後天性エクスビート:Reloaded
白山基史
序:誰知らずの語り
ヒーローの存在を、誰しも一度は望んだことがあるだろう。
困難な状況を打破すべく立ち上がり、果敢に戦い、傷つきながらも最後は笑顔で立つ。
そのような強い存在に。人は憧憬の感情を抱くものだ。
個々人が賢しげに否定しようが、世界の至る所で英雄の逸話が生み出され、語り継がれて来たのが、その証拠なのだと考えられるのではないだろうか。
だが、現実はどこまでも非情だ。
一時期世間を騒がせた未確認生物達が、正しく観測されなかったが故に世界から抹殺されたように、創作の世界以外での観測の無いヒーロー達はフィクション世界の住人。そう捉えされ、誰も存在を信じなくなっていく事も必然の流れと言える。
ヒーロースーツより地球破壊爆弾が先に完成した現代。
様々なロマンが、科学技術と言う名の剣で斬り捨てられるようになっていく中で、それは突如として現れた。
常人が持つ常識から外れた力を持ち、人類に対してのみ牙を剥く怪物の出現と、それに立ち向かう者。
両者の存在とその戦いは、世界に確かな足跡を刻み込んで、今なお続いている。
やがて、戦いが続く中でヒーローの存在は、孤高の一匹狼といった物から組織的なバックアップに基づいた物へと変化を果たした。
だが、そのような変化を遂げても、ヒーローとして何かを背負い、踊ることになった者達はかつてのお伽噺と変わることはない、生身の人間なのだ。
何かに迷いもすれば、与えられた役割を放棄したいとの感情を抱く時もる。ヒーローとしての活動が組織的な物になり、半端に他人との目に見える繋がりが増えれば、尚更だ。
数多の屍と思いが積み重なるのと共に時は止まる事なく流れ、二〇二×年現在に於いても、戦いは終わる事無く続いている。
今から始まるお話は、世界単位で見ればその中のトップに来る様なお話ではない。精々三面記事を躍らせる程度で、現在の体制や秩序のドラマチックな変革が起こる事など絶対にない。
もっとも、これについては登場人物の性格的な面に因る面も大きいのだが。
だが当事者にとっては、ずっと忘れられない類の、数日間の戦いの話。
そして、聖剣に選ばれてしまった少年の物語だ。
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