第202話:プレッソ 対 ゴロウ
「爺さん、あんたもあんな奴らにこき使われて大変だな!」
プレッソが、ゴロウに向かって声をかけた。
年長者に対して、随分な口のきき方である。
「・・・・・・」
それに対してゴロウは、ただその場に佇み、じっとプレッソを見据えて―――
「Zzzzzzz」
「いや寝てんのかよっ!!」
どうやらゴロウは眠っているようであった。
「いくら長いこと生きてるからって、流石にオイラを舐めすぎなんじゃないか!?」
プレッソはそう言って、そのままゴロウに向かって突進した。
「オイラを甘く見たこと、後悔しやがれっ!!」
そのままゴロウに向かって体当たりしたプレッソは、ゴロウへとぶつかった瞬間にその違和感に気づいた。
「げ、幻術―――おごっ!」
ゴロウに体当たりをして油断していたプレッソを、真横から本物のゴロウが頭突きで襲った。
そのまま吹き飛ばされたプレッソは、体勢を整えて着地し、再びゴロウに目を向けた。
プレッソの視線の先にいるゴロウは、あくびをしてその場にただ立っていた。
「・・・さすがに、オイラも少しだけイラっとしたな」
そう呟いたプレッソは、ゴロウを取り囲むように小さな足場の幻術を作り出し、それを実体化させた。
「行くぞ、爺さん!」
そう言ったプレッソは、ゴロウの周りに作り出した足場へを飛び出し、そのままゴロウを中心に高速移動を始めた。
「来てみろよ!爺さん!!」
プレッソは移動しながら、ゴロウを挑発した。
プレッソの挑発を受けたゴロウは、『おすわり』の姿勢でただじっと前を向いていた。
そして突然スッと立ち上がったかと思った直後、プレッソの背を重い衝撃が襲った。
「がっ・・・」
突然プレッソの頭上に現れたゴロウの猫パンチならぬ犬パンチをその背に受けたプレッソは、そのまま地面へと叩きつけられた。
「プレッソ!うごっ!!」
離れた場所で美影の攻撃を避けていた重清が、プレッソに気を取られていたスキに美影の拳を腹に受け、悶絶していた。
(し、重清、こっちは気にすんな!いざとなったらちゃんとお前の中に戻る!!だからお前は、ちゃんと自分のことに集中しとけよ!!)
(痛ててて。わかったよ。相棒を信じないなんて、おれもまだまだだな)
(へっ、そういうことだよ。少しはお前の相棒を信じろってんだ!)
(まぁ、おれ的には相棒っていうより、弟なんだけどね。痛ってぇ!!)
重清が、再び美影からの攻撃を受けて心の中で叫んでいた。
というか、実際に声に出して叫んでいた。
(脱線はここまでにしとくぞ重清!また後でな!)
(はいはーい!)
「・・・ほんと、あいつどんだけ暢気なんだよ。っと、爺さん待たせて悪かったな」
地面から起き上がったプレッソが、そう言って近くに降り立っていたゴロウへと目を向けた。
(・・・・・・相棒、か。懐かしい響きじゃ)
「ん?」
突然聞こえたゴロウの声にプレッソが反応していると、ゴロウはフッと笑みを浮かべ、直後プレッソの周りに、いくつもの小さな足場が現われた。
「へぇ、オイラとおんなじことやるってか。先輩のお手並み、拝見させてもらうぜ!」
プレッソがそう言って構えるのと同時に、ゴロウはその場を飛び上がり―――
「は?」
その場が静寂に包まれた。
「消えた?ちがう!?マジかよ!!見えないくらいの速度で動いてんのかよ!?」
そんな声を漏らしたプレッソの表情は、驚愕の色に包まれていた。
自身と同じ行動をとりながら、全く違う様子を見せるゴロウ。
ただ見えない程高速で動いているわけではなく、その足音すら感じさせないくらいに繊細なゴロウの動きに、ゴロウの姿が見えないはずのプレッソは、それでも見惚れていた。
(
無音の移動とともに発せられるゴロウの声が、プレッソの耳に届いた。
「おっと、爺に見とれてる場合じゃなかったぜ。じゃぁ、これでどうだっ!!」
プレッソはそう言って、金の忍力で全身を包みこんでいく。
そしてそのままプレッソは、銀色に光る金属に包まれた。
「これがオイラの、全力の防御だ!!かかってこい、爺!!」
(ほっほっほ。口の悪い
その言葉とともに、空中の足場で踏ん張ったゴロウが一瞬だけ姿を現し、そのまままた姿を消した。
「ぐわぁっ!!」
その直後に強い衝撃を受けたプレッソは、ゴロウの頭突きを全身に受けてそのまま飛ばされ、背後の岩へと叩きつけられた。
(うぅ・・・い、今体の力以外感じなかったぞ・・・あ、あれで術とか使ってねーのかよ・・・オイラも、あんなに強く、なれるのかな・・・)
叩きつけられた岩からズルズルと地に落ちたプレッソは、起き上がることもできずに倒れたまま、ゴロウとの力の差にショックを受けることなく、そんなことを考えていた。
(ほっほっほ。これだけ力の差を見せられながら、その胸の内にあるのは向上心のみ。なかなか面白い童だのぅ)
プレッソの元へスッと現れたゴロウが、プレッソに声をかけた。
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