第92話:廃屋の攻防
(元忍者?)
(説明は後だ!とりあえず2人とも、向こうが怪しまない程度に体の力も使え!)
(わかりました!プレッソ、チーノ!お前らは手を出すなよ!猫のフリしといてくれ!)
(ま、猫なんだけどな。)
(そこは言いっこなしよ、プレッソ兄さん。)
元忍者とはいえ、今はおそらく普通の人であろう目の前の人物に体の力を使えと言うシンに、疑問を感じながらも、重清と聡太は言われたとおりに、体の力を全身に纏って身構える。
そんな会話がされている事など知りもしない男、近藤浩介は、気怠そうに棒を肩に担ぎ、足元で気を失っている芦田を壁に蹴りつけて一歩を踏み出す。
「っ!?」
重清が気づいたときには近藤は目の前まで来ており、そのまま棒を振り下ろしていた。
「うわっと!あっぶねぇ!!」
それをギリギリで後方へ下がって避けた重清が叫ぶと、棒をそのまま地面に叩きつけることになった近藤にシンが迫る。
「ちぃっ!」
そのまま棒を軸に体を回転させた近藤は、そのままの勢いでシンの攻撃を避け、蹴り飛ばす。
「シンさん!!」
重清がそう言って飛ばされたシンに駆け寄る。
「あの人、マジで強いですね。」
「だろ?」
「このままだと面倒ですね。どうします??」
ソウも近づいて、来る。
「とりあえず、あの倒れてる人を助けるか。ソウ、頼める?」
「りょーかいしました!」
そう言っている間に近藤が3人に向けて棒を振る。
重清がそれを蹴り上げて、近藤は棒を手放してしまい、そのまま棒は地に転がっていく。
近藤は転がる棒に目を向けて、口を開く。
「・・・お前ら、なんか慣れてないか??」
「いや、そちらこそ。」
シンが、苦笑いしながらそう返す。
「慣れてるつもりはないんだけどな。」
そう言って笑い返してくる近藤に、シンが口を開く。
「このまま、退いてくれませんか?」
「さすがに、このままお前らを無事に返すわけにはいかねーんだよ。これでも俺は、優等生で通ってるんでな。だから、さっさとくたばれよ!!」
そう言って殴りかかってくる近藤の拳を避けてそのまま腕をつかんだシンに対し、腕をつかまれながらもう片腕の肘をそのままシンの顎に打ち込む近藤。
「かはっ!」
「シンさん!!」
近藤の注意をシンが引いている間に聡太が倒れる芦田を連れ出す作戦であったが、つい声を出してしまったソウ。
「おいおいおいおいおいおい。人のおもちゃに何勝手に手ぇ出してんだよ!?」
近藤はそう言ってソウに近づき、そのまま殴り飛ばしてしまう。
「ソウ!!この野郎!!!」
ソウを殴り飛ばされたことで怒りを感じた重清は、体の力を足と拳に集中させて近藤へと迫る。
「早いっ!?」
近藤がそんな言葉を発した直後、近藤の頬には重清の拳がめり込み、そのまま近藤は廃屋の窓を突き破り引き飛ばされていく。
「シゲ、やりすぎだ!!おれはコウさんの様子を見てくる!お前らは倒れてる人の様子見てろ!!」
そう言ってシンが外へと走り出していく。
「ソウ、大丈夫か?」
「うん、大丈夫。シゲ、今のはやりすぎだよ?」
「わかってる。ソウがやられちゃったの見たら、カッとなっちまった。」
「一応、ありがとうって言っとくよ。それより、この人を連れ出さないと!」
「だな。学校の保健室に連れていくか。」
「さっきの人も、連れていくことになりそうだけどね。」
「いや、コウさんはいなくなってた。」
シンが外から戻って、2人にそう告げた。
「え、今の食らって、逃げたんですか!?」
ソウが驚いてシンを見ると、シンは頷く。
「シンの言っていることは本当よ、私の方でも気配を探ってみたけれど、既に先ほどの男の気配ななくなっているわ。」
チーノも、そう言って重清の足元へ戻ってくる。
「とにかく、今はあの人よりもこっちの気を失っている人だ。ひとまず、学校に戻ろう。この人を保健室に連れて行かなくちゃ。」
シンがそう言って芦田を担ぎ、そのまま歩き出す。
「シンさん、さっきの男については・・・」
重清がそんなシンの背に問いかけるも、
「すまん。それについては部室に戻ってからにしてくれ。」
重清と聡太はその言葉にただ頷いて、プレッソ、チーノとともにシンの後を着いて行くのであった。
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