第73話:重清対エロめのお姉さん その2
重清が具現獣銃化の術を発動させると、離れた距離にいるプレッソが消え、重清の手元に1丁の銃が現れる。
「これが、おれの新しい武具!名付けて『
重清が、銃を掲げてそう叫ぶ。
「「「・・・・・・」」」
現場は沈黙する。
辺りには、先程雅と女の間に流れた冷たい空気とはまた違ったタイプの冷たさが漂っていた。
「あれ?」
「あれ?じゃねぇよ!ほらな!やっぱお前のネーミングセンスにみんな引いてんだって!」
「えー、そうかー?カッコ良すぎて、口もきけなくなってるんじゃない?だって、マキネッタだよ?エスプレッソと言ったら、マキネッタじゃんか!」
「それ聞いたよ!そもそも、オイラが銃になってんだから、順序逆じゃねーか!」
「いや、それはそのー、なんとなくだよっ!」
「知らねーよ!千歩譲ってそこはいいとして。なんだよ!?『にゃんじゅう』って!『びょうじゅう』の方がそれっぽいじゃんか!!」
「え!?『猫』って、『びょう』って読むの!?」
「あー!めんどくせー!なんでお前が、実力試験で全科目80点取ってんのか、不思議でしょうがねえーよ!」
「いや、それはだなー」
「うふふふ、あはははは!」
重清と銃になったプレッソが言い合っていると、女が我慢できなかったように笑い出す。
「ごめんなさいね。その脱線癖、あいつを思い出すわ。でもね。女を待たせるものじゃないわよ??それに、目上の者が手を貸してあげているのに待たせるのは、礼を失する行為だと知りなさい。」
女は、それまでの妖艶さを消し、雅のような厳しさを漂わせてそう告げる。
「「す、すみませんでした!」」
重清が頭を下げ、プレッソもそれに合わせて謝る。
「いい子達ね。じゃぁ早速、その銃の力、見せてもらうわね。」
再び妖艶な笑みを浮かべた女がそう言うと、女の周りに5つの水の玉が現れる。
「いくわよ?」
女がそう言うと、水の玉が重清へと向かって襲いかかる。
重清はその場を移動しながら、向かってくる水の玉がに対して銃を構え、引き金を引く。
銃から撃ち出された弾は、5つ全て命中し、水の玉を霧散させる。
「よっし!弾丸の術も、ばっちりだ!」
弾丸の術。これが、兄の助力があったとはいえ、重清自身が作り上げた新しい術であった。
未だ銃なしでの使用には苦慮してはいたものの、銃を介しての術の使用は、ある程度形になっているようである。
重清は再び弾丸の術を発動してマキネッタに弾を込め、女へと向く。
「なかなかね。じゃぁ、これならどうかしら?」
女がそう言うと、先程倍以上の数の水の玉が現れる。
「これでも抑えてはいるけど、大丈夫かしら?」
そう笑って、女は重清に向かって水の玉を放つ。
「多っ!あーっ!行くぞ、マキネッタ!」
そう叫んで重清は、再び水の玉から逃れながら水の玉を撃つ。
なんとかほとんどの水の玉を撃ち落とす重清であったが、2つ撃ち損じ、それを避けるため飛び上がる。
「むやみに飛ぶのは、愚策よ?」
空中へと逃れた重清の目の前に、突然女が現れ、そう言いながら重清に蹴りを放つ。
水の玉から逃れていたことで油断していた重清は、女の蹴りをまともに胸に受け、吹き飛ばされる。
「うわぁっ!」
蹴りを放った際に白衣覗き見えた女の白い足を目に焼き付ける間もなく、吹き飛ばされた重清の背に衝撃が走る。
「ぐぁっ!」
先程重清が避けた水の玉が、方向転換して重清の背へと直撃していた。
そのまま倒れ込むように地面へと落下する。
「重清!大丈夫か!?」
銃となったプレッソが声をかけると、
「あぁ、落ちた時の方が痛かったよ。めちゃくちゃ手加減してくれたみたいだ。」
そう答えた重清は、空中に留まったままの女に目を向ける。
下から見上げた光景は、素晴らしいものであった。
(めっちゃ、足見えた!じゃない!)
重清が先程の絶景を忘れるように頭を降っていると、女は重清から少し離れた場所に降り立つ。
「さぁて、次はこんなのどうかしら?」
女がそう言うと、一体の金属のマネキンのような物が現れる。
「行きなさい。」
女の言葉と同時に、マネキンがすうっと、重清達に近づいてくる。
「重清!ありゃ、普通の弾じゃ無理だぞ!」
「あぁ、わかってる!金弾だ!」
重清はプレッソの声に答え、金の力を込めて弾丸の術を発動する。
「ほう。」
それを見ていた雅が、そう呟いていると、
「ど、どうかしたんですか?」
ノブがそんな雅に声をかける。
「まぁ、見てな。」
雅の言葉に、ノブは再び重清達に目を向ける。
迫りくるマネキンに、重清が5度、引き金を引く。
放たれた銃弾は、マネキンに着弾すると、頭部と両手足をそれぞれ破壊する。
腕を破壊した弾が貫通し、そのままマネキンの後方にいた女へと迫る。
女がそれを手の甲で弾くと、
「キンッ」
と、先程鉄玉を弾いた時と同じく金属同士のぶつかる音が鳴り響く。
「っ!?」
銃弾を弾いた女が痛みを感じ、手に目をやると、少しではあるが傷が入り、血が流れていた。
「あら。女の体に傷をつけるだなんて、どう責任を取るつもりなのかしら?」
そう言って流れる血を舐めとる女に、重清は息を呑んで思う。
(エ、エロい。)
と。
(確かに、さっきの攻撃と比べても今の弾丸の威力は強かったわ。それでも、まさか傷つけられるなんてね。本当に、そろそろ時間が無くなってきたわね。)
女がそんな事を考えている中、離れて見ていたノブが、雅に対して口を開く。
「なるほど。あの銃から放たれる玉には、金の属性を使ってるんですね?」
「半分正解だね。確かに今の攻撃に使った弾には、金の属性が使われていた。だがね、さっき水弾を撃ったときには、金の力は感じなかったよ。」
「へ?じゃぁあの弾は?」
「おそらく、あの子の作った弾丸の術は元々、属性を使っていない術なんだろうね。そこに、新たに金の属性を付与する事で、金の力を纏った弾にしたんだろうさ。」
「そ、そんなことが。シゲ、すげぇな。」
(おそらくは、裕二あたりの入れ知恵だろうね。ここまでの術をあの子に作らせるなんて、公弘の教え方もたいしたもんだ。2人が本気で教えれば、ここまでになるとはね。
まったく、本当にわがままな子たちだよ。)
雅は寂しそうにため息をつく。
雅とノブがそんな会話をしているのをよそに、女が口を開く。
「どうやら、本当にそろそろ時間がないみたい。遊んであげられるのもあと少しね。」
そう言って微笑む女の表情には、寂しさと覚悟が入り混じっていた。
「そういえばあなた、さっき雅の殺気で体を強張らせていたわね?だったら、こんなのはどう?」
そう言った女から、重清が感じたことの無いほどの殺気が溢れ出す。
「あ、あ・・・・」
それを感じ取った重清はただ、その場で足を竦ませる事しか出来なかった。
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