第13話 神の第二話

「それでは悪魔スカウトキャラバンを始めます。」

「おお!」

 七つの大罪の悪魔たちがいる。小悪魔が司会を進行する。

「今日の魂を売りたがっている人間は、弱い者をいじめる、いじめっ子だ!」

「おお!」

 悪魔たちは人間の負の心に忍び込んでくる。

「それでは契約したい方は挙手をお願い致します!」

 悪魔による悪魔に魂を売りたい人間のスカウトが始まる。

「いじめは良くないね。みんなで仲良く遊ばなきゃ。」

 傲慢のルシファー。

「憤りを感じられない。」

 憤怒のサタン。

「全然羨ましくない。」

 嫉妬のレヴィアタン。

「面倒臭いからいらない。」

 怠惰のベルフェゴール。

「いじめるって、欲なのかな?」

 強欲のマモン。

「お腹空いた。」

 暴食のベルゼブブ。

「色気がないよね。」

 色欲のアスモデウス。

「おおっと!? 今回の人間と契約したい悪魔はいないのか!?」

 そういえば昔、天使に憧れている小悪魔のデビちゃんというのがいたような、いなかったような。

「私が貰おう!」

「おおっと! 人間との契約に手を上げたのは、ルシファー様だ!」

「だって、いじめって傲慢だろ。」

 それがルシファーがいじめっ子を認めた理由であった。

「さあ! 魂を寄こしやがれ! 人間め!」

 ルシファーは人間の魂を買い取る。

「好きなだけ! 弱い者をいじめてこい! ワッハッハー!」

 悪魔に魂を売り渡した人間は、悪いことをしても心を痛めない。

「それでは人間に魂を売らし契約に成功したルシファー様に一曲歌ってもらいます。曲は傲慢っていいな。それではどうぞ!」

 マイクを持ったルシファーは歌う気満々である。

「悪魔が歌を歌って何が悪い!」

 ということで歌うシーンは割愛である。アニメ制作会社が頑張ってくれるだろう。


「俺はいじめっ子! おまえの物は俺のモノ! 俺の物は・・・・・・俺の物だ!」

 名言だな。完全に悪魔アピールだ。

「なんて傲慢な奴だ。悪魔採用!」

 悪魔にスカウトされて、悪魔と契約する。

「ギャアアアアアアー!?」

 いじめっ子は悪魔と契約させられた。


「おつかいに行ってきます。」

 主人公の碧は母親のおつかいでスーパーに卵を買いに行った。

「しまった!? 財布を忘れた!?」

 レジで財布がないことに気づくうっかりでおっちょこちょいの碧。

「俺はなんてダメな奴なんだ!?」

 まさに悪魔になってしまいそうな碧。


「もう! 碧はダメね! 私が居なくっちゃ!」

 恋は碧の幼馴染で同級生。子供の頃から恋は進んで碧の面倒を見てくれている。

「恋ちゃんがいてくれて良かったわ。」

「私たちが死んでも大丈夫。」

 碧と恋は碧の両親が認める公認の仲だった。

「でも恋ちゃん。碧みたいな彼氏がいて、アイドル活動は大丈夫かい?」

 恋は高校生アイドルをやっている。

「大丈夫です。彼氏はいないことになってますから。」

 碧は隠れ彼氏であった。

「まあ、周りの人間には使えないマネージャーぐらいにしか見えないわな。」

「こら!? 自分の子供のことを悪く言うな!?」

 碧と両親の仲もとても良かった。


「おはよう。」

 碧と恋は学校にやって来た。

「キャアアアアアア!?」

 悲鳴のする方向を見てみた。

「オラオラ! いじめてやる!」

「痛い!? やめて!? やめてよ!?」

 いじめっ子がいじめをしていた。

「・・・・・・。」

 しかし周囲の先生に生徒たちは誰も助けない。自分がいじめられたくないから誰もいじめられっ子を助けようとしないのだ。

「うん? んん!?」

 碧にはいじめっ子に何か黒い者が付いているように見えた。

「あれはまさか!? 悪魔!?」

 神様に地球の平和を託された碧には人間に取り憑く悪魔の姿が見えるのだ。

「いこう。碧。」

「うん。」

 これは主人公である碧と恋も例外ではなかった。だって二人も普通の人間で、一人の犠牲を差し出せば自分たちは楽しい学園生活を送れるのだから。


「人間の皮を被った悪魔め! 俺は悪魔を黙って見過ごせない! 神の領域!」

 碧は別の次元を作りだした。その次元の名が神の領域。神と悪魔しか入ることは許されない。それでいてもう一人の碧は恋と一緒に今まで通り学園生活を送っている。幽体離脱でも、コピーでもない。神の代行者の碧と。もう一人、神でない碧が存在しているのだ。


