第450話:2中忍者部+α 対 允行
「行くわよカーちゃん!私達の力、あの男に見せてやろうじゃないのっ!!」
「カールァーーーッ!」
茜の言葉に大きく鳴いたカーちゃんは、掴んだ茜を上空へと放り投げた。
宙へと舞い上がった茜は、そのまま一回転するとカーちゃんの大きな背へと着地した。
茜の足元で揺れる
しかしその炎は茜に害することなく、ただ優しい暖かさが茜を覆っていった。
その暖かさが、茜の中に渦巻く允行への闘志を更に熱くさせた。
「茜っ!茜はその力を全部攻撃に回してくれっ!俺が茜の翼になるっ!!」
そう言って翼を羽ばたかせたカーちゃんは、そのまま允行へと向かって飛んだ。
「ありがとう!さっきは冷たいこと言ってゴメンね!」
「ハニーの冷たさは俺にとってご褒美だぜ!」
「だからそれ辞めて!?」
先程までのカーちゃんへの冷い眼差しとは違い、優しみのこもった苦笑いを浮かべた茜は、そう言いながらも允行へと集中した。
忍力を全力で放出し、それを自身の拳だけでなくカーちゃんを包み込んでいった。
茜の赤い忍力は
黒い炎の槍となったカーちゃんの背で、茜は允行を見据えて拳を構えた。
「素晴らしい・・・・」
そう小さく呟いた允行の肩を、カーちゃんの嘴が貫く瞬間、茜はカーちゃんの背を蹴り、その拳を允行の顔面に放った。
茜の拳の勢いで允行は、突き刺さったカーちゃんの嘴から抜けてそのまま肩と顔面から炎を吹き出し、木々をなぎ倒しながら吹き飛んだ。
((((いやエグっ!!!))))
重清、恒久、近藤、そして宙でその様子を見ていた聡太は心の中で呟きながら、吹き飛んだ允行を見つめていた。
(((やっぱ、茜に逆らうのだけは辞めよう)))
重清と恒久、そして聡太は、固く誓ったのであった。
「もう終わっちまったんじゃねぇのか?」
一生の誓いをする3人を尻目に、若干引き気味の近藤は允行の方を見て呟いた。
(みんな、油断しないでっ!あの人、全然忍力落ちてないよ!)
「うわっ!なんだよ今の!?」
突然頭に響く聡太の声に、近藤は驚きの声を上げた。
「うるせぇな。ソウの力だよ」
恒久が面倒くさそうに近藤へと返すと、
「こんな力も持ってんのかよ。あの龍といい、あいつどんだけチートなんだよ」
「ソウに対してそのつっこみは、もう使い古されてんだよ」
恒久はそう返しながらも、允行の吹き飛んだ先から目を話していなかった。
そんな恒久の額からは、大量の汗が吹き出ていた。
強くなるためにただ力を付けることだけに傾倒してしまっていた近藤だけは感じていなかったが、允行の吹き飛んだ先からは濃い忍力が、僅かながら立ち上っていた。
感知の得意な聡太だけでなく、多少感知の訓練をした重清や恒久、そして茜は、允行の忍力に焦りを感じていた。
「あれだけ攻撃したのに!なんで!?」
茜が叫んでいると、倒れた木々を踏みつけて允行がゆっくりと歩んできた。
カーちゃんの嘴が突き刺さった肩と、茜の拳を受けた顔に黒い忍力が集中し、既にその傷はほとんど癒えているようであった。
「あれは・・・体の力での回復?」
允行の様子を見つめていた重清は、小さく呟いた。
「よく勉強しているではないか」
完全に傷の癒えた允行は、重清へと目を向けた。
「そう。体の力は身体の回復にも応用することが可能だ。
もちろん、これほどの回復力は望めないがな」
そう言った允行は、全身から黒い忍力を放出した。
「しかしこの忌まわしき力、『不老不死』の力が加われば・・・あの程度の傷は、ご覧のとおりだ」
ロイ「ほっほっほ。これは手を焼きそうじゃな」
チー「あら。だったら回復できないくらいバラバラにすべきかしら?」
プレ「物騒だなおい」
「こんなん、勝てるのかよ」
乾いた笑いを浮かべながら近藤が言っていると、茜と恒久、そして上空の聡太もその心に絶望という二文字を浮かべて允行を見つめていた。
特に茜は、自身の全力の攻撃が瞬時に回復されたことによって、その絶望は他の者たちよりも強くなっていた。
そんななか、平八との地獄の手合わせによって強大な相手への絶望に慣れきっていた重清は、
「ま、要はあの忍力が切れるまで攻撃続ければいいんだろ?
やるしかないんだったら、徹底的にやろうじゃんか!
わからず屋の大人を曲がった心を、おれらガキが叩き直しちゃおうよ」
そう、呑気に笑っていた。
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