第343話:新たなる仲間

時は少し遡って反音達の入学式当日の夕刻。


「今情報が入った。久しぶりに、我々の仲間が現れたようだ」

とある一室で厳つい老人、ゴウが目の前の青年達へと告げた。


「それはそれは。本当に久しぶりですね。ユキ達以来、ですかね」

その顔に笑みを浮かべながら、ドウがゴウへと返すと、


「僕にもやっと後輩ができるんだねぇ〜」

ユキがそう言って喜んでいた。


「それでゴウ様、どこで現れたのですか?」

チャイナ服に身を包んみ、妖艶な笑みをゴウへと向けながら、グリがゴウへと問いかけた。


「それがな。どうやら、あの雑賀重清達がいる、2中のようなのだ」

「それはそれは」

ゴウの言葉に、ドウは苦笑いを浮かべ、呟いた。


そのままドウは、

「それで、どうなさるおつもりですか?しばらく待ちますか?」

そう言ってゴウを見つめた。


「いや、すぐに迎えに行く」


「えぇ〜、それで僕らの仲間になるとは思えないんだけどなぁ」

ユキがそう言うと、


「ワタシも同感です。忍者に恨みを持たない者が、我々の仲間になど・・・・」

グリはそう言って言葉を濁した。


「まぁ、お主らの言いたいこともよく分かる。しかしなぁ、今回の仲間は、グリのように忍者となった優秀な兄弟もいなければ、ユキ達のように親が忍者と言うわけでもない」


「だったら、私のように暫く待てば―――」

ドウがそう言葉を発すると、


「ドウよ。本当にそうなると思うか?」

ゴウはその言葉を遮るように、ドウへと問いかけた。


「・・・・・・・・・」

ゴウの言葉に、いつも笑みを浮かべるドウの顔は曇り、俯いていた。


「お前にも分かっているだろう?あの2中の生徒達は、皆良い子達だ。

いくら力がないからと契約を破棄されたといっても、それを理由にその者を迫害するはずもなかろう」

ゴウはそう言って、ドウへと優しく微笑みかけた。


「しかし親父殿。それでは、その者が力を身につけることはできないのではないでしょうか」

ドウは、ただそうゴウへと返した。


「別に我らの力は、恨みによって発現するものでもない。要は力を身に着けたいという目標さえあれば問題はない。苦しい修行に耐えうるだけの、目標さえあればな」


「何か、妙案があるのですね?」

グリの言葉に、ゴウは強く頷いた。


「情報によるとその者、松本反音そりおという少年のようだ」

「松本・・・・まさか!」

ゴウの言葉に、ドウが狼狽え始めた。


「そうだ。以前ドウの弟子が殺害してしまった、あの松本の息子なのだ」

「うわぁ〜。ドウさん、恨まれてそうだねぇ」

ユキがそう言ってドウをニヤニヤと見つめていると、


「人の死が関わっておるのだ。茶化すな、バカ者」

ゴウがユキを睨みつけた。


「はぁ〜い」

ユキがそう返事をしていると、


「ドウ、ユキ、グリ」

ゴウは3人を見渡した。


「松本の死について、その反音とやらに伝えることは一切禁じる。わかったな?」

「親父殿。まさかご自分で罪をかぶる気では・・・」

ドウはじっと、ゴウを見つめた。


「何も言うな。わかったな?」

ゴウはそれにただそう答え、ドウを見返していた。


「そ、そこまでして、わざわざその彼を仲間にする意味が、私にはわかりませんっ!」

ドウは叫び声をあげた。


「そもそも親父殿が罪を被れば、その少年が我々の仲間になど、なるわけがありませんっ!」

そのドウの言葉に、ゴウは笑みを浮かべていた。


「ドウよ。なにやら勘違いしておるようだな。

別に仲間といっても、我々に賛同する必要などないのだ。

我らと行動を共にせずとも、ただ同じ力を持った仲間が成長せてさえくれれば、儂はそれでいいのだ。

もちろん、そのうえで我らの想いに賛同してくれるならば、なお良いのだがな」


「えぇ〜。なんかそれ、甘くなぁ〜い?」

「コウやコトとは違い、彼は我々と同じ力を持っているのだ。甘くなって当然」

ユキの言葉に、ゴウはそう言い切った。


「ワタシも、もっと甘えさせて欲しいなぁ」

「グリさん、心の声がダダ漏れですよ」

ボソリと言ったグリに、ドウはため息をついた。


「ドウ。明日、その少年を迎えに行ってこい」

「かしこまりました。しかし、もしも彼が同行を断った場合は?」


「我々が、父の死の真相を知っているとまでは、言って構わん。もちろん、それ以上のことは言うなよ」

「・・・承知しました」




ゴウの命に従い反音を連れ出すことに成功したドウは、そんなことを思い出しながらある建物へと入っていった。


「こちらです」

ドウは反音へとそう声をかけて、目の前の扉を開いたのであった。

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