第325話:2年生 対 甲賀ショウ(猫) 開戦

「・・・・・・・・」


シン、ケン、ノブは、神妙な面持ちでショウと対面していた。


元忍者部の近藤達の襲撃を乗り切り、なんとなくそのまま忍者部の伝統、お礼参りをサラッと回避できるかと思っていたシン達であったが、そうはいかなかった。


近藤達の襲撃でダメージを受けたショウ自身が、シン達との手合わせを申し出たのだ。


この日、まだ何もしていないシン達に、それを断ることなどできるはずもなかった。


「いやー、みんな真剣そのものだねー」

これからのことに絶望するシン達の表情を見たショウは、そう言って笑っていた。


元々シン達は、このお礼参りに勝算があった。

いや、勝算しかなかったと言ってもいいくらい、3人には自信があった。


2人で組めばショウと互角に、3人ではショウすらも上回る連携こそが、シン、ケン、ノブの自信を支えていた。


しかしそれは、前日までの話である。


彼らの読みは、見事に外れてしまった。


もちろん、重清達がショウにプレゼントした、猫化の術によって。


猫化の術によって高められた体の力から繰り出される圧倒的なパワーとスピードを目の当たりにした彼らの自信は、ガタガタに崩れていた。


後輩である重清達ですら、それなりにショウを追い詰めていた。

その事実が、彼らの自信を更に崩れさせた。


自分達に、あれ程の攻撃ができるのか。

ただ、後輩の前でショウに叩きのめされ、恥をかくだけなのではないか。


そんな想いばかりが、シン達の頭の中に渦巻いていた。


そんななか。


「・・・・・シン、やろう」

意を決したように、ケンが口を開いた。


「このまま終わって、いいのか?」

ケンがそう言うと、ノブが笑い始めた。


「はっはっは!ケンがそんな事を言うなんて珍しい!しかし、確かにケンの言うとおりだな!」

「・・・・珍しいは余計だ、ゴリラ」

ノブの言葉にケンがいつものようにそう返すと、シンはため息をついた。


「あぁ、わかったよ。やればいいんだろ?やれば」

そう言いながらシンは、ケンとノブへと向かって、


「けどなぁ、負けても俺のせいにするなよ?」

と、2人を指差しながら言い放った。


「・・・・・俺はシンを信じてる」

「はっはっは!そうだ、ケンの言うとおりだ!お前は、俺達のリーダーだろ!!」

ケンとノブの言葉に、シンは苦笑い浮かべた。


「ったくお前らはよぉ!こういう時ばっかりそんな事いいやがって!もうわかったよ!!」

そう2人に叫んだシンは、ショウへと目を向けた。


「ショウさん、お待たせしてすみません!」

そう言ってシンが頭を下げると、ケンとノブもそれに続いて頭を下げた。


「いいよー。お陰で、力も戻ってきたからねー。やっと、この力で本気で戦えそうだよー」

ショウはそう言いながら、猫化の術を発動して猫の獣人へと姿を変えた。


「ん?え?ほ、本気?ちょ、ショウさん、今まで、本気じゃなかったんですか!?」

ショウの言葉に、恒久が声を上げた。


「本気ではなかったねー。だって、やっとこの術に慣れてきたところだからねー」

猫の獣人となったショウは、そう言って笑っていた。


「なははは。あれで本気じゃなかったんだってさ、ソウ」

重清が苦笑いを浮かべながらソウに目を向けると、


「ぼ、ぼくに振らないでよ。それじゃぁまるで、これから起きる惨劇が、ぼくのせいみたいじゃない」

「いや惨劇って言っちゃったよ!?」

重清へと返すソウの言葉に、シンが叫び声を上げた。


その目には、涙が浮かんでいた。


「えへへー。最近じゃぁ、3人に組まれたら全然勝てなかったからねー。術に慣れてきたお陰で、いい戦いができそうだよー」


(((・・・・マジか・・・・)))


ショウの言葉に、シン、ケン、ノブは、少し後悔を始めていた。


「だぁーーっ!!もういいよ!こうなったら全力でやってやるよ!!ケン、ノブ!!お前らも腹くくれっ!!」

シンが涙混じりで叫ぶと、ケンとノブも泣きそうな顔を上げながら、


「「おぅ!!」」


と、力強くシンへと返した。


「2人とも、一旦ショウさんから離れるぞ!いつもどおり、連携していくぞ!

1年っ!お前らもここから離れとけよ!巻き込まれても知らないからな!!

俺らの散りざま、しっかりと見とけよっ!!」

シンはそう叫ぶと、その場から飛んでショウ達から距離を取り、ケンもまた飛び上がってシンの元へ、ノブはシン達とショウを挟むような位置へと移動した。


「・・・・散りざまって言っちゃったよ」

「ほら、つっこんでる場合じゃないでしょ!ここから離れるわよ!」

ボソリとつっこむ恒久にアカがそう言うと、重清達は急いでその場から離れ、4人の様子を見つめていた。


2中忍者部、最後のお礼参りの、始まりなのである。

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