第264話:人の家をあさろう

「ここのようね」

先頭に立った智乃チーノが、ボロボロの小屋を見て言った。


「うわぁ、ボロボロじゃん」

重清は、目の前の小屋を見てそう呟いた。


「まぁ、儂よりも年季が入っておるのだ。仕方あるまいて」

重清の頭上から、小さなチワワが重清へと声をかけた。


「確かにな。まぁ、今はただの可愛いワンチャンだけどな」

玲央プレッソは、自身の頭の上にいる豆しばに笑いかけた。


「ふん。年相応の姿をとったまでよ」

豆しばが、その見た目と相反するジジ臭さで玲央へと返していた。


「それにしてもロイ。なんでわざわざ犬の姿してるの?」

聡太が、豆しばロイへと目を向ける。


「ソウも思うよな?せっかくプレッソ達と術の共有ができるようになって変化の術が使えるのに」

重清が笑いながらロイを突いていると、


「儂はずっと犬の姿をしていたからな。今さら人の姿を取るよりも、こちらの方が落ち着くのじゃよ」

ロイは重清の指を甘噛しながら、聡太へと答えた。


「ほらあんた達、無駄口叩いてないで入るわよ!」

そんな重清達を小突きながら、茜はガンガンと小屋の中へと入っていった。


「あ、ちょっと茜ちゃん!慎重に行動してくれないと・・・はぁ。さすがは雅様の弟子だな」

ガクはため息交じりにそう言うと、


「じゃ、行こうか」

重清達に頷いて、小屋へと入っていった。


「中もボロボロだな」

小屋へと入るやいなや、恒久は中の様子にそう漏らした。


「何百年も前の建物が残されているんだ。この村の経済状況から、保存にお金はかけられないだろうからな。充分綺麗に保存されてるさ」

ガクはそう言いながら周りを見ていた。


重清達が、適当に小屋の中を家探しし始めると、


「あ、あまり手荒くしないでいただけると・・・」

ついてきた村長が、アワアワとしながら言っていた。


ちなみにこの村長、プレッソとチーノが人に、ロイが豆しばへと変化したのを見て一同気絶していたりする。


そして一行は、そんな村長の目覚めを待ってこの場へとやって来たのである。


村長しかこの小屋の場所知らないから。


「村長さんもこうおっしゃっていることだし、戻るか。特に手掛かりになるようなものも無さそうだしな」

「いいえ、そんな事はなさそうよ」

ガクが家探ししている重清達へと声をかけると、智乃がそれを遮った。


「ふむ。確かにな」

「えっ?なになに、オイラ全然わかんねーぞ」

ロイが智乃へと頷くと、玲央は智乃とロイの顔を交互に見ていた。


「僅かだけどこの小屋、忍力を感じるわ」

「智乃さん、それは本当か!?」

ガクは、智乃へと目を向けた。


天下の警察官が、幼女をさん付けである。


「えぇ、間違いないわ」

「ふむ。そうじゃのぅ。しかもこれは・・・」

智乃の言葉に頷きながら、ロイは言葉を濁した。


「ロイも感じたのね。恐らく先程まで、ここに何かがいたわ。しかも、この忍力は人のものでは無い」

「それって・・・」

聡太が、そう言ってキョロキョロとまわりに気を配りながらもスマホレーダーを取り出した。


「ダメだ。探索でも引っかからない」

レーダーを使って辺りをレーダーの能力、『探索』で探った聡太は、首を振った。


「既にここにはいないようね。でも、この先の森、面白そうよ?」

「ほぉ。これはこれは」

ニコリと智乃が笑い、ロイもホッホッホと笑いだした。


「こ、この先・・・」

村長はボソリと呟いていた。


「え、なになに?この先の森に何かあるの?」

重清が、智乃とロイを交互に見る。


ちなみに玲央は、


「ちぇっ。オイラ全然わかんねーや」

と、ひとりイジケていた。


「この先の森、全体が微弱な忍力に覆われているわ」


智乃の言葉に、全員が綺麗に掃除されている窓から覗く森へと目を向けた。


「・・・窓、きれいだね」

「村人達が、当番で掃除をしておりますからな」

重清の脱線に、村長が律儀に答える。


「よし、重清君は少し黙っていようか」

ガクは重清の頭をワシャリと強めに撫でると、智乃へと目を向ける。


「俺には感じないが、確かなのか?」

「えぇ。そしてその先に、何かがいるわ」


「りゅ、龍じゃ!!」

その時、村長が叫びだした。


「この森は、村人ですら恐れて近づかないのです!恐らくここに、伝説の龍が!!」

「わっ、わかりましたから、少し落ち着いてください!」

突然取り乱した村長に、ガクはそう言って村長の肩を掴んだ。


「ここからは、我々だけで行きます。村長さんは、役場の方に戻っていてください」

「し、しかし―――」


「いくら彼らも忍者とはいえ、私には彼らを守る義務がある。そのうえあなたともなると、守りきれる自信がありません」

「そ、そうですか・・・」


村長はそういいながらも、


(え。この子達の実力は保証するんじゃなかったの?)

と、心の中でつっこんでいた。

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