第170話:襲撃ヒアリング その2

「あ、おじいちゃん!」

「おっふ!」

店の奥から出てきたオウに聡太がそう言うと、オウが1人、悶絶していた。


「おじいちゃん!?」


そんな悶絶爺さんを尻目に、一同が声を上げた。


「ほう、オウや。そんな趣味があったのかい?」

雅が、ニヤニヤしながらオウを見る。


「いや、あの、雅様、これは違いましてですな!ソウや!お主、何を言っておるか!」

「えー、だっておじいちゃん、普段は『おじいちゃん』って呼べって言ったじゃん。」

そう言ってウルウルとした瞳を返す聡太に、


「う、うむ。良き。」

オウは何も返せず、ただそんな聡太にデレデレしていた。


「おいシゲ、オウさんってあんな人だったか?」

「いや、ダンディなおじいさんのイメージだったよ。」

「あんた達、何を見てたのよ。オウさんって中忍体の時から、なんかキャラブレブレだったじゃない。」

「確かに、茜の言うとおりだな。しかし、ソウの周りには、変な大人ばっか集まるな。」

「カオルンとかね。じゃぁこれから、ソウのことを『変人ホイホイ』と名付けよう!」

「あっ、それいいかも!」


「ちょ、シゲとツネと茜!ぼくに変なあだ名付けないでもらえます!?」


コソコソと話す重清と恒久、そして茜に、変人ホイホイがつっこむ。


「で、あとは協会に任せて構わないんだね、おじいちゃん?」

そんな重清達のやり取りを聞きつつ、雅がそう言ってニヤリとオウに目を向ける。


「み、雅様・・・うぉっほん!えぇ、あとはこちらの方で調べさせていただきますので、お任せください。」

雅に『おじいちゃん』呼ばわりされたオウは、一瞬たじろぎながらも、何とか気を取り直してそう雅に返す。


「『うぉっほん』って咳払いする人、生で初めて見たわ。」

「あっ、わたしも!」

麻耶と茜がオウいじりで盛り上がっているのを聞いたオウは、寂しそうに肩を落として呟いていた。


「儂の威厳が・・・」

「大丈夫だよおじいちゃん。最初から、あんまり威厳とかなかったから。」

と、フォローにならないフォローを、聡太が入れていた。


「でも、これからは頼りにしております!師匠!!」

「おっふ!!落としてからのそれは、さすがに響くぞ!我が弟子っ!!」


「なぁ、俺ら、復活早々何見せられてんだ?」

「がっはっは!知らん!!」

「よっちゃん、怖い・・・」

シン・ノブ・ケンが、オウと聡太のやり取りに、思い思いの言葉を並べていた。


ケンだけは、どうやらまだ悪夢から覚めていないようである。


「っていうかソウ、オウさんに弟子入りするの!?」

重清が、突然大声を上げた。


「えっ、うん。なんか行きがかり上、そうなった!」

「行きがかり上ってひどくない!?」

聡太の言葉に、再びオウが叫ぶのを無視して、聡太が続ける。


「ぼくの所に来た人と戦ってる時に、新しい術を覚えたんだ。その時に、オウさんと会って、弟子になることになったんだ。」

「ほぉ。聡太君、その年でまさか飛翔の術を?」

雅が、驚いたような顔でオウを見ていた。


「はい。儂も驚きましたが、確かに彼には資質があるようで。

ということでノリ、甲賀ソウを弟子にしたいのだが、構わんな?雅様から条件は聞いておる。儂もそれには依存無い。」

「そこまで分かっていらっしゃるのであれば話は早いです。私の方は、問題ありません。

しかし、まさかオウさんが弟子を取るとは。」


「雅様に感化されてな。それに、そろそろ飛翔の術の次の管理者を決めねばならなかったしな。」

「なるほど。確かにソウであれば適任かと。それにしても・・・おじいちゃんはないのでは?」


「む。お前までそう言うか。良いではないか。儂、孫おらんし。」

「いや、おらんしって。」

オウとノリが言い合っていると、


「いいなぁ〜。」

重清の羨ましそうな声が響いた。


「ソウも茜も、別に師匠ができて羨ましいなぁ〜。まぁ、茜の師匠はばあちゃんだから、そんなに羨ましくはないけど。」

「おいシゲ、俺を忘れてないか?」


そんな重清の言葉に、恒久がニヤリと笑う。


「え?ツネ、師匠とかいないじゃん。」

「いや言っとくけどな、ノリさん以外の師匠ってんなら、俺が最初だからな!俺には親父っていう師匠、いや、あのクソ親父が師匠ってのもなんか嫌だな・・・

でも、色々と親父から習ってるのは確かだ!

言ってみれば俺は、ノリさん以外の師を持つ先駆者だぞ!」


「いや、言いたい事は分かるけど意味分かんないわ。」

「分かれよっ!とにかく、1年でノリさん以外に師匠がいないのはお前だけってことだよ!」


「そ、そうか・・・」

そこで言葉を止めた重清は、少し考えて宣言した。


「だったらおれは、チーノの弟子になる!!」


「はぁ??」


チーノの声が、辺りに響いた。

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