば、人間は魔界に攻めてこられない! 僕は平和に暮らすのだ! アハッ!」

 魔王様は人間と争うことはしなかった。それどころか魔王として人間に施しを与えるぐらい人間が大好きだった。


「ピンポンパンポンー!」

 ある日、魔界の緊急事態をお知らせする警報がなる。

「なんだ!? 何事だ!?」

 のんびり昼寝をして平和を楽しんでいる魔王の耳にも聞こえてきた。

「勇者が動き出しました!」

 魔界の全国に放送が流れる。

「勇者!? あの私利私欲!? 極悪非道!? 僕のご先祖様を倒しまくったという!? 人類の支配を企む邪悪の化身!? 伝説の職業、勇者!? その勇者が動き出したというのか!?」

 魔王に勇者の戦慄が走る。これ以上ない緊張感が走る。

「嫌だ!? 僕の平和が壊される!? 誰か助けて!? お父さん! お母さん!」

 しかし魔王の両親は激しい戦いの末、勇者を道連れに死んでしまった。魔王サタンの平和は両親が命がけで勇者を倒したことにより訪れたものであった。

「こんなの人種差別だ! 魔物にも人権を!」

 魔物という偏見だけで魔界に攻めてくる勇者は、黒人というだけで白人警察官が倒しに来る人種差別に似ている。

「勇者が攻めて来るなら仕方がない! こちらも戦うまでだ! 何もしなければ世界は勇者に滅ぼされてしまう!」

 平和主義者の魔王サタンは専守防衛からの攻撃に踏み切った。


「何!? 勇者がジャパンの国王の娘と結婚を企てているだと!?」

 魔王の元に勇者の第一報が入った。

「いけない!? これは!? 陰謀だ!?」

 魔王の第六感が言っている。

「勇者であることを良いことに、国王の娘と結婚して玉の輿を企てているに違いない!? そして結婚した後は国王を暗殺! 勇者は自分が国王になろうという国家のっとり計画に違いない!」

 極悪非道な勇者の国王暗殺国家略奪計画が浮かび上がってきた。

「姫が危ない!? このままでは結婚して飽きたら離婚させられて、キャバクラか風俗に売られてしまう!? なんて可愛そうな姫なんだ!?」

 姫の身にも危険が迫っていた。

「例え避難を受けてでも姫を助けなければ! 全ては世界平和のために!」

 魔王サタンは姫を助けることにした。


「いや!? どうして私は、あんな不細工な勇者なんかと結婚しないといけないの!? きっと国を手に入れたら私を高値で売り飛ばす気だわ!? うえ~ん!」

 泣いている一人の女性がいた。

「誰か私を窮屈なお城から救い出してくれる王子様はいないのかしら?」

 泣いていたのはジャパン国のアリス姫だった。ここは姫の自室。

「魔王ではいけませんか?」

 そこに魔王サタンが現れた。

「キャアアアアアア!? あなたは何者!? どこから入って来たのよ!? 私をどうするつもり!?」

 いきなりの来客に悲鳴を上げる姫。

「あら? でもよく見るとイケメン。キャハ!」

 姫は魔王に一目ぼれした。 

「初めまして。アリス姫。僕はサタン。」

「サンタ? クリスマスにプレゼントを配っている心の優しい人ね!」

 姫は魔王をサンタクロースと勘違いした。

「僕クラスになると壁をすり抜けることなど簡単です。」

「すごい! だからサンタさんは子供たちにプレゼントを贈ることができるのね!」

 実際には魔王は手下の悪魔たちを使いクリスマスプレゼントを全世界の子供たちの笑顔のために送り続けているのだった。

「姫、あなたをお救いにきました。僕と一緒に行きましょう。」

「ええー!? 今年は私もサンタさんと一緒にクリスマスに子供たちにプレゼントを届けに行くのね。やったー!」

 姫はすっかりサンタクロース気分だった。

「姫!? 大丈夫ですか!?」

 そこに衛兵たちが駆けつけてくる。

「それでは姫、必ずあなたを迎えに来ます。」

「はい! 待っています!」

 そういうと魔王は暗闇に消えていった。

「私はサンタクロースになるんだわ! アハッ! 真っ赤なお鼻のトナカイさんに会えるかな?」

 姫は夢見心地だった。

  

「それではアリス姫と勇者ヒポクリシーの結婚式を行います。」

 国王出席で姫と勇者の政略結婚が行われようとしていた。

「勇者よ、姫を愛しますか?」

 神父さんが勇者に愛を確かめる。

「はい。誓います。」

(これで、この国は俺の物だ! ワッハッハー!)

