第167話:下着はしっかり着けましょう
重清の様子に老人が笑みを浮かべていると、
「親父殿。あなたも脱線し始めてますよ。そろそろ行かないと・・・」
「わかっておる。重清よ、最後にひとつだけアドバイスをしてやろう。」
ドウに声をかけられた老人は、ドウの元へと歩きながらそう言って重清に声をかけた。
「ユキが言ったかもしれんが、お前さん達は術に頼りすぎておる。術だけでなく、心・技・体の力の使い方を、しっかりと身につけよ。そうすれば自ずと術の力も上がってこよう。
幸いお前さんには、すぐ近くに力の使い方に長けた者がおる。力を失った身でありながら、ウチのグリを倒すほどの者が、の。
おっと、噂をすれば、お前さんの具現獣達も近づいておるようだな。
それでは重清よ、またな。」
「重清君、失礼しますね。」
「じゃぁーねぇー。今日はごめんねぇ、殴っちゃってぇ。お詫びに、ちょっとだけおパンチラのサービスだよぉ。」
ユキはそういうと、ドウが担いでいるグリと呼ばれていたエロ女のチャイナドレスをちらりとめくる。
「「「「ノーパンッ!?」」」」
「あれぇ?パンチラサービスのつもりだったのにぃ。ちょっと中学生には刺激が強すぎたかなぁ。
でもなんで履いてないんだよぉ。」
「グリはいつも言ってましたからね。いつでも親父を誘惑できる準備はできている、と。こういうことでしたか・・・
というかユキ、パンチラって結構古くないですか?」
「はぁ!?儂!?え、これ儂のせいなのか!?というかユキ、さっさとその服を元に戻さぬかっ!!
そしてドウ!パンチラに古いもなにもあるか!パンチラは永遠の現役だ!」
3人は、騒ぎながらそのままフッと姿を消すのであった。
「「重清っ!」」
そのすぐ後に、プレッソと智乃の姿となったチーノが重清のもとに駆けつけた。
「おい重清、大丈夫か!?鼻血出てるぞっ!!」
「ノーパ・・・じゃなくって、ノープロブレム!!」
そう言って鼻血を垂らしながらプレッソに対して親指を立てる重清の表情は、未だ嘗てないほど輝いていたそうな。
少しだけ、大人の階段を上った重清なのであった。
「何が起きたか、なんとなくだけど想像がついたわ。」
智乃が、呆れたようにそう呟いていた。
「あれ、智乃もしかして今、『色気抑えてないバージョン』?」
鼻血を拭いながら、重清が智乃に声をかける。
「あら、忘れていたわ。このままだと、みんなと合流するのに都合が悪いわね。」
智乃はそう言うと、猫の姿へと戻るのであった。
「それにしても重清、今のチーノの姿でも、全然動揺しねーんだな。」
「まぁ、『エロ姉ちゃんバージョン』の姿を見てるからなー。それに、今はさらに色々とあって耐性ができたみたいだな。」
そう言ってにやける重清に、
「あら、そう言われると、少し悔しくなるわね。」
そう言ったチーノから、色気という名の凶器が溢れてくる。
「うわっっ!ちょ、チーノ、やばいから!それほんとやばいからっ!!」
チーノの色気にあてられた重清は、増量した鼻血を溢れさせながら慌ててそう言うと、
「あれ??なんか、グルグルする・・・」
そう呟いて、そのままその場へと倒れ込んだ。
「チーノ、やりすぎじゃねーか?」
「・・・昔の癖で、つい。反省してます・・・」
シュンとして落ち込む、チーノなのであった。
「・・・あれ、ここは?」
「あっ、シゲ!大丈夫!?」
テントの中で目を覚ました重清に、聡太が寄ってくる。
「そ、ソウ、か。おれ、どうしちゃったんだ?」
「シゲ、倒れちゃってたんだよ?鼻血いっぱい出して。そんなにひどくやられたの?」
「いや、まぁ、うん。」
ノーパン×チーノの色気という二重攻撃によるものだと言えなかった重清は、聡太の言葉に目を伏せてそう答えていた。
「??まぁ、無事ならいいんだけどさ。」
そんな重清を不思議に思いつつ、聡太はそう返して重清に濡れたタオルを渡した。
「ありがとな。ソウは、大丈夫だったのか?っていうか、他のみんなは?」
タオルを受け取った重清が、鼻周りを重点的に拭きながら言うと、
「みんな無事だよ。ぼく以外は、誰もあの人たちには会わなかったみたい。」
聡太は、重清にそう返してテントの入り口を開け放った。
「うわっ、眩しい・・・えっ、眩しい!ちょ、ソウ!もしかしてもう、朝なの!?」
「え?そうだよ??シゲ、ぼくらが迎えに行った時には倒れてて、そのままず〜っと寝てたんだよ?」
「まじかぁー。せっかくのキャンプ、台無しじゃんか〜。」
「いや、今は絶対に、そこじゃないよね。みんな心配してたんだからね?」
「は、はい。」
「それでシゲ、あの人たちとは何か話したの?」
「ん?襲ってきた人達のこと?うんまぁ、少しはね。」
「ノリさんが、詳しく聞きたいんだってさ。とりあえず、シゲが起きたら一度帰って、『中央公園』に行くって言ってたよ。」
「はぁ〜。もう帰んのかよ〜。おれ達、何しに来たんだろうなぁ。」
「ノリさんの裸覗きに、だね。」
落ち込む重清に、聡太は笑ってそう返すのであった。
こうして重清達のキャンプは終わりを告げ、一行は『中央公園』へと向かうことになるのであった。
しかし、彼らはこのゴタゴタのせいで忘れていた。
彼らが何の途中でゴタゴタに巻き込まれたのかを。
そして、その禊が終わっていないことを。
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