第150話:合コン?いえ、飲み会です
「そうか。呉羽さんのところに行くなら安心だと思っていたが、大変だったな。」
重清達から報告を受けたノリは、2人にそう声をかける。
ヒトの襲撃と黒服の男の逃亡のあと、呉羽に別れを告げた重清達は、ノリを『中央公園』へと呼び出し、その報告をしていた。
既に忍者部の活動を終えたノリは部室に入れない考えた2人は、どこで話をするか迷った挙句、『中央公園』を選んでいた。
雅に頼めば部室の空間を使用することもでき、また雅の家を使うことも選択肢としてはあったのだが、その日雅の家に侵入し、更には雅の恥ずかしい密書を盗み見してこってりと絞られた2人は、そのいずれの選択肢も選ぶことができなかった。
結果として、教師であるノリを呼び出すという方法を取るしかなかったのであった。
呼び出されたノリも、既に雅から2人をこらしめた、もとい2人に修行を付けた旨連絡を受けており、2人の気持ちを察して、快く呼び出しに応じたのであった。
ちなみにノリが雅から報告を受けた際には、2人に修行をつけた理由は『家宅侵入』としか聞いておらず、ノリも巻き込まれたくないという想いからそれ以上のこと聞かないようにしていたりする。
「しかし。」
ノリがそう言って続いて話し始める。
「以前の小松といい今回のヒトってヤツといい、色々ときな臭くなってきたな。」
(それに、殺害された松本の件も気になるな。)
と、ノリは心の中で言葉を続ける。
「その黒服について、呉羽さんは何か言ってたのか?」
ノリはそう言って重清たちを見る。
「いや、あのばあさんもアイツらのことは知らないってよ。」
恒久が、ノリの言葉に答えると、
「そういえば・・・」
智乃の姿となったチーノが、ブラックコーヒーを見ながら呟いた。
傍から見たらブラックコーヒーを飲むなんとも渋い幼児である。
「あの黒服、ほとんど忍力を感じなかったわね。」
「それは、呉羽さんも言ってたことだろう?」
ノリがそう言って幼女に目を向ける。
「いいえ。呉羽が言っていたのは、術に関してよ。私が言いたいのは、あの男そのものからって意味よ。」
「ただ単に、忍力を抑えてたってことなんじゃないの?」
智乃の言葉に、コーヒー牛乳を飲みながら重清が口を挟む。
「確かに、その可能性も無くはないわ。私の感知を潜り抜けるくらいに抑えられる忍者なんて、そういないけど。
でも、今回はそうではないわ。あの男からは、忍力とは違う、別の力が出ていた。」
「別の力?」
ノリが、その言葉に反応する。
「私の感覚的なものでしかないけどね。でも、あの男が消えたとき、その力が大きくなっていたのは確かよ。」
「もしかしてそれが、あの消えた術の力の元ってことか?」
恒久が智乃を見て呟くように言う。
「その可能性は、あるわね。呉羽はその力を感じたことがなかっただろうから、気づけなかったみたいだけど。」
「それって、チーノは感じたことあるってこと?」
これまで、机に夏休みの宿題を広げて聞いていた聡太が、じっと智乃を見つめていた。
「さすがは聡太ね。そう。私は、1度だけあの力を感じたことがあるわ。」
「チーノ、そいつのことを教えてくれないか?
何か手がかりになるかもしれない。」
ノリに見つめられた智乃が、ため息と共に口を開く。
「必要ないわ。」
「どういうことだ?」
「その子はもう、忍者ではないわ。それにもう、随分と昔の話よ。」
「だが、元忍者であればあの2人のように、再契約すれば―――」
「それはあり得ない。ノリならわかるでしょう?」
ノリの言葉を遮って言う智乃の言葉に、ノリは舌打ちをする。
「捨て忍、か。」
「そういうことよ。」
「「「「捨て忍??」」」」
ノリが忌々しそうに出した言葉に、重清達は声を揃える。
玲央の姿のプレッソだけは、ミルクの跡を口の周りに残しながら。
「お前らは知らなくて良いことだ。」
ノリはそう言って立ち上がる。
「何だよ、気になるじゃねーか。教えろよ。」
「悪いが、今は出来ない。何故なら―――」
「「「何故なら??」」」
「俺は今から、飲み会のためにここを出る!」
「「「飲み会かよっ!!」」」
重清、恒久、聡太の声が辺りに響き、あけみ姉さんの咳払いが返ってくる。
ちなみに玲央は、既に話題に興味を無くし、ミルクを飲むことに集中していた。
「もしかして、合コンとか!?」
重清が目をキラキラさせてノリを見る。
失恋した重清は、恋バナに飢えているようである。
「んなわけあるか。職場の飲み会だよ。」
「へぇ、ちなみにメンバーは?」
恒久もまた、興味を惹かれてそう尋ねる。
「斎藤先生と花園先生、それに島田さんだな。」
「おいおい、男女2対2で、もう1人の男、だよな?とにかく、既婚者は斎藤先生だけじゃねーか。
ノリさん、もしかしてついに春でも来るんじゃねーか?」
「俺には理想の出会いってのがあるんだよ。って何言わせてんだよ。とにかく、俺は行くからなっ!」
若干顔を赤くして、ノリはそのまま『中央公園』を出ていくのだった。
「はぁ。結局捨て忍ってやつの話、逸らされちゃったね。」
「だな。」
重清の言葉に恒久が同意していると、
「いや、2人が別のところに食いついたのが悪いんだからね?」
聡太のそんな正確無比なつっこみと共に、聡太のジトッとした視線が2人に注がれるのであった。
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