 実に勇者は偽善者だった。

「姫、勇者を愛しますか?」

 同じように神父さんは姫にも尋ねてみた。

「キャアアアアアアー!」

 その時、姫の体が宙に浮きあがっていく。

「ワッハッハー! 姫は僕がもらった!」

 教会のチャペルに魔王が現れる。

「あ、サンタさんだ。」

 姫はイケメンの魔王に目がハートだった。

「姫、僕と一緒に来てくれますか?」

「はい、喜んで。私はあなたについていきます。」

「いい答えだ。」

 魔王と姫は永遠の愛を誓いあう。

「サタンだ!? 魔王サタンだ!?」

 教会の中にいた人々は恐れおののく。

「誰か!? 姫を助けてくれ!? 勇者様!? 勇者様!?」

 国王は娘を心配した。

「ヒイイイイイイー!? 怖いよ!?」

 勇者は物陰に隠れて震えていた。

「さらばだ! 人間ども!」

「お父様! クリスマスプレゼントを楽しみにしていてね!」

「姫!?」

 魔王と姫は暗闇に消えていった。娘が連れ去られ悲しむ国王であった。


「ここがサンタさんのお住まい?」

「はい。全て私の領土です。」

 魔王は姫を魔界に連れ帰った。もちろん魔界は全て魔王のモノだ。

「スゴイ! 素敵!」

 魔界は空気も良く水は透明で川底が見え、空気は新鮮でお花畑が大量にあった。

「坪単価を1平方メートル100万として・・・・・・分からんぐらい億万長者!?」

 意外にしっかり者の姫。

「サンタさんって大地主様だったんですね。だから子供たちにプレゼントを配ることができるんですね。」

「その通り。僕は平和な世界、子供たちの笑顔が大好きなんです!」

 心優しい魔王であった。

「カッコイイ!」

 姫は魔王にメロメロだった。


「ところでサンタさん。」

「なんですか? 姫。」

 姫は魔王に尋ねてみた。

「どうして、みなさんモンスターの格好をしているんですか?」

 魔界だから魔族や魔物しかいないの当然である。

「それは、もうすぐハロウィーンパーティーがあるので、みんな着ぐるみを着ているんですよ。」

「大好き! 私もハロウィーンには仮装してますよ! 去年はトイレットペーパーを撒いてミイラ女になりました!」

「ワッハッハー! それを聞いたらミイラ男たちが喜びますよ。」

 和やかな雰囲気で物語は進んで行く。

「じゃあ、あのスライムも着ぐるみで、中に人が入っているんですか?」

「いいえ。あのスライムはペットです。」

「カワイイ!」

「プヨプヨ。」

 スライムは褒められて少し照れている。

「じゃあ、じゃあ、あの大魔神はどうやって動いているんですか?」

「あれは中に大勢の人間が入っているんですよ。」

「すごい! 100人がかり!?」

「ウオオ。」

 確かに大魔神は多くの人間を取り込んで体が大きくなった。

「面白いんですね。サンタさんの世界って。アハッ!」

 姫は魔界が気に入った。


「ところでサンタさんはクリスマス以外は何をやっているんですか?」

 姫は魔王に尋ねてみた。

「そうですね。お花畑で昼寝をしたり、川で魚釣りなんかをしています。面白いですよ。」

 魔王は人食い花に囲まれながら昼寝をしたり、人食い魚を釣って食べている。貴重なたんぱく質だ。

「普通。面白くない。つまらない。」

「ガーン!?」

 魔王の日常は面白くなかった。

「なら、とっておきを教えてあげましょう!」

「とっておき!?」

「僕は勇者と戦っています!」

 魔王は日々、将来魔界に攻め込んでくるであろう勇者と戦っていた。

「ブサイク!?」

 姫はブサイクな勇者と結婚させられそうになったので、勇者=ブサイクである。

「勇者は私利私欲の塊です! 口では良いことを言って、人々を惑わせ世界を混沌に導くのです! そして権力を手に入れて好き勝手するのです! アメリカの大統領も元勇者! ジャパンの内閣総理大臣も元勇者! 国連事務総長も元勇者です! そして世界を支配しようとする悪い奴なのです!」

 なんかチャイナ国の外交政策みたいな勇者。

「なんて悪い奴なの!? このままでは世界がブサイクだらけになっちゃう!?」

 姫はブサイクがとっても嫌いであった。

「だから僕は、勇者のスピーチの書類をすり替えたりカバンに血の付いたナイフを入れたり(殺人容疑)、勝手に勇者に銀行口座を作ってお金を振り込んだり(裏金)、勇者が選挙に当選しないように選挙を操作して(魔王の選挙介入疑惑)、勇者が権力を握るのを妨害しているのです!」

 魔王は世界の平和を守るために、日々勇者と戦っている。

「面白い! 私も勇者と戦います!」

「ありがとう! 姫! 一緒に勇者を倒そう!」

 姫は魔王と共に勇者と戦う決意を固める。

「ブサイク撲滅! ブサイクに生きる価値無し! ブサイクはイケメンに整形しろ! アハッ!」

 こうして姫と勇者の戦いの幕はあがった。

 つづく。

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