第3話 不味い

「幸は範囲終わらせてる?」


「まだ。授業でやってないじゃん。」


「そっか。」


幸は授業の内容を丸々覚えて、あの点数。

俺とは違う勉強…というか暗記の仕方をしている。

たまに羨ましいと思うがそれは個性なのでしょうがない。


俺は俺のやり方で上を目指すだけ。


昼休憩になり、2人でいつも通り外の渡り廊下の近くにあるベンチでごはんを食べる。


幸はまたまずいと言っていたコーヒー牛乳を買って飲んでいた。


「まずいって思って体に入れると体調悪くならないか?」


「うーん、まずいけど栄養入れてるだけって感じ?」


「あー、なるほどね。」


幸のご飯はいつもおにぎり。

しかも具なしだ。一年の頃から変わっていない。

はじめは不思議でしょうがなかったが今の言葉でわかった。


とりあえずエネルギーや、栄養になれば幸はなんでもいいっぽい。


俺は購買で買った汁なし坦々麺を食べる。

飲み物は家から持ってきている水。


食べ物には金をかけたいので飲み物で節約してる。

幸いこの学校には浄水器があるので無くなったらそこから水をもらってる。


ご飯を食べ終えたら、だらだらと本を読むか、問題集を解くかをしてる。

2人でいる必要はあまりないが、心が気楽になるので一緒にいる。


「あの…」


女子に声をかけられる。


學「…手紙の子?」


手紙と同じ香水をしている女子が俺に話しかけてきた。


女子「あ、うん!あの…」


學「ごめん、気持ちには答えられない。」


女子「え…。」


もう場所を移動するのもめんどくさいし、ここでいいや。


學「俺、好きなやついるんだ。だから君の気持ちは受け取れない。」


女子「あ…そう、なんだ。」


泣きそうな顔をする。

またかよ、また涙で解決しようとするのか?


後ろにいる女子はこの子の連れか。

めんどくさいな、どうしようか。


俺は頬の下をつねり考え事をする。

子供の時からの癖だ。

思い悩んだときにしてしまう。

つねりが強いほど、難解になっていく。


[ちゅっ]


ちゅっ…?


俺の頬に温かい唇が触れる。


女子「え…?」


幸「ごめんね。僕、學の事が好きで今一生に一度のわがままでデートしてもらってるの。邪魔しないでくれる?」


學「なに…」


女子「そうだったんだ!ごめんね!」


女子は走って逃げていった。

退散してくれるのはいいけど、だいぶやり方が乱暴だな。


幸「ま、しばらくは女子寄ってこないんじゃない?」


學「ありがたいけど…幸はいいの?」


幸「別にここの女の子興味ないし。」


學「そうなんだ。」


幸「うん、男もだけど。學、迷惑そうな顔してたからさっさと追い返しちゃおうと思って。」


學「…ありがとう。」


幸「いいよ。」


幸はまた本読み始めた。

俺もまた問題集を解き始める。


大学が決まったらお礼しないとな。

ちゃんと美味しいところの牛乳とコーヒーを一緒に飲みに行こう。


チャイムが鳴り、教室へ戻った。

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