第309話:変な人からの伝言

「こ、このくらいか?」

「あ、ツネ。ちょっと忍力弱いかも」


「むぐぐぐぐ。ど、どうだ!?」

「シゲ、体の力強すぎ」


獣装じゅうそうの術』と契約すべく力を出す重清と恒久を見ていた聡太が、2人にそう注意していた。


「っていうかソウ、おれらの力の配分、分かるの?」

一旦休憩を取ることにした重清が、自身のベッドにドカリと座り込みながら聡太へと目を向けた。


「え?シゲはわかんないの?」

聡太は不思議そうに重清へと顔を向けた。


「えぇっと・・・ツネ、分かる?」

重清は聡太に答えず、恒久へと目を向けた。


すると恒久も、その場に座り込んで、


「いや、さっぱりわからねぇ」


そう言い切った。


「おぉ、良かった」

仲間が増えたことに安心した重清は、


「おれも全然わかんない」

と、聡太に言い返した。


「2人とも、安心しなさい」

そんな重清と恒久に、智乃が声をかけてきた。


「他者の力の配分なんて、そうそう分かるものではないわ。私だけじゃなく、平八ですらもそうなるには時間がかかったわ。聡太が異常なのよ」

「いや異常って」

智乃の言葉に、聡太が不満そうな顔を向けた。


「ほっほっほ。智乃の言い方はアレじゃが、その年で他の者の力の配分までわかる者など、そうそうおらんのは確かじゃよ」

定位置プレッソの頭の上から、ロイがそう、フォローを入れた。


「ちなみに、2人は分かるの?智乃は、分かるって言ってたけど」

重清が、プレッソとロイに目を向けた。


「ほっほっほ。伊達に長いこと生きとらんわ」

ロイがそう言って重清の言葉を肯定すると、プレッソは不貞腐れ気味に口を開いた。


「オイラはまだわかんねぇなぁ。どっかのジジババと違って、生まれて1年も経ってねーし」

「「ジジババ言うなっ!!」」

プレッソの言葉に、ジジババ達は声を上げていた。


「いや〜、そのやり取りも、だいぶ板についてきたね〜」

重清は、そんな具現獣達を笑って見つめていた。


「それよりも聡太」

そんな中、智乃が聡太へと目を向ける。


「あなたの力の配分、おそらく問題なかったわよ」

「あ、本当?自分の力の配分には自信なかったけど・・・でも、やっぱりこのままじゃ、術の契約は出来ないみたいだね」

智乃の言葉に、聡太はそう言って懐の卵へそっと手をやった。


「ってことは、やっぱ俺が頑張るしかないか」

重清は、そう言って立ち上がった。


「まぁ、ソウが力の配分掴んだんだし、無理に契約しなくてもいいんじゃないか?」

恒久は、そう言って重清に目を向ける。


「いや、ここまで来たら契約したい!」

そう言って立ち上がる重清を見て、


「へいへい。じゃぁ俺も、もう少し付き合ってやるよ。ソウ、アドバイス頼むな」

そう言って立ち上がり、重清と恒久は再び『獣装の術』と契約すべく力を出していった。



そして1時間後。


「ピロリン♪」

「っしゃぁーーっ!!」

頭の中で着信音が鳴り響いた重清が、叫び声を上げた。


「おっ。やっとか」

先に終わっていた恒久が、そう言って重清に目を向けた。


「あれ?何も起きない」

叫んだ重清は、プレッソ達を見つめながら呟いた。


「重清。術の契約書を見てみなさい」

智乃の言葉を聞いた重清は、手元に術の契約書を具現化させて、手元に洗われた1枚の紙に目を落とした。


「あ。今から協会に来いって書いてある」

そう言って重清は、聡太と恒久に目を向ける。


「あ、そんなパターンもあるんだね」

1度、契約にこぎつけたのと同時に別空間へ強制移動させられた経験のある聡太がそう言っていると、


「むしろ、このパターンの方が多いみたいよ。オウが、手を抜いているだけよ」

智乃が聡太へそう返していた。


『飛翔の術』の現管理者であり聡太の師、甲賀オウをディスりながら。


「まぁ協会だったら、忍者なら簡単に行けるからな」

恒久は、最近身につけた知識を当たり前のように呟いていた。


「あぁ〜、ちなみに、2人も来いってさ。なんか、変な人かも」

「「どうゆこと!?」」


重清の言葉を聞いた聡太と恒久は、身を乗り出して重清の術の契約書を覗き込んだ。


『今すぐ協会まで来るにゃ☆近くにいる2人も一緒だにゃ☆』


「「・・・・・変な人、だね(な)」」


聡太と恒久は、術の契約書に書かれている1文に、そう呟いていた。


「で、行く?」

重清が2人を覗き込むと、


「「もち!」」

2人はそう言って頷いた。


「よし!じゃぁ、協会に向けて出発だ!!」


重清はそう言いながら部屋の出口に走り出し、足を止めて振り向いた。


「で、協会ってどこにあるの?」


「いや知らねのかよっ!!『中央公園』から行けるよっ!!」


恒久のつっこみが、重清の部屋に響くのであった。

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