第191話:雑賀重清 対 雑賀美影

「末席、覚悟はいい?ま、覚悟できていようといまいと、関係無いけど」

余裕の表情を浮かべた美影が、そう言って重清に向く。


「なんの覚悟かは知らないけど、一応準備はできましたよ」

そう返した重清は、1人美影の前へと立つ。


(おい重清、オイラ達は具現化しねーのかよ)

(重清、油断してはだめよ!早く私達を具現化しなさい)


プレッソとチーノから、抗議の声が重清にだけ聞こえてきた。


(あー、いや、別に油断してるわけじゃないんだけどさ。いきなり3対1って、なんか卑怯じゃん?とりあえず最初は、おれだけでやってみるよ。)

(別に、忍者が具現獣に頼るのなんて、おかしな話じゃないだろ)

(ふふふ。まぁ、そう言わないで、私達のご主人様の決意を見届けてあげまょうよ)


(ま、すぐに2人に頼るかもしれないから、いつでも呼ばれる準備はしといてね)

(・・・大丈夫かよ、このご主人様は)

(私もちょっと心配になったわ)


(はいはい、すみませんでしたねっ!)

そうプレッソとチーノに返した重清は、美影へと目を向けた。


「あの、1つだけいいですか?」

「なに?今さら謝ったって、あんたがズタボロになるのは決定事項よ?」


「うわっ、ズタボロになるんだ。じゃなくて!この模擬戦の結果がどうなろうとも、おれの家族には関係無いってことでいいですよね?」

「ふん、そんなこと。いいわ。あくまでもこれは、あんた個人に対する指導ってことにしといてやるわ」


「じゃぁついでにもう1つ。もしおれが勝ったら、もう敬語やめていいですか?」

「はぁ!?ふざけんなよ末席!お前なんかが姉上に勝てるわけねーだろうがっ!!」

重清の言葉に、充希外野が怒りの声をあげた。


「充希、少し黙っていなさい。ついでってところは腹が立つけど、別にいいわよ。負けるわけないし。その代わり、あんたが負けたら、あんたは私の舎弟2号よ」

「えっと、ちなみに1号は?」


「クルよ」

「あ、なるほど。うわぁ〜、それ絶対いやだなぁ・・・うん。少しだけやる気出てきたわ」


「本家に相手をしてもらえるというのに、やる気が無かったなんて、相変わらずふざけているわね。

もういい加減、末席とダラダラ話すのにも飽きたわ。さっさとかかってきなさい」

そう言って手招きする美影に若干イラッとした重清は、


「はいはい。じゃ、いかせていただきますねっ!」

そう言って雷纏の術で雷を全身に纏わせて、美影へと向かって行った。


「へぇ、雷纏の術ね。珍しい術を覚えてるじゃない」

そう小馬鹿にしたように笑う美影は、白い忍力を放出させ、自身の体へと纏わせた。


(あの人も金の属性か。それにしても、術も使わないのかよ!完全に嘗められちゃってるな)

ただ忍力を纏っただけの美影に、少し勝ちたいと思い始めた重清は、そのまま美影に拳を繰り出した。


しかし美影は、雷の纏われた重清の拳を、同じく雷を纏った自身の手のひらで受けとめていた。


「バチッ!」

雷を帯びた拳と手のひらの間に、小さなスパークが起きた。


「あれ?」

そのまま美影に掴まれた拳を引き戻そうとした重清がそんな声をあげていると、美影はもう一方の手で重清の腹へ拳を叩きこんだ。


「ぐっ!!」

そのまま重清は、元居た場所まで吹き飛ばされていった。


何とか着地した重清の口元からは、血が一筋流れていた。


「マジかよ。っていうか一瞬、あの人の手が金属になった気がしたんだけど」

重清は、そう言いながら血を拭って具現化していないチーノへと話しかける。


(チーノ、今の何かわかる?)

(えぇ。でも、すぐに答えを教えるのは面白くないから、自分で考えてみなさい。1つだけヒントをあげるわね。今のは、術ではないわ)


(えぇ〜。ま、すぐに人に頼るのも良くないか。厳しい師匠だな〜)

(そう呼ばないでって言っているでしょう?)


「へいへい。じゃ、反撃開始だっ!」

重清は、そう言葉を口にして弾丸の術を発動させた。


「なっ!?弾!?なねよそれ!?そんな術、知らないわよっ!」

何故か焦り始めた美影に、重清はそのままいくつもの弾丸を放った。


チーノとの修行によって力の配分を学んだ重清の弾丸は、通常弾、金弾、雷弾となって美影へと襲いかかった。


「くぅっ!!」

白い金の忍力を腕に集中させて防ごうと試みる美影であったが、忍力が乱れそのまま重清の放つ弾丸をその身に受けていた。


(おっ、これいけんじゃね!?)

そんな美影の様子に、重清はそう心の中で思っていると、その頬に突然衝撃が走った。


「は!?なに!?」

周りを見渡たした重清の視界に入ったのは、スリングショット(パチンコ)を持った、充希であった。

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