第115話:ショウ 対 風魔イチ
「ちいっ、なかなかやるなぁっ!」
2本のナイフで杖を正面から受け止めていた風魔イチがそう言うと、
「いやー、そちらこそー。」
小手調べとばかりに振り降りした杖をいとも容易く受け止められたショウは、ニコリと笑ってそう答えていた。
「じゃぁ、これなんてどうかなー。」
そう言いながらショウは、受け止められた杖の先から水砲を放つ。
しかしイチは、目の前で受け止めていた杖から放たれた水砲を後方に飛び退きながら切り裂き、水砲は霧散する。
「わぁお。今の反応するんだー。さっき戦った子よりはやるねー。」
地に着地したイチがショウの言葉に、
「さっき戦った子?」
「多分1中の子だよー。なんか性格悪そうな。」
「ヒロか。」
「そうそう。そんな名前ー。もう倒しちゃったけどねー。」
「はっ!あの性悪女を倒してくれたのか!それは、見ものだったろうなっ!」
そう言うイチは、ニヤリと笑いながら術を発動する。
(水刀の術!)
するとナイフに水の刃が纏っていき、2本の水の短剣となってイチの手元に収まる。
(水の属性だねー。彼の属性がこれだけだと、やりやすいんだけどなー。)
そう考えながらショウは、
「仲間に対して、それはひどいんじゃなーい?」
そう言いながら杖を構えてイチに向かって走り出し、杖を真横に薙ぐ。
「あの性悪女には、こっちも面倒かけられてたんでなっ!」
イチはそう返して、迫るショウの杖に刃を向ける。
水の刃はショウの杖を軽く真っ二つにして、もう一方のナイフがショウに向けられる。
「わぁお。切れ味がいいんだねー。」
ショウはそう言って、切られた杖を消して再び具現化し、襲いかかる刃を杖で受け止めた。
(受け止めただと?ちっ、こりゃぁ・・・)
水の短剣を受け止められながら、青みを帯びた杖にを見て、イチはショウに声をかける。
「武具に忍力通すなんて、器用な真似するじゃん!」
「でしょー。結構苦労したんだよー。」
ショウは短剣を押えつつ答えながら、術を発動した。
(木縛の術っ!)
木の杖が自身を覆う水の力を吸い取り、太い枝となって水の短剣に巻き付いていき、そのままイチの腕を拘束していく。
「ちっ!」
腕を締め上げられたイチは、短剣を落とし、舌打ちをする。
「これで、終わってくれるかなー。」
ショウがそう言いながら再び具現化した杖をイチへと振り下ろす。
「んなわけっ!!」
イチはそう叫んで、白い忍力を腕に纏わせて巻き付いていた枝を引きちぎり、振り下ろされる杖を殴りつける。
「バキッ!!」
イチの拳によって折れた杖は、そのまま地へと転がる。
「そっちこそ、これで終いだっ!」
そのまま殴りかかるイチに対し、ショウは折られた杖を地面に向けて、
(武具伸縮の術っ!)
伸びる杖に掴まって上空へと退避する。
(金の属性持ってるのかー。属性の相性的には、キツいかなー。)
上空でそう考えていたショウにイチは、
「どうやらそっちは、水と木らしいなっ!こっちの方が、有利なんじゃねーか!?」
そう叫んで再びナイフを具現化し、それをショウに向ける。
(金砲の術っ!)
イチの発動した術により、ナイフの刃部分がそのまま発射され、空中で身動きの出来ないショウに向かって飛んでいく。
「えー。属性の相性だけが全てじゃないよー。」
そう返しながらショウは、伸ばした杖を消してさらに杖を具現化させる。
全力の木の忍力を込めた杖は、濃い緑のオーラを纏わせながら迫る刃を跳ね返す。
「ほらー。属性の相性悪くても、練度でどうにか―――っ!?」
刃を跳ね返してそう返していたショウの足に、別の刃が届いていた。
「ぐっ。」
そう声を漏らしながら、ショウは刃の当たった足を庇って地へと着地する。
「油断大敵、ってな!」
「むー。どうやら、ヒロって子よりも全然強いみたいだねー。
こりゃ、本気出したほうがいいかなぁー。」
そう言いながらショウは、先程刃を受けた足に青く光る手をかざす。
直後、先程まで庇っていた足でぴょんぴょん跳ねるショウを見て、イチは再び舌打ちする。
(治癒の術か?あんな難しい術まで。とはいえ。)
「さすがに本気出すってのは、負け惜しみ過ぎないか?」
「それはどうかなぁー?」
イチの言葉に、ショウは笑って答えて忍力を全身に込める。
「なっ!?」
先程までよりも大きな忍力に、イチは言葉を詰まらせてその光景を見ていた。
「おいおい、麻耶並の忍力じゃねーか!お前、何者だよ!」
「えー、ただの恋バナ好きの2中3年、甲賀ショウだよー。」
「あー、麻耶も恋バナ好きだから、いい友達になれそう!じゃねぇー!クソッ!俺の方が麻耶に相応しい男なんだよっ!」
「おやおやー、麻耶って子も恋バナ好きなんだー。それは興味あるなー。」
「人の女に、興味持つなよっ!」
そう言って駆け出すイチに、
「女性をモノみたいに言ってると、嫌われるよー。
それに恋は、相手が結婚するまで諦めちゃダメなんだよー。」
そう返してショウもイチに向かって走り出す。
向かってくるショウに突進していたイチは、視線をショウから外すと、
「ちいっ!!!」
舌打ちをしてショウの視界から外れ、その場から離れていく。
「・・・あれ?」
突然イチが別の方向へ向かったことで面食らったショウは、ただその場に呆然と立ち尽くして呟く。
「えっと。あれー?これってここからいいところだったんじゃないのー?」
しかし、それに答える者はなく、ただその声は辺りに響くだけなのであった。
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