第169話:襲撃ヒアリング その1

茜たち、あけみ姉さんの車組が『中央公園』に入ると、既にノリの車組は到着しており、その面々の表情は憔悴という言葉が似合うほど、ゲッソリとしていた。


それを見た茜と麻耶は満足そうに笑みを浮かべ、ショウは憐れむように視線を送り、ノブはボコボコに腫れた顔を青ざめさせて思っていた。


(あの時捕まって、良かったのかもしれないな。)


と。


(しかし、一体何が起きたんだ・・・後でケンに聞いてみよう。)

そう呑気に考えるノブであった。

後ほど、実際にケンにその話題を振ったところ、ケンが突然涙を流しながら、


「そのことについては、触れるな。」

とだけ返されたノブは、


(よし、この話は聞かないようにしよう。)

と、固く決心したとかしなかったとか。


それはさておき。


死人寸前の重清・聡太・恒久・シン・ケン、そしてこれでもかというくらいに顔の腫れたノブの全員は、心の中で強く思っていた。


「のぞき、ダメ、ゼッタイ。」


当たり前のことであるが、彼らが何かを1つ学べただけでも、今回のキャンプは実りのあるものだったのではないだろうか。


そんなとき、『中央公園』の奥の席に掛けられた絵が光出し、そこから雅が現れる。


「一部、まだ回復していない子達もいるみたいだけど、早速だが話を聞かせてもらおうか。」

雅は、そう言って重清を見る。。


(誰のせいだと思ってんだよっ!)

と、いつもなら揃って心の中でつっこむはずの忍者部男子一同(ただし、ショウは除く)も、今回ばかりは誰一人としてつっこむこともなく、ただ雅に死んだ魚のような目を向けるのであった。


一体彼等に何が起きたのか。

それは、彼等にしかわからないことなのである。


雅に声をかけられた重清は、現実世界(リアル)でよっちゃんからの熱い抱擁を受けて若干の耐性がついていたのか、目の前のコーヒー牛乳を飲み干し、自身に気合を入れてキャンプ場での襲撃について話しだした。


ーーーーー


「なるほどねぇ。ユキという男に殴られ、大将のじいちゃんが現れ、そしてノーパンを見た、と。

全然分からんわぁっ!!」


重清の説明に、雅の叫びが響き渡る。


そりゃ、そんな説明じゃ分からないのも無理はないのである。


「あ、あの。」

そんな雅に、恐る恐る聡太が口を開く。


「ぼくの所にも、1人来ました。その人は、シゲに用があるって言ってました。」

「大将のじいちゃんも、そんなこと言ってたな。」


聡太の言葉に、重清が頷く。


「そんな大事なこと、忘れるんじゃないよっ!」

雅が物理的に重清に拳でつっこんでいると、聡太が続ける。


「それと、仲間の力で、雅さんが介入できないようにしているとも言ってました。」


「ほぉ。」

聡太の言葉に、雅が感心したような声を出した。


「確かに、いきなり『重清監視システム』が反応しなくなって、重清の元にも行けなかったが・・・そういうことかい。

聡太君が会った男がやっていたわけではないんだね?」

「はい、あの男の人はそう言っていました。」


「ふむ。重清、あんたは何か聞いてないのかい?」

「んー。そのへんの事は何も聞いてないかな。あ、でも、ユキって人も大将のじいちゃんも、おれ達は術に頼り過ぎとは言ってたかも。」


「術に、ねぇ。」

雅が呟くと、


「最低でも、ノーパン女はどうやら術を使えないみたいだったわよ。」

チーノが割って入ってきた。


「ほぉ。どういうことだい?」

「そのままの意味よ。原因までは分からなかったけれど。重清達の話からすると、そのノーパン女が具現獣達を具現化させていたみたいだから、その辺に原因がかるのかもしれないけど。」

雅の言葉にチーノが返すと、プレッソも首を傾げながら、


「でもなんかよぉ、あいつら、オイラ達と同じ具現獣なのか分からなかったんだよな。」

と口にする。


「そういえばプレッソ兄さん、そんなことを言っていたわね。」

「あぁ。なんて言うか、オイラ達みたいに意識があるわけじゃなくて、ただ命令に従ってるって感じだったんだよ。」


「あ、みんながノーパン女って呼んでる人、グリって名前みたいだよ。」

「今そこかよっ!」

遂に復活した恒久が、重清につっこんでいると、


「まったく。重清は相変わらずだねぇ。」

雅が呆れたように笑って、チーノに目を向けた。


「それでチーノや。アンタもその具現獣達を見たんだろう?どう感じた?」

「えぇ。便宜上、具現獣と言ったけれど、確かにあの子達は、私達とは異質な何かを感じたわ。」


(呉羽の所に現れた男と、同じ力を、ね。それに、重清の言う大将のじいちゃんという男、年の頃から考えるとあの子と・・・

いいえ、まさか、ね。)


そう、チーノが心の中で続けていると。


「とにかく。」

ノリが、何とか悪夢から復活して周りを見渡した。


「相手の正体も目的もよくわらかないんだ。一旦この件は、協会に預けることにしたいと思う。

雅様、それでよろしいですね?」

「可愛い孫に会いに来たってのが気に食わないが、まぁ、しょうがないか。

あのボンクラ共にどうにか出来るとは思えないがね。」


「ほっほっほ。ボンクラとは、厳しいことをおっしゃる。」

雅の言葉に、店の奥から声が聞こえてくる。

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