第285話:大忍弾の術

『シゲ、大丈夫!?』

ソウの声が、重清の脳内に響いた。


ソウの武具、レーダーの能力の1つ、【通信】である。


(あぁ、ソウもプレッソも大丈夫?)

『こっちはなんとか大丈夫!』

(オイラも大丈夫だ。けど、あいつかなり強いぜ?)


(だな。どうする?)

『どうって・・・シゲ、大忍弾の術、使える?』


(まぁ、使えるっちゃ使えるけど)

『今のぼくらの中で一番強いのはあれだと思うんだ。ぼくとプレッソであの人を抑えるから、シゲは大忍弾の術で攻撃して』


(結局、さっきと同じだな)

『ま、そういうこと。プレッソ、イケる?』


(あぁ、やってやるよ!今度はオイラのとっておきを見せてやる!)

プレッソはソウに答えると、変化の術で玲央の姿へと変化した。


「行くぜ、ごちゃまぜ男!!」

「「ぶっ!!」」


勢いよくグラへと走り出す玲央の言葉に、重清とソウが吹き出した。


「なっ、笑ったゴリ!?この姿、格好良いぽっぽわぉーーん!!」

グラは若干涙目になりながら、向かってくる玲央が振るった拳を、翼を羽ばたかせて空へと避けた。


「なに!?」


玲央から一瞬目を離したグラが見下ろすと、3人の玲央が空中で留まっていたグラに向かって飛び上がってきた。



「ほぉ。あやつ、心の力をここまで操るようになっていたか」

その様子を見ていたロイが、智乃の頭の上から感嘆の声を漏らした。


「えぇ。あの子は常に心の力を使った足場を主戦力にしていたから。ちょっと修行のステージを上げてみたの」

「ちょっとじゃと?あれに至るまでには、かなりの修行が必要なはずじゃがな。

最近、夜にぐったりとしていると思ったら・・・」


「あら、私は雅ほど厳しくはないのよ?」

「雅ちゃんと比べる時点で、お主も大概厳しいわい」

ロイは、呆れながら智乃へと呟いていた。



「「「喰らえっ!!」」」


そんなジジババの会話など知りもしない3人の玲央が金の忍力で鉤爪の様な爪を作り上げ、一斉にグラへと振るった。


「ゴリーーっ!!」

グラが正面の玲央を殴りつけると、ニッと笑ったその玲央は、拳を受けて吹き飛びながら霧散していった。


「「ハズレだ!」」


そう言いながら残った2人の玲央が、その爪でグラの翼をそれぞれ切り裂いた。


「ぐっ!」


翼を切り裂かれたグラは、空中にとどまることができずそのまま地へと落下を始めた。



「玲央、ナイスだよっ!」

それを待ち構えていたかのように言ったソウは、何とか地へと着地したグラの足元から炎の壁を出現させた。


「ちぃ、また炎わぉーーーん!!」

グラは四方を囲んでいる炎の壁に舌打ちすると、地面に向かって構えた。


「ゴリーーーーー!」

そのままゴリラの拳が地面へと叩きつけられると、それによって発生した爆風が炎の壁を吹き飛ばした。


モクモクと広がる土埃の中、グラが肩で息をしていると。


「足止めって感じはしなかったけど、タイミングはバッチリってことで!」


そう言いながら重清が、指先に集めた忍力をグラへと向けていた。


「いっけぇーーー!ドカンっ!!」


重清が放った大忍弾の術が、グラへと襲い掛かった。


「次から次へと忙しい奴らゴリっ!!!」

グラは言いながら、目の前に迫る忍力の塊へと構えた。


そのままグラは、ゴリラの腕でその忍力の塊を掴み、握りつぶそうとした。


(ぐっ、なんてパワーだよ!)


両手の平で大忍弾の術を受け止めながらグラは、その勢いに押し負け、オオカミの足を引きずりながら後退していった。


「「「いっけぇーーーーー!!」」」

重清とソウ、プレッソがその様子に叫んだその時。


「ぐっ、がぁっ!!!!!」

グラは叫びながら大忍弾を握りつぶし、その場に膝をついた。


「はぁ、はぁ、はぁ。やるじゃねぇかガキども。今のはちぃっと、やばかったぞ」

そう言いながら重清達を睨みつけるグラの首元に、突然一本のじょうが突きつけられた。


「「ショウさん!」」

「もー、やっと見つけたよー」


重清とソウの言葉に、グラに杖を突きつけたまま、ショウがにこやかに笑っていた。

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