第266話:現れたのは

重清達が動物達の先導のもと森の中を進んでいくと、森のひらけた場所へとたどり着いた。


「あそこ、凄い忍力よ」

智乃は、一点を見つめながら小声で一同に声をかけた。


智乃の言葉に、全員が身構えていると、


『そう固くなるな。主らと敵対心するつもりはない』

そんな声が、聞こえてきた。


「さっきも気になったけどこの声・・・」

「うん。なんだか、頭に直接聞こえてくるみたい」

聡太の言葉に、茜が頷いて返す。


そのまま智乃が見つめていた先に歩いていくと、彼らの視線の先に、一頭の動物がいた。


「いや、ドラゴンっちゃドラゴンだけどよ」

そうつっこんだ恒久の視線の先にいるのは、一頭のコモドドラゴンであった。


「え?龍とドラゴンって、別物じゃないの?」

「うん。重清君はもう少し黙っていようか」

相変わらずの重清の頭を掴んだガクは、そのコモドドラゴンへと視線を向けた。


「お前がここの森のあるじというわけか?」

『そんな大層なものではない』

ガクの問いかけに、コモドドラゴンが答えた。


「お前、具現獣だな?」

『あぁ、そうだな』


「ここに我々を呼んだ目的はなんだ?敵対するつもりはないようだが」

『なに、少し頼みがあってな』


「頼み?いや、その前に聞かせてもらおう。この森の近くの村で、動物達が怯えている。これはお前の仕業か?」

『そうか。怯えさせてしまったか。それは悪いことをしたな』


「認めるんだな」

『あぁ、認めよう。それは、我のせいであろう』


「そもそも、お前は何者だ?」

『そなたも言うたではないか。我はただの具現獣よ。ほんの少しだけ長生きはしておるがな』


「えっと、ちなみに何年ほど?」

ガクとコモドドラゴンの会話に、聡太が割って入った。


『ほぉ。お主中々素晴らしい力を持っているようだな。あぁ、我の年の話だったな。いくつに見えるかな?』

「いや女子かよっ!!」

恒久が、咄嗟にコモドドラゴンへとつっこんだ。


『おぉ、これがつっこみというやつか。しかしお主、まだまだのようだな』

コモドドラゴンは、恒久に目を向けて言い放った。


我らがつっこみ番長に、物言いが入った。


「なんだと?」

恒久は、コモドドラゴンを睨みつける。


『この男女平等の世で、今の我の発言を女子おなごと表現してつっこむとはな』

「はっ!!」

コモドドラゴンの言葉に、恒久ははっとした。


はっとした時に、『はっ!』と、人は本当に言うものなのだ。


「ガクさん。この勝負、俺らの負けだ。コイツには、敵わない」

「いや何の勝負だ!」

肩を落として言う恒久に、ガクはつっこんだ。


『・・・・話を戻しても良いかな?』

「あぁ、すまない」

若干気を遣ったように言うコモドドラゴンに、ガクは苦笑いを浮かべて頷いた。


『我の年の話であったな。すまないが、覚えてはおらんのだよ。500年程までは数えておったのだがな』


「「「「「「500年!?」」」」」」


コモドドラゴンの言葉に、重清達4人と、プレッソ、ロイが声を揃えた。


ソウ「うわぁ、凄くお年寄りだったんだね」

ツネ「そりゃ、俺のつっこみに、つっこみ返せる訳だ」

アカ「すっごいおじいちゃん!」

シゲ「え?あいつ、オスなの?」

ソウ「シゲ、今大事な話ししてるから、少し黙っておこうか」

シゲ「ちょ、おれさっきから黙らせられてばっかりなんですけど!?」

プレ「ロイ、お前よりも年上だな」

ロイ「500・・・儂の長寿記録があっさりと破られるとは・・・」

ツネ「いや一番ダメージ受けてんな!」


コモ『・・・・・いつもこんなに騒がしいのか?』

チノ「えぇ。賑やかで楽しそうでしょう?」

ガク「はぁ〜。俺は今日1日で、ノリさんの苦労がよく分かったよ」


そのまましばらく、コモドドラゴンの年齢問題についてはわちゃわちゃした後、ガクが再びコモドドラゴンへと目を向けた。


「騒がしくてすまない・・・いや、すみません」

かなりのご高齢ということもあり、ガクが言葉を改めると、


『まぁ、これほど騒がしいのも久方ぶりだ。気にするな』

コモドドラゴンは頷いてそう答えた。


「それで、そちらの頼みというのは?」

『あぁ、そうであったな。なに、それ程難しい事ではない。我の出産に立ち会って欲しくてな』


「「「「「「「出産!?」」」」」」」

約1名を除いた一同が、声を上げた。


「なんだ、メスなんじゃん」

重清だけは、1人そう呟いていた。


「「「「「「「お前は少し黙ってろ!!」」」」」」」

「ねぇ、なんか今回、おれの扱いやすい酷くない?」


『本当に賑やかなことだ。ちなみに我は、男だ』


「「「「オスなのに出産??」」」」


コモドドラゴンの返しに、重清、聡太、茜、恒久が声を揃えるのであった。

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