第203話:プレッソとゴロウの会話
倒れたままのプレッソの元へと歩いてきたゴロウに、プレッソは仰向けになってゴロウを見上げたまま笑いかけた。
(へへへ・・・うちのバカは、『全てを守る』なんてたいそうな目標を持ってるからな。オイラも、それなりには強くならねーとよ)
(全てを、か。お主の主人は、なかなか面白い男じゃのぅ。しかし童よ。もしもお主が儂のように、主人の子や孫の具現獣になることを考えているならば、辞めておいた方がよいぞ?)
(はっ、んなこと、考えたこともねーよ)
(ほぅ。お主、存在が消えるのが恐ろしくはないのか?)
(そんなの、人間だって同じだろ?オイラ達具現獣だけが延々と生き続ける方がおかしいんだよ)
(なるほどのぅ。つまり、儂はそのおかしい存在というわけか)
(別に爺さんを否定してるわけじゃねーよ。あんたは、求められて生きてんだろうからな)
(求められて、のぅ・・・)
(なんだよ、違うのか?)
(・・・・・・お主の主人、名はなんといったかな)
(オイラの質問は無視かよ。重清だよ重清。雑賀雅、あんたなら知ってんじゃねーのか?あいつは雑賀雅の孫だよ。あと主人じゃなくて相棒な。)
(ほぉ、雅ちゃんの孫か。ということは、あの雑賀平八の孫でもあるわけか・・・)
(雅ちゃんて。あ。あんたはずっと昔から爺さんだったんだよな)
(まぁ、ざっと150歳といったところかのぅ。ん?まさか、もう1体の具現獣は雑賀平八の具現獣か?)
(チーノのことか?あぁ、そうだよ。アイツはもともと、雑賀平八の具現獣、シロだよ。って爺さん、めちゃくちゃ爺じゃねーか!)
(少しは尊敬せい。それにしても、お主のそばにも、お主の言う『おかしい存在』がおるではないか)
(あいつは、元々本人の意思で生きてるわけじゃないらしいからな。まぁ、今となっては新しい人生を楽しんでるみたいだけどな)
(無理やり、というわけか?)
(別にそんなんじゃねーよ。平八の頼み、だったらしいぜ)
(『頼み』で具現獣を縛るとは、なかなか恐ろしい男よ)
(ま、本人が今を楽しんでんだ。問題はねーだろ。きっと平八も、そうなることがわかってたんだろうぜ)
(そうか。しかし、であればこそ、あのシロ、今はチーノだったか。あやつはあの重清とかいう主人の後、誰かの元につくことはないのだろうな)
(あぁ、それはアイツも言ってたし、オイラもそう思ってる)
(ほぉ。そんなにあの重清という小僧は、離れがたい魅力があるのか?)
(いや、別にないぞ?)
(ふむ。言うておる意味が分からんな)
(あいつ、ただのバカだからな。『全てを守る』なんて言ってるけど、それもほとんどノリで言い出しただけだし。それ以外の目標なんて、今のアイツには何もないからな)
(であれば、何故、お主らは重清という小僧の元にいたいと思う)
(何もないから、だよ)
(ふむ?)
(あいつの周りには、すげー忍者がいっぱいいるんだ。あいつの爺さんや婆さんは伝説級に凄い忍者だし、同じ忍者部にも才能の塊みたいなやつが何人もいる。でも、それだけなんだよ。あいつ自身は、ただバカで暢気なだけの、大した目標もない普通のガキなんだよ。
そんなガキが、これから何を目指してどう成長するか、楽しみだとは思わねーか?しかも、オイラ達具現獣は、それを特等席で見ることができる。いや、違うな。一緒に歩んでいくことができるんだ。こんなおもしれーこと、他にないだろ?
だから、オイラもチーノも、あいつが死ぬ時は、一緒に、って決めてんだ。アイツ以上に面白そうな人生送るやつ、いないと思ってるからな)
(ふむ。しかし、もしかするとあの小僧の人生は、このまま何も起きない、面白くないものになるかもしれぬぞ?)
(そん時はそん時だよ。その一か八かも含めて、オイラ達は楽しむつもりだからな)
(まぁ、言いたいことは分からんでもない、か)
(別にわかってもらわなくてもいいよ。オイラとチーノだけが、勝手にそう思ってるだけだし。まぁ、あいつの近くにいると、退屈しないし、それでいてなんか落ち着くってのもあるけどな。よく話が脱線はするけど)
(・・・・・・羨ましいのぉ)
(ん?なんか言ったか爺さん?オイラもう、忍力が切れそうだよ)
(ほっほっほ。何でもないわい。儂の攻撃を受けて、ここまで話しを続けることができただけでも、お主は十分凄いわ。ほれ、さっさと相棒の元へ戻らぬと、しばらく出てこれなくなるぞ?)
(あぁ、そうさせてもらうよ。じゃ、爺さんまたな。今度、オイラにも修行、つけてくれよ。多分、重清も一緒にって言うと思うからさ)
(具現獣に師事を仰ぐとは、お主の相棒は、十分面白い男ではないか。まぁ、考えておくわ)
(へっへっへ~、良い相棒持って、羨ましいだろ~)
そう言ってプレッソは、重清の元へと光となって戻っていった。
「・・・・・同じ雑賀で、どうしてこうも違うのかのぅ。やはり、あやつをどうにかせねばいかんかのぅ・・・」
ゴロウは、1人そっと呟くのであった。
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