第446話:具現獣化
「失敗しても、俺は責任取らねぇからな!」
近藤はそう言いながら、
「ケンタウロスの術っ!!」
術を発動させた。
それと同時に近藤の下半身が馬へと変化した。
その姿を初めてまともに見た重清と聡太、そして茜は近藤を見つめて、
「「「なんか気持ち悪い」」」
呟いていた。
「うるせぇよっ!」
3人に叫んだ近藤は、その目を恒久へと向けた。
「じゃぁ俺の忍力、お前に渡すぞ?」
「ちっ。さっさとやってみろ」
そう言う恒久に、近藤は小さく頷く。
恒久はそのまま近藤へと手をかざし、忍力を集中させた。
黄色い忍力がそこから溢れ出し、近藤はそれをその身へと吸収させようと身構える。
「ぐっ・・・」
その時、近藤の体に僅かながら痛みが走った。
近藤の忍力は元々、木の属性である。
その後の修行で火の忍力を使えるようになっていた近藤であったが、恒久と同じ土の忍力については、まだ使えるようにはなっていなかった。
そもそも近藤の術である『ケンタウロスの術』に、忍力はそれほど使われてはいない。
術のベースは心の力であり、忍力は術を発動させるために僅かに使われているだけなのである。
もちろんそこに使われている忍力は、近藤が持つ本来の属性である『木』である。
本来具現獣は、その体自体が忍力によって構成されていることから、属性に関係なく忍者の忍力を摂取することができる。
もちろん、忍者が餌として与えようとしている忍力に限ってのことではあるが。
しかし近藤は違う。
いくら術によって具現獣に近い存在になっているとはいえ、元は人である。
自身の扱えない忍力を受け入れようとした近藤の体に痛みが走ったのは、その影響であった。
痛みが僅かであったのは、近藤の本来の忍力であり、『ケンタウロスの術』に使用された忍力が『木』であり、契約のために餌として恒久から送られた忍力が『土』であったからだった。
もしも恒久からの忍力が、近藤の忍力である『木』と相克の関係である『金』であったならば、その痛みは近藤の感じているものとは比べられないほどに大きなものであり、下手をしたら命の危険すらもあったのだ。
とはいえ通常であればこの契約、失敗である。
具現獣として受け入れるべき忍力を、近藤自身が扱えず、受け入れることができないからだ。
しかし今、恒久の忍力を受け取ろうとしているのはあの近藤である。
ショウすらも認める才能を持つ近藤は、自身の扱えない忍力をその身に受け、痛みに耐えながらも恒久の忍力を受け入れようとしていた。
全ては、女子を紹介するという恒久の言葉のために。
美影や琴音、ましてや恒久達のためなどでは決してない。
全ては自分自身のために。
そんな男と知った『紹介される』予定の女子が、それでも近藤を受け入れるのかは謎であるが、そんなことを考えるような男であれば、そもそも人の紹介など一切必要はないのである。
普段優等生を演じている近藤ではあったが、女子の神がかり的な能力、『女の勘』を騙すことなどできるはずもない。
そんなことなどつゆとも考えない近藤は、ただ自分自身のために土の忍力と向き合っていた。
(クソが!あのクソガキの忍力なら、大人しく俺に喰われてろ!)
自身に痛みを与える恒久の忍力に、怒りすらも感じながら。
その結果近藤は、土の忍力を開花させた。
ノリとの契約を破棄されることなく忍者部での研鑽を積んでいればとっくに扱えることのできていたはずの、その力を。
それにより近藤は、恒久の忍力を自身へと受け入れた。
「ん?契約できたのか?」
上手く自身の忍力を受け入れたかのように見えた近藤に、恒久がそう言って術の契約書を具現化させた。
そこにはしっかりと、こう書かれていた。
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具現獣(仮)
近藤
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「いや仮て」
恒久は小さくつっこんだ。
「仮で十分だ!お前なんかとずっと契約なんかしてたまるか!
それより、さっさと始めろ!
あいつをぶっ倒したら、次はお前らだからな!!」
いかにもなセリフを呟きつつ、近藤は恒久を睨んだ。
「とりあえず、ツネの準備も出来たみたいだし、そろそろ始めよう!早く、美影を、美影と琴音ちゃんを助けなきゃ!」
重清がそう言うと、聡太、恒久、茜は頷いた。
「じゃぁ行くぞ、チーノ、ロイ!」
3人に頷き返した重清は叫び、
「『白虎の術』!『玄武の術』っ!!」
術を発動させた。
ソウ「こっちも行くよ、ブルーメ!『青龍の術』っ!」
ブル「パパの力、見せてやるっ!!」
アカ「カーちゃん行くよ〜。『朱雀の術』っ!」
カー(おいで、ハニーっ!)
ツネ「行くぞ具現獣(仮)っ!『麒麟の術』っ!」
近藤「偉そうにすんな、クソガキがっ!!」
聡太達もまた重清に続いて術を発動し、それぞれの具現獣達の体が光に包まれた。
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