第113話:それぞれの開戦

ショウとソウが向かっている先のとある公園では。


「だ〜か〜ら〜、私の方が先にコイツを見つけって言ってるでしょ!?」

「いや、だからそんなの関係ないって言ってるだろ!?こっちは、可愛い後輩を一人、コイツにやられてるんだぞ!?」

「いや、それこそ知らないわよ!?私情を挟むなんて、忍者失格よ!

私は、個人的にコイツに用があるのよ!」

「いや、そっちこそ思いっきり私情挟んでますけど!?」


1中3年の雑賀麻耶と、3中3年の根来アツが、言い争っていた。


その2人の間には、頭に猫を載せてオロオロしながらも何故か2人の仲裁をしている、コイツこと、重清の姿があった。


「まぁまぁ2人とも、喧嘩しないで・・・」


「「うるさいっ!!」」


「えぇ〜。プレッソ、これどうしたらいい?」

「知らねーよ。重清、お前モテモテだな。」

アクビをしながらそう返すプレッソに、

「おまっ、相変わらず薄情な奴だな!!」

「はぁ!?オイラがいつ薄情だったって言うんだよ!?」

「おれが斎藤先生から追いかけられてたとき、助けてくれなかったじゃん!!」

「そ、それは、あれだ!オイラも忙しかったんだよ!!」

「嘘つけよっ!」


何故かこちらも喧嘩を始め、現場はカオスと化していた。


その光景を、麻耶の後方で見つめている影が2つ。

1中3年の風魔イチと、2年の風魔トクである。


「ハニー、何やってんだか。」

「イチさん、麻耶先輩をそう呼んだら、また怒られるでやんすよ?」

「いいじゃん、好きなんだから。そういえばトク。お前いっつも麻耶と組んでるけど、お前こそ麻耶のことどう思ってるんだよ?」

「あっしは、単純に麻耶先輩のことは、忍者として尊敬してるんでやんす。

あっし、自分の彼女は全力で守りたいタイプなのでやんす。

麻耶先輩だと、守ってもらうことはあっても、あっしが守ることはまずないから守備範囲外なのでやんす。」

「・・・お前、そのキャラの割に男らしいのな。」


こちらはこちらで、謎の男子トークを繰り広げていた。


一方、アツの後方では。

3中1年の根来リキが、何故かチワワと戯れていた。

それはもう楽しそうに。


現在ショウとソウは、重清のピンチだと思って駆けつけているわけなのだが、果たしてこの情況は、重清のピンチと言えるのであろうか。



「あぁーもぅ!じゃぁこうしましょう!いっそのこと、このまま3人で戦うってのはどうよ!?」

「あぁ!それでいいだろう!!」

「あ、話が落ち着いた。あれでも、麻耶姉ちゃんって3年だよね?えっと、こちらの方は・・・」

「俺は、3中3年の根来アツだ!」


「どっちも3年じゃねーかっ!しかも、2人ともおれを狙ってるんでしょ!?」


どうやら、無事に重清はピンチに陥ったようである。


「おっ。話は決まったみたいだな。それにしても麻耶、なんであの重清ってやつに固執するんだ?トク、何か聞いてないのか?」

「それが、麻耶先輩教えてくれないでやんすよ。でも、『好きの裏返し』って線はなさそうでやんすよ?」

「そうか。それならまぁいいか。」


(まぁ、イチさんのことも、眼中には無さそうでやんすが・・・)

トクが心の中で思っていると、


「じゃぁ俺らは、アイツとやるか?」

そう言って、その場で唯一、ほんわかした雰囲気を醸し出しているリキの方に目を向ける。


「えっと、やりやすかい?」

「ど、どうするか・・・」


「僕らが相手させてもらうよー。」


その声とともに、ショウとソウが姿を現す。


「シゲ、やっぱりピンチっぽいですね。」

「そだねー。なんか、1中と3中の3年生と戦う雰囲気だねー。」

「ショウさんが行かなくていいんですか?」

「なんか、2人ともシゲ狙いみたいだからさー。僕が行ってもねー。」

ショウはそう言って、イチ達に目を向ける。


「ってことで、良かったらお相手いただけないかなー?」


「ご指名入りやしたね。」

ショウの視線に、トクがイチを見る。


「言い方っ!まぁ、暇だったしちょうどいいけどな。確かアイツは2中の3年だったな。2中は3年が1人のはずだから、アイツがおそらくリーダーだろう。倒せばウチの勝ちにさらに近づくってわけだ。」

イチはそう答えて、一歩前に出る。


「1中3年、風魔イチ。」

「2中3年、甲賀ショウだよー。」


「「いくぞ(よー)!」」



「あっちは始まっちまいやしたら、あっしたちはどうしやす?」

トクがそう言ってソウに話しかけてくる。


「ただ見てるだけってわけにもいかないですし・・・あ。」

ソウはそこまで言って、チワワと戯れるリキに言葉をかける。


「あのー!よかったら、あなたも一緒にどうですかー??」


「いや、食事の誘いじゃないでやんすよ!」


緊張感のないやり取りに、リキは警戒心を和らげ、チワワを抱いて2人に近づいてくる。


「あのー、僕まだ1年生で、あんまり強くないんですけど・・・」


「えっと、そちらは、何年生ですか?」

リキの言葉を聞いて、ソウはトクに話しかける。


「2年でやんすよ。」


「僕、1年なんです。で、こっちの彼も1年らしいですし・・・よかったら、僕たち組んでもいいですか?」

「そう言うのは、こういう場ではあっしの許可は必要ないでやんすよ。」


「ありがとうございます!」

ショウはトクに頭を下げ、リキへと向き直る。


「ぼく、2中1年の甲賀ソウ。よかったら、2人であの人倒さない?」

「た、助かるよ。先輩もあっちで熱くなってて、すっごく不安だったんだ。僕は、3中1年の根来リキ。こいつは具現獣のタロー。」

リキはそう言って、抱いていたタローを撫でると、タローは嬉しそうに「ワンッ」と鳴いくと、


((か、かわゆい!!))

ソウとトクが、タローに心を奪われていた。


「と、とにかく、一時共闘ってことで、よろしく!」

ソウが、タローの魅了から逃れてそう言うと、

「うん!」

リキは嬉しそうに笑って答える。


「緊張感のない奴らでやんすね~。さて。1中2年、風魔トク。お相手させていただくでやんす!」

「2中1年、甲賀ソウ!頑張ります!」

「さ、3中1年、根来リキとタロー!ソウ君の足をひっぱらないようにします!」


それぞれがそう言って、構えるのであった。

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