第305話:いざ、猫カフェへ

恒久が、伊賀本家と一悶着起こしている頃。


ショウの卒業プレゼントを思いついた重清と聡太は、ある店の前へと到着していた。


「シゲ、ここって・・・さっき聞いたショウさんのプレゼントのアイデアは確かに良いと思うけど、なんでここに?」

聡太は不思議そうに、重清を見つめていた。


「あれ?ソウ知らない?ここにはあの人が―――」

そう言いながら店の中へと重清が足を踏み入れると。


「いらっしゃいませ―――って、よう!お前らか。よく来たな!」

「あ、グラさん」

出迎えた店員を見て、聡太が声を漏らした。


2人を出迎えたのは現岡うつおか神楽かぐら、忍名 伊賀グラであった。


「にゃぁ」

グラは足元の猫を撫でながら、重清達に笑顔を向けていた。


2人がやって来たのは、最近何故かめちゃくちゃ繁盛している噂の、とある猫カフェである。


神楽は、具現獣狩りについてはオウに見逃されてはいたが、念のためしばらくの間はオウの監視の範囲内に留まるようにと言いつけられたのだ。

そこで神楽は、趣味と実益を兼ねてこの猫カフェで働き始めていたのであった。


実はこの猫カフェ、ショウの行きつけの店であるのだが、重清達はそんなことなど知る由もない。

ならば何故、重清がこの店へとやって来たのかというと。


「グラさん。ちょっと聞きたいことがあるんだけど、ちょっといい?」

「ん?あぁ、もう少しで休憩だから、少しそっちで待ってな」


そう言われた重清と聡太は席につき、猫達と戯れながら神楽の休憩を待った。



「よう、待たせたな」

少し経った頃、神楽がコーヒーを3つお盆に乗せてやって来た。


「えっ、ここの飲み物、お高いんでしょう?おれら、そんなに金持ってないよ」

「心配すんな。俺の奢りだよ。お前らには散々迷惑かけちまったからな」

重清の言葉に、神楽は笑いながらそう返して2人の前にコーヒーを差し出した。


「おっ、グラさん気が利くじゃん」

「ご馳走になります」

2人はそう言って、重清はミルクと砂糖を入れ、聡太はブラックで、それぞれコーヒーに口をつける。


「それで、俺に聞きたいことってなんだ?」

「実は―――」


重清と聡太は、これまでの経緯を神楽へと小声で話し始めた。



「なるほどなぁ」

話を聞いた神楽は、笑いながら言った。


「ショウへのプレゼント、か。中々面白そうじゃねーか。でも、俺の話が参考になるとは思えないけどな」

「まぁ、その辺は色んな人に話を聞いてみるつもりだからね。あとでチーノ達にも聞くつもりだし」


「チーノって、重清んとこの猫だよな?元は雑賀平八様んとこにいたっていう。そのチーノと、重清のプレッソ、ここで働いてくれたら人気出ると思うんだけどなー」

神楽はそう言って、重清を見つめていた。


「えー、バイト代出るなら考えてもいいけど」

「あー、そりゃ無理だ。流石に猫にバイト代は出せねえよ」


「そりゃ残念。ま、一応2人には聞いてみるよ」

「あぁ、よろしく頼むよ」


神楽はそう言うと、席に備え付けられた紙に手を伸ばし、胸元からペンを取り出して何やら書き始めた。


「これが、お前らの聞きたかったことだ。参考になるといいけどな」


「サンキュー、グラさん!」

「ありがとうございます!」

2人はそう言うと、コーヒーを飲み干して立ち上がった。


「なんだよ、もう行くのか?」

「まぁね。早く取り掛からないと、卒業式に間に合わないからさ」


「アテはあるのか?」

「まぁ、その辺はソウの腕の見せ所、かな?」


「えっ、ぼく!?」

聡太は、突然のことに大声を上げた。


「聡太。猫達が怯えるだろ?」

「え、あぁ、ごめんなさい」

聡太は神楽へと謝りながら、重清に目を向けた。


「ちょっとシゲ!それは聞いて無いんだけど!」

「あれ?言ってなかったっけ?いやー、おれも頑張るけどさ。ソウの方が、可能性高そうだし・・・」


「ぼくだって自信無いよ!ちゃんとシゲも頑張ってよ?」

「まぁ、ツネにも協力してもらうし、なんとかなるだろ!」


「もう!シゲ、そういうとこあるよね!計画が雑っていうかさ!」

「ま、そのための右腕だからな」


「はぁ、シゲの司令塔は大変だよ」


「右腕な」

「司令塔っ!!」


「お前ら、本当に仲良いのな」

いつものやり取りを繰り広げている2人に、神楽は笑顔を向けていた。


「っていうかお前ら、早くプレゼントに取り掛かりたいんじゃなかったのか?」


「「そうだった!!」」

声を揃えた重清と聡太は、それぞれが神楽へコーヒーの礼を言って、猫カフェを後にした。


「あいつら、元気だなぁ・・・」

重清達の背中を見つめていた神楽はそう呟きながら立ち上がり、


「いらっしゃいませ!」

店内へと入ってきた、全身を黒に包んだ青年に、そう言って笑顔を向けるのであった。

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