「いじめはやめろ!」

 碧はいじめっ子を助けようとする。 

「なんだ? おまえは? 邪魔するならおまえもいじめてやるぞ!」

 いじめっ子が碧を認識する。

「なんて理不尽な!?」

 さすがに普通の人間は驚く。

「悪意に手を染めたな!? おまえ、悪魔だな?」

「なに!? なぜ私が悪魔だと分かった!?」

「おまえから悪意の嫌な匂いがする。」

 碧は悪魔を察知する。

「おまえはいったい何者だ!?」

「俺は神だ!」

 碧は神様から神の力を授かった。

「ふざけるな! 神などいるものか!?」

「神の裁きを受けろ!」

 神々しく光を放つ碧。

「天に居ます我らの主よ。迷える子羊をお救いください。」

 神の聖書を朗読する碧。

「神の代行者! 碧が命じる! ヘルプ!」

 悪魔に取り憑かれた人間の心を救済する。

「ウワアアアアアー!?」

 神の光が悪魔に取り憑かれた人間の心に染み渡る。


「ここは? どこ?」

「ここは迷える子羊の懺悔部屋です。」

 いじめっ子と碧がいる。

「さあ、懺悔しなさい。どうしていじめっ子になったんですか?」

「・・・・・・実は私も親から暴力を振るわれていて、人を殴ることに抵抗がない人間になってしまったんです。そして弱い者を殴っていると何でも私に差し出すのでついつい調子に乗ってしまいました。ごめんなさい。」

 懺悔を述べるいじめっ子。

「あなたが悪い訳じゃない。」 

「え?」

 意外な言葉に驚くいじめっ子。

「人間は弱い生き物です。人間の弱い心に悪魔が忍び寄って来て契約させられてしまうのです。悪いのは悪魔です。本当のあなたは良い人です。」

 神の教えを説く碧は笑顔で微笑みかける。

「・・・・・・ありがとうございます。」

 いじめっ子は自分を理解してもらえ救われたみたいで、涙を流しながら感謝を述べる。


「クソッ! 人間め! 許さんぞ!」

 いじめっ子と契約を解除された悪魔が怒っている。

「俺は人間ではない。俺が神だ!」

 碧は神の代行者であり、正確には違う。


「許さんぞ! 人間め! 思い知らせてやる! 悪魔パワー! 全開!」

 悪魔に魂を売った人間を解放されて怒り狂うルシファー。

「来たれ! 巨大悪魔ロボットよ!」

 悪魔の力でルシファーにそっくりな巨大な悪魔ロボットが現れる。

「なんだ!? この巨大な悪魔は!?」

 巨大悪魔ロボに衝撃を受ける碧。

「どうだ? ビビったか? 俺の巨大なロボットだ! 人間なんか踏みつぶしてやる! ルシファー・ビーム!」

 ルシファーはコクピットに乗り込み攻撃を始める。


「よし! そっちが巨大ロボなら、こっちも神の巨大ロボットを出してやる! 神パワー! 全開!」

 碧も神の巨大ロボットを呼び寄せようとする。

「・・・・・・あれ?」

 しかし神の巨大ロボットは現れなかった。

「巨大神ロボットは制作中です。ごめんね。地球神アースより。」

 空から1枚の紙が舞い降りてきた。神様からの手紙を見る碧。

「なんですと!? 人間を馬鹿にするな!? 神様のアホー!」

 碧は神様に怒りまくる。

「ケッ。神様なんか信じる者しか救わない薄情者さ。まだ我々悪魔の方が義理堅いぜ!」

 悪魔のルシファーにこき下ろされてしまう始末であった。

「クソッ!? こうなったら俺は俺自身を信じる! 俺パワー! 全開!」

 頼りにならない神様より、碧は自分自身を信じることにした。

「こ、これは!?」

 碧が自分自身を信じることで奇跡を起こす。

「な、なんだ!? この神々しい光は!?」

 まばゆい光は悪魔には目に毒だった。

「せ、制服が金色に光っている!? これは神の制服!?」

 神の制服とは、巨大神ロボットが呼べないので、制服を神の御加護でオシャレなファッションのバトルスーツに見立てたものである。

「ふざけるな!? 生身の体で巨大悪魔ロボに勝てるわけがないだろうが!」

「諦めるものか! 何事もやってみないと分からないじゃないか!」

 俺の鼓動に連携して神のビーム砲が浮かび上がる。

「くらえ! 悪魔! これが俺の神光線(ゴッドビーム)だ!」 

 超強大な光のエネルギー破が放たれる。神の領域の現実そっくりの仮装空間とはいえ街が一つ消えてなくなった。

「チッ。外したか。」

「あ、あ、危ないだろうが!? もしも当たったらどうするんだ!?」

 狼狽える悪魔。

「当てる気だったんだが、それが何か?」

 碧は神の代行者らしく堂々と立っている。

「今度は外さない! 悪魔撲殺! 天地神明! 神の剣(ゴッドソード)!」

 地球を切り裂く超強大な光の剣が巨大悪魔ロボに振り下ろされる。

「ギャアアアアアア! 覚えてろよ! また会おうぜ!」

 一撃で巨大悪魔ロボを切り裂いて倒した。

「神は勝つ! 迷える子羊に神の御加護を。天に居ます我らが主に感謝。」

 悪魔は碧の前に倒された。


「この世からいじめが無くなるといいな。」

 少し神様っぽくなった世界平和を願う碧であった。

 つづく。

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