第327話:2年生 対 甲賀ショウ(猫) その3

「やったか!?」

吹き飛んだショウに目を向けながら、シンは言葉を漏らした。


「・・・・シン、それフラグ」

ケンがそう呟くように言っていると、ノブもシンたちの元へとやって来た。


「はっはっは!どうだ!やったか!!」

「・・・・はぁ。ゴリラ、お前もか」


ノブの言葉に、ケンはため息混じりにそう言ってショウの方を見た。


「そんなわけ、ない。油断するな」


ケンの言葉につられるようにシンとノブがその視線を追うと、そこにはショウが、笑みを浮かべて立っていた。


「はぁ。やっぱダメージは受けとらん、か」

そんなショウの姿に、ノブが肩を落とした。


ノブが全身全霊を込めた一撃だったのだ。

落ち込むのも無理はないのである。


「いや、そうでも無いらしいぜ」

そんなノブに、シンがショウへと目を向けながら言った。


シンの言葉にノブがショウを見ると、ショウは肩で息をしながら、膝に手をついていた。


ノブ「おぉ、少しだが、疲れてきたみたいだな」

ケン「しかも、少しだけ膝に来てる。膝が揺れてる」

シン「いやケン、よくここから膝の揺れまで見えるな」


ショウの言葉に、3人がそれぞれ言葉を漏らす。


「どうやら俺達の修行も、無駄ではなかったみたいだな」

シンがそう言うと、ケンとノブはしっかりと頷いた。


「ノブ、お前のパワーだけがショウさんの防御を破れる。が、それだけだと決定打に欠ける。ケン、俺達も攻めるぞ!

どうせショウさんのことだ。まだ隠し玉があってもおかしくない!

2人とも、油断するなよっ!」


「「おう!」」


「行くぞ!!」


シンの掛け声と共に、3人はショウへと攻め込んだ。


「もう来ちゃったかー。もう少し休みたかったなぁー」


そんな3人を見たショウは、そう呟きながらも楽しそうに3人に目を向けた。


ショウはそのまま杖を具現化し、肉球のせいで掴めないその杖を技の力で操りながら、


(武具伸縮の術)


杖を伸ばしてその場で横一線に薙いだ。


「跳べっ!!」


横から薙ぎ払われる杖を跳んで避けた直後、宙に舞うシン達の頭上から氷の雨が3人を襲った。


「「ぐぁっ!」」

シンとノブが氷の雨に襲われるなか、


(木壁の術)


咄嗟にケンは、頭上に木の壁を作り出してそれを防ぐと、そのまま空中の木の壁を足場に、ショウに向かって跳んだ。


向かいながら具現化した2本の刀を、ケンはショウへと振り下ろした。


ショウはそれを跳んで避け、再び具現化した杖をケンへと向けた。


「させるかっ!」


(火炎の術、と、火幻の術!!)


氷の雨から抜け出したシンは、ショウに向けて幻を交えた炎を放った。


ケンの刀を避けて飛び上がっていたショウの四方を、真贋入り混じった炎が囲んだ。

それを見たショウは、大きく息を吸い込み、そのまま自身を取り囲む炎に向かって吐き出した。

大きな風が、その場に吹き荒れた。


すると炎はみるみる小さくなり、そこには炎の幻だけが残されていた。


「なっ!?息で炎を消した!?」

シンはその様子に、声をあげていた。


自身の術を息でかき消されたのだから無理もないのである。


しかし、シンは勘違いしていた。

流石のショウでも、ただの息だけで炎を消すことなどできるはずもない。

ショウは吐き出す息と共に、水の忍力を放出して炎を消したのである。


それに気づかなかったシン達が見渡した時には、彼らの周りにはいくつもの水の砲弾が作り上げられていた。


ショウが息とともに放出した水の忍力が、直後に発動された『水砲の術』によって作り上げられた砲弾であった。


「「「ぐぁっ!!」」」


四方から襲い掛かるいくつもの水の砲弾に、シン達は声をあげた。



「「「はぁ、はぁ、はぁ」」」

やっとのことで止んだ水の砲弾の雨に、3人の姿はボロボロになっていた。


ボロボロになりながらも、耐えていた。


「はぁ、はぁ。やっぱショウさん、半端ねぇな」

シンが肩で息をしながら、ショウを見て呟いた。


「あれー、今ので誰も倒れてくれないのー?」

そんな3人に、ショウが声をかけた。


ボロボロになりながらもシン達3人は、ショウへと身構えた。


「やっぱり、シン達との手合わせは楽しいねー。この姿でここまで本気を出せたのは、シン達だったからこそだねー。本当は、もっと楽しみたかったんだけど。もう、時間切れだよー」

ショウはそう呟いていると、


「ボンっ」

と音を立てて『猫化の術』を解け、


「あははー。この術、思った以上に忍力消費が多いよー。今日は、僕の負け、みたい、だねー」

そう言うと、フッと意識を失い、その場に倒れこんだ。


「「「・・・・・へ?」」」

その様子に、もう反撃する気力もないほどに消費していたシン、ケン、ノブは声を漏らすのであった。

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