第328話:2年生 対 甲賀ショウ(猫) 決着

「お、俺達、勝ったのか?」

倒れるショウに目を向けていたシンが呟いていると、いつの間にかシンの元へ来ていたケンとノブが、シンへと頷いた。


そのままシンとケン、そしてノブは、無言でハイタッチをした。


シン「勝った!あのショウさんに勝ったぞ!?」

ノブ「はっはっは!!死ぬかと思ったぞ!」

ケン「・・・・疲れた」


シン達3人が、喜びあっている中、倒れるショウの元に駆けつけたアカを追ってショウの元へやって来た重清達が、シン達を見つめていた。


シゲ「すげー。ショウさんに勝っちゃったよ」

ソウ「だね。確かにあの連携は凄かったけど・・・」

ツネ「でもよぉ。最後のはショウさんの忍力切れだろ?ショウさん、あの白ローブも含めたら4連戦だぞ?」


「「「・・・・・・それはいいっこ無しってことで」」」


そう言い合って頷く重清たちであったが、その本心は違っていた。


確かに今回のショウの敗因は忍力切れであり、その原因はその前に行った戦闘も関係していない訳ではない。


では、重清達が同じ状況でショウと戦った場合、ショウを忍力切れに追い込むことが出来るかと問われると、答えは否、となる。


シン達の連携があってこそ、ショウを忍力切れになるまで追い詰めることが出来たのだ。


そもそもショウへとプレゼントされた『猫化びょうかの術』は、元々重清の発案とはいえ、ソウが作り上げた術である。


2中忍者部において、いや、中学生忍者の中にあっても群を抜いて忍力の高い、甲賀ソウが、である。


そのため『猫化の術』は、ソウの忍力に合わせて作られているのだ。

本来であれば、普通の中学生忍者だけでなく、その辺の大人忍者ですらも、すぐにショウ程の出力を出すことは難しいのだ。


それをその日のうちにこれ程までに使いこなしたショウが、異常なのである。


そしてそんなショウを、ここまで追い詰めたシン達の連携は、もはや中学生のレベルを超えるほどまでに成長しているのだ。


個々の力だけで言えば、1年生組と2年生組では1年生組に歩があるだろう。

特にソウにおいては、シン、ケン、ノブの誰と戦っても、1対1であれば勝てる程の実力を身に着けている。


しかしそれはあくまでも、個対個の場合のみである。


連携を取ったシン達には、重清達はまだまだ遠く及ばないのである。


それは、重清達自身が1番分かっていることであった。


だからこそ重清達は、負け惜しみの意味も込めてショウの忍力切れに触れたのだ。


彼らもまだまだ、負けず嫌いのお子様なのだ。


そんな重清達に、これまで沈黙していたチーノが声をかけた。


「それにしてもあなた達、本当に面白い術を作ったわね」

「面白い?『猫化の術』のこと?」

チーノの言葉に、重清はそう言って首を傾げた。


「確かに、あれは凄い術だったな。猫のポテンシャルの高さには、流石にびびったわ」

恒久は、そう言いながら頷いた。


「でもあれ、本当にただの猫の力なのかな?」

ソウだけは、不思議そうな目でチーノを見つめていた。


「あら、聡太も気付いていないのね」

チーノはそう言うと、まだ気絶しているショウへと目を向けた。


「ショウはさっき、息でシンの炎を消したでしょう?」

「あー、見た見た!すげー肺活量だよな!猫って、あんなに肺活量あるんだな」

重清が、ウンウンと頷いていた。


「んなわけあるかよっ!」

いつの間にか重清の頭に登っていたプレッソが、つっこんだ。


「あれって、忍力が込められてなかった?」

ショウを介抱をしながら、アカがそう言ってチーノを

見つめていた。


「あ、やっぱり?」

ソウもそれに同調して頷いていた。


「流石は茜と聡太ね。そのとおりよ。ショウはあの時、息に忍力を込めていたわ」

「すげぇ。忍力って、そんな風にも使えるんだな」

恒久が感心したように呟いていると、


「いや、普通の忍者では、あのようなことはそうそうできんよ。ましてや、お主らのような中学生ではのぉ」

プレッソの頭の上から、ロイがそう言うと、


「えぇ、ロイの言うとおりよ。あんなこと、忍者ならば平八くらいの者でないと、不可能よ」

チーノは頷きながらそう返した。


「ってことは、ショウさんってじいちゃん並の忍者

ってこと!?」

重清はそう言って、驚きの色を浮かべた。


「ふふふ。そうじゃないわ。確かにショウの才能もかなりのものだけどね」

チーノは微笑みながらそう言って、話を続ける。


「言ったでしょう?普通のでは、って」

「ん?どういうこと?ショウさん、忍者じゃなかったっていうの?」

チーノの言葉に混乱し始める重清の隣で、


「具現獣、か?」

恒久が呟いた。


「正解よ。あの『猫化の術』は、ただ猫の力を身に宿す術ではなく、猫の具現獣としての力を発現する術なのよ」

「なるほど。忍力と親和性の高い具現獣の力を持っていたからこそ、息に忍力を込めることも簡単に出来たんだね」

ソウは、チーノの言葉に納得したように頷いていた。


「ってことはショウのやつ、オイラみたいに心の力を浸かって足場を作ることも出来るのか?」

プレッソが、チーノへと問いかけると、


「そうじゃろうな。むしろショウのことじゃ。プレッソよりも上手くやるのではないかのぅ」

チーノに代わってロイが、そう答えて笑うと、プレッソは、


「ちぇっ。でもまぁ、ショウのことだからやりかねねーよな」

そう不貞腐れ気味に呟いていた。


「ショウさん、どんどん先に行っちゃうね」

ソウがそう言ってショウに目を向けると、


「・・・・だな」

重清は、ただそう答えてショウに目を向けていた。


「・・・・・・・」

そんなショウをアカはじっと見つめ続け、アカのその様子を、恒久はじっと見ていたのであった。

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