第282話:ジジババパス

「具現獣をよこせ!?ちょ、お兄さん、いきなり何言い出してんの!?」

重清は、グラの言葉に驚きながら返した。


「何って、そのまんまの意味だよ。その年で3体も具現獣を持ってるなんて・・・・・」

「え?なに?最後の方聞こえなかったんですけど!?」


「なんでもねーよ。それよりそっちの!」

グラはそう言いながら、ソウへと目を向けた。


「お前の懐にいるのも、具現獣だな?」

「えっと・・・正確には、具現獣の卵ですけど・・・・」


「卵だぁ!?そんなパターンありかよ!?」

「あー、ちなみに、ソウもその卵の親の1人です」

卵に驚いているグラに、重清が余計な情報を与えた。


「具現獣と?は?あいつ、中学生でどんだけ上級者なんだよ」

重清の言葉に、グラはブツブツと呟いていた。


「ソウ、あの人からも上級者扱いされちゃったね」

重清は、ソウに笑いかけた。


「絶対シゲのせいだけどね。っていうか、そんなに笑ってる場合じゃないと思うよ?」

ソウが呆れ声でそう言ってグラに目を向けると、自分の中でなんとか『上級者問題』に見切りをつけたグラが、重清を指さした。


「とにかく、そっちの!お前からは具現獣をいただくぞ!」

「普通に嫌なんですけど」

重清は、真顔でグラへと返した。


「素直に渡せばいいものを。ま、だったら力ずくで奪うだけなんだけどな」

グラはそう言いながら、ニコリと重清に笑いかけた。


「笑ってる!あの人笑ってるよ!!怖いよ、ソウ!」

「いや、ぼくに言われても」

ソウはため息をつきながら重清へと返して、グラを見返した。


「って、ふざけてる場合でもなさそうだね。シゲ、流石に大人相手じゃ危ないから、僕も手を貸すよ。このままだと、この子もよこせって言われそうだしね」

ソウは、そう言って卵のある懐に手を添えた。


その顔には、僅かながら父としての表情が浮かんでいた。


「よし、じゃぁ2人で行くぞっ!」

「重清、オイラ達を忘れんなよ!」

威勢よく言った重清に、プレッソが抗議の声を上げた。


「おっと悪ぃ。じゃぁ、5人で行くぞっ!!」

「私はパスするわ」

「儂もパスじゃな」

またしても元気に言った重清の言葉に、チーノとロイが被せ気味に言ってきた。


「あぁもうっ!さっきからみんな邪魔ばっかりじゃん!!っていうか、なんでチーノとロイは助けてくれないのさ!?2人とも、狙われてんだよ!?」

重清は、チーノとロイを恨みがましく見た。


「たまには私達を守ってよ。御主人様♡」

チーノは、笑いながら重清へと返した。


「そうじゃな。1番幼い我らを、守ってくれ♪」

ロイも、そう言って重清に笑いかけた。


「いや、2人とも可愛く言ってるけど、おれより年食ってんじゃん」


「「うるさいっ!!」」


チーノとロイが、声を揃えた。


「とまぁ、冗談はさておき」

チーノは真面目な顔で、グラへと目を向けた。


「せっかく格上と手合わせ出来るんだから、重清と聡太、それとプレッソだけでやってみなさい」

「そうじゃな。儂らが出張っては、お主らの修行にならんわい」

「えー、オイラは参加決定かよー」

チーノとロイの言葉に、プレッソが面倒くさそうに呟いた。


「当たり前じゃないの。プレッソは、そっち側よ」

「こんな時ばっかり兄さんかよ。まぁいいぜ。ジジババ組は放っておいて、オイラ達だけでやってやるよ」


「「ジジババ言うなっ!!」」


プレッソの心無い言葉に、再びジジババが抗議の声を揃えていた。


「とまぁ、ウチの師匠連中が言うておりますので、ここはおれたちだけでやってみるか」

そう言って、重清はグラへと向いた。


「あっ、じゃぁチーノ、この子のことお願い!」

ソウは、懐から卵を取り出し、チーノへと渡した。


「えぇ、任せなさい」


チーノは変化の術で智乃へと変わると、卵を受け取って微笑んだ。


「話し合いは済んだか?どうだ、そいつらを俺に渡す気になったか?」

重清達の会話を待っていたグラが、そう言って重清を見ていた。


「あ、それはなしで。こっちはおれとソウ、あとこのプレッソだけであんたを迎え撃つことになったよ」


重清は、プレッソを指しながらグラへと返した。


「はっ、そっちの2人は手伝ってくれねぇのか?随分具現獣を手懐けてるみたいだな」

グラは小馬鹿にするように、智乃といつの間にか智乃の頭の上に居座っていたロイを見ていた。


「お陰様で!」

「あー、シゲ。今の多分、嫌味だよ?」


「え?そうなの!?」

重清は驚きの表情でグラを見た。


「はぁ。なんか調子狂っちまうな。が、そうも言ってられねぇ。さぁて、そいつらいただくためだ。ちぃと痛い目みてもらうぜ?」

そう言って構えるグラに、重清とソウ、そしてプレッソも身構えるのであった。

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