第385話:作戦会議 前編
「それで、なんで浩兄ちゃんあんなに機嫌がわるいのさ?」
雅の作った
ちなみにプレッソは、いつものように重清の頭の上で寝そべっていた。
「あぁ。これは俺の予想なんだが・・・
浩さん、多分今回のこと、事前にばあちゃんから聞いてたと思うんだ」
公弘の言葉に、
「え?どういうこと?」
重清は首を傾げた。
「浩さん、いつかは自分がウチの当主になる、いや、ならなければいけないと思っていたと思う」
「あー、わかるかも。浩さん、責任感あるからな。
1番年上として、当主を継がなきゃって思ってても不思議はないよな」
裕二は納得したように頷いた。
「重清とはえらい違いだな」
「うるさいよ」
プレッソのちゃちゃに、重清は小さく返した。
「多分ばあちゃんも、その事には気づいていたはずだ」
「だから、先に話したってこと?」
「まぁ、そんなとこだ」
公弘が頷くと、重清はしばらく考えて、何かを思いついたように立ち上がった。
「だったらさ、おれたちわざと負ければいいんじゃない?
そうしたら、浩さんが当主になるじゃん。
父さん達も面倒くさがってたし、一石二鳥だよ!」
そんな重清のドヤ顔に、公弘と裕二はため息をついた。
「お前なぁ。ばあちゃんの前で、そんなことが出来ると思ってるのか?
わざと負けるなんて、ばあちゃんならすぐに見破るっての。それに・・・・」
裕二は重清を諌めるようにそう言うと、言葉を止めた。
「俺、1度でいいから浩さんと本気でぶつかってみたかったんだよね」
「奇遇だな。俺もだ」
裕二が言いにくそうに絞り出した言葉に、公弘も笑って答えた。
「2人がそんなこというなんて珍しいね」
そんな2人を、重清は不思議そうに見つめていた。
「そうか、重清は知らないのか。浩さんはな、俺達の中で唯一、中忍体、それから高総忍の全国大会出場経験があるんだよ」
「全国大会!?っていうか、高総忍って、なに?」
公弘の言葉に、重清は驚きながらも首を傾げた。
「安定の脱線」
プレッソの独り言を聞き流し、裕二は口を開いた。
「高総忍ってのは、高校生総合忍者大会の略だな。
中忍体が、中学生忍者体育大会、忍者の基礎的な力を競うのに対して、高総忍ってのは忍者としての総合的な力を競う大会なんだ」
裕二の説明に重清は、
「中忍体の高校生バージョンね。っていうか、兄ちゃん達は全国大会には行ってないの?」
そう言って2人を見た。
「俺達は、県大会止まりだったな」
「あぁ」
「そうなんだ。ま、おれはまだ県大会にも行ったことないけどね。でも、今回は行けそうなんだ。今年の中忍体、相手が去年圧勝した3中だけだからね」
2人の言葉に、重清は嬉しそうにそう返した。
「そりゃ、楽しみだな」
そんな重清に、公弘は笑顔で返していると、
「っていうか、無駄話してる暇あるのか?
ばあちゃん、あんまり時間ないって言ってなかったか?」
プレッソが公弘と裕二に目を向けながらそう声をかけてきた。
「そうだったな」
公弘はプレッソへとそう答え、視線を落として重清へと目を向けた。
「重清。多分俺達3人の中では、お前が1番強い」
「え、そうなの!?兄ちゃん達も強そうだけど」
「いや、俺達の力はそうでもないよ」
驚く重清に、公弘は苦笑いを浮かべると、裕二は重清をじっと見つめた。
「俺の見立てじゃ、麻耶ちゃんは重清よりちょい弱め、浩さんは重清よりちょい強めってとこだな。
重清、お前かなり心・技・体の力鍛えてるな」
「裕二兄ちゃん、そんなことわかるの!?」
重清は驚いて裕二を見た。
「あぁ。俺、力の分析とか、そういうの得意なんだよ」
「へぇ。っていうか、浩兄ちゃんもおれよりちょい強め、くらいなんだね」
「重清、油断するなよ。浩さんの力は、その強さが本質じゃない。あの人は、そのずば抜けた統率力で全国大会に進んでいるんだ」
「っていうかいまさらだけど、太兄ちゃんを忘れないであげて」
裕二の言葉に、重清が悲しいつっこみを入れる。
「太さんは、俺達よりも弱いからな」
裕二は笑って重清へと返したが、
「いや、そうとも言い切れないぞ」
公弘はそんな裕二を制した。
「太さんには、あの術がある」
「・・・あれね。確かに、浩さんと麻耶ちゃんと組まれたら、ちっとヤバいな」
公弘に言われて思い出したように、裕二は小さく舌打ちをした。
「あの術って?」
「太さんは、敵の力を下げる術を持っているんだ」
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