第196話:雑賀重清 対 雑賀美影 その3

(銃・・・もしかして、銃化の術!?)


美影が2丁の拳銃を具現化したのを見た重清は、咄嗟にそう考えた。


(いや、普通にありゃあいつの武具だろ。お前バカか?)

(えぇそうね。というかそもそも、『具現獣銃化の術』は重清しか使えないじゃない。なんでこう、思い出したようにバカなこというのよあなたは)


「あ、そりゃそうか」

プレッソとチーノの容赦ないつっこみに、重清は苦笑いして呟いた。


「なにを1人でごちゃごちゃと!これでお終いよ!喰らいなさいっ!!」

美影は、独り言を呟く(ように見える)重清に拳銃を構え、発砲した。


「おっと」

身を翻した重清は、銃弾を避けながらもその弾を見ていた。


(やっぱり、鉄と雷の弾か。さっきの忍力の使い分けは、弾でもできるってこと―――)

重清が一瞬弾を観察していると、重清の両腕に弾が直撃した。


(ぐっ。痛ってぇ!!!)


「1度避けたくらいで、油断しないことね!」

美影が、拳銃を構えて笑っていた。


(確かに油断した!そりゃ、普通に考えりゃ連射してくるわな。裕兄ちゃんも、銃を具現化する人は、弾は自動装填されるっていってたし。とりあえずあの人の銃も、打撃にしかならないのは救いだけど・・・

でも、連続で来るとわかってりゃ、多分避けられるっ!

チーノ、とりあえず自力で避けるけど、いざとなったらフォローよろしく!

あとプレッソ―――)


(銃化、だろ?)

(さっすがプレッソ!流石に、銃相手に丸腰はキツい!)


(やっとオイラの出番か!っつっても、銃化されりゃオイラがやることないんだけどな!チーノ、お先っ!)

(えぇ、2人とも頑張って。多分直ぐに私の出番もあると思うけど)


(おっと。プレッソ、おれら信用ないみたいだぞ。おっと)

重清が、美影の撃つ銃弾を避けながらそう心の中で笑ってプレッソを具現化する。


「はっ!オイラ達の師匠は、中々厳しいな!」

具現化されたプレッソは、そう言って笑った。


「ま、師匠の出番を作らないでいいように、頑張ろうぜ!いくぞプレッソ!」

「おう!師匠、そこでじっくり見ててくれよ!」


(具現獣銃化の術っ!)


重清が術を発動すると、プレッソの姿が光へと変わり、直後に重清の手に、『猫銃にゃんじゅう・マキネッタ』が現れる。


「具現獣が銃に!?知らない、それも知らないっ!!でも、銃で私に勝てると思っているの!?」


マキネッタを出した重清に、美影が慌てたように言っていた。


(なんていうかあの人、おれが術使うたびに驚いてない?)

(それ、オイラも思ったぞ)

(あなた達、お喋りしてないでちゃんと頑張りなさい!それと、師匠って呼ばないで!)


((はい!師匠っ!!))


(まったく。もういいから、いってらっしゃい!!)

呆れた声で言うチーノの言葉に、重清がマキネッタを構え、弾丸の術を込めて美影の撃った弾へと発砲する。


迫る弾丸を次々に撃ち落としていく重清の姿に、美影は忌々しそうな表情を浮かべていた。


「末席とは言え、腐っても雑賀家というわけね。良いわ、だったら本家と分家の決定的な違いを、見せてあげる!」

美影は、そう言って再び2丁の拳銃を重清に向けた。


「百発百中の術!!」

その言葉とともに打ち出された金属と雷を帯びた2つの弾丸が、一直線に重清に向って飛んで行った。

そして重清は、反射的にその弾へをマキネッタを向ける。


マキネッタから飛び出した2つの弾丸は、そのまま一直線に美影の撃った弾へと飛んでいき―――


そのまま直撃する直前、まるで重清の弾丸を避けるかのように美影の弾が軌道を変え、そのまま重清へと向かって行った。


「うぉっ!!」

美影の弾を打ち損じた重清は、そのまま自身に迫る弾を何度も繰り返した動きで避けた。


「あっぶね――がっ!」

軽口を叩こうとした重清の両わき腹に、金属と雷、2つの弾が食い込んでいた。


「痛ててて。名前通り面倒くさい術・・・ってマジかよ!!」

わき腹を押さえて立ち上がった重清は、目の前に迫るいくつもの弾に声をあげ、それでも間近に迫る弾を防ぐべく、鉄壁の術を発動させた。


しかし美影の弾は軌道を変えて盾を避け、弧を描いて重清へと再び襲い掛かった。

重清の目前に迫っていた1つを除いて。

唯一鉄の盾にめり込んだその弾を見つつ、重清は雷纏の術を発動し、さらにその上に白い忍力を集中させていった。


「おれに当たりたいんだったら、この腕に当ててやる!それで満足なんだろ!!」

そう叫びながら重清は、空を自在に動く弾を次々に金属を纏わせた腕で防いでいった。


「くっ!まだまだ!もっと行くわよ!!」

そう言って、美影は再度拳銃を構えた。


(重清、このままじゃ埒が明かないわ。私を具現化しなさい!)

(くぅ。結局チーノの言った通りになっちゃったよ)


重清は残念がりながらも、確かにこのままでは突破口がないと諦めて、チーノを具現化させた。


「具現獣が、もう1体!?でも、そんなの関係ないわよ!!」

またしても焦りの色を浮かべながらも、美影は重清に向けた拳銃を撃ち放った。


「そんな練度の術なんて、私1人で十分よ!本当の銃の使い方、見せてあげるわ!重清、私を銃化しなさい!」

チーノは、重清に向ってそう叫ぶのであった。

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