第333話:やって来た新入生
「あ、ほら。やっぱりいた」
「げっ。なんであんた達まで来てるのよ」
社会科研究部の部室を覗いた聡太の言葉に、部室の後ろを陣取っていた茜が声を漏らした。
「いや、っていうか・・・全員集合じゃねーかよ。なにしてんすか、シンさん達まで」
さも当然のように席について談笑するシン達3年生3人に、恒久が呆れたような目を向けた。
シン「何って・・・・なぁ?」
ノブ「はっはっは!仕方ないじゃないか!」
ケン「それ言うなら、お前達だって同じ」
シン達3人は、照れ笑いを浮かべて恒久に返した。
「みんな、ショウさんの弟に興味があるみたいだね」
聡太が笑ってそう言うと、
「ま、そういうことだ。そろそろ1年生が来はじめる頃だから、みんな邪魔にならないように端にいるぞ」
新部長シンがそう言うと、重清達はそれに従って端の方へと腰を下ろした。
そのまま談笑を続けていると、チラホラと生徒達が部室へとやって来た。
皆、重清達をチラリと見て、おずおずと前の方へと着席していた。
そして最後に、ノリが1人の生徒を連れて部室へと入ってきた。
その生徒は中性的な顔立ちでジャージを着用しており、傍目からは性別の見分けがつきにくかった。
(あれがショウさんの弟、か?)
重清達がボソボソとささやきあっていると、連れてきた生徒が着席したのを確認したノリが、一瞬重清達に視線を向け、ため息をついて口を開いた。
「さて、時間になったし、社会科研究部の説明を始めます。この社会科研究部では、その名のとおり社会科を研究します。ただし、ここでの研究は、基本的に試験に出るような内容は扱いません。もしもそういうことを期待しているなら、入ることはオススメしません。
ここまでの説明で、入部の意志がない人は退席してもらって大丈夫ですよ」
昨年重清達が聞いたのと同じセリフをノリが発すると、殆どの生徒が席を立ち、その場に残ったのはたった2人になっていた。
1人はノリが連れてきたジャージ姿の生徒。
その生徒は、1人で周りをキョロキョロと見回していた。
「あー、今なら分かるわ。ノリさん、めっちゃ忍力出してるね」
重清は、隣に座る聡太に小声で話しかけた。
「うん。1年前、ぼくはこの忍力を感じて、この場に留まったんだ。
多分、あの子も何か感じてるんだと思う。やっぱりショウさんの弟なのかな?」
聡太が小声で返しながらその生徒を見つめていた。
「っていうかあいつ、めちゃくちゃ汗かいてないか?」
そう言いながら恒久が、顎でもうひとりの生徒を指した。
重清と聡太がその先に目を向けると、もう1人その場に残った男子生徒が、恒久の言う通り汗をダラダラとかきながら、ひたすらその場に座っていた。
「もしかしてあの子、忍力に怯えてるんじゃない?」
茜が、3人の会話に割り込んできた。
「確かに、そうも見えるね」
重清はそう言いながら、少年を見つめた。
顔面が蒼白になっているその少年は、確かに自分の中から湧き出る何かと戦っているようにも見えたのだ。
「おいお前ら。呼んでもないのに来た挙げ句、俺の邪魔をするつもりか?」
そんな4人に、これまで猫を被っていたノリが、いつもの口調で睨みつけてきた。
「なははは。ノリさん、地が出ちゃってるよ」
重清が苦笑いを浮かべながらそう言うと、
「ちっ。あれは、この社会科研究部の2年と3年です。ここに入部したら、もれなくあのバカどもが先輩になってしまいます。
それが嫌な場合は、入ることはオススメしません」
ノリは猫かぶりモードの口調で涼やかに毒を吐きながら、残る2人に笑いかけた。
「いやもう、口調以外はいつものノリさんじゃねーかよ」
そう小声でつっこむ恒久を無視して、ノリは2人の生徒を交互に見た。
「2人とも、出て行く気は無いみたいだね。
えっと・・・君は、どうしてこの部に入りたいのかな?見たところ、今にも出て行きたそうだけど?」
ノリはそう言って、汗をかいている少年を見つめた。
「ち、父が生前、中学に進学したら必ず社会科研究部に入るように、と」
少年は、怯えた表情の中に強い意志のこもった眼差しを残し、ノリを見返していた。
「なんか、去年のツネみたいなこと言ってるね、あの子」
「懐かしいな。ってことは、あいつも血を引いてんのか?」
重清と恒久がそう言い合っていると、不思議そうな顔をしたノリが、少年を見つめた。
「お父さんの?はて、聞いてないな。失礼だが、お父さんのお名前を聞いてもいいかな?」
ノリのその言葉に、少年は頷いた。
「はい。父の名は松本
--------
あとがき
いや松本ってだれ?って方のために、次話のはじめにある程度の説明を入れるのでご安心を。
それまで待てない!って奇特な方が万が一いらっしゃったときのために。
松本氏の初登場は48話、多少彼について語られるのが69話、そしてその死については138話、139話で語られております。
いや、どうせ待てない!って人がいないのはわかってるんですけど。
言ってみたかったんだもん。
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