忍者部、戦力強化
第55話:古賀の正体
「よし、吹っ切れたことだし、先程の説明の補足をしよう。」
そう言って、古賀は説明を始める。
「まず、ショウが始めに言っていたじゃんけんのような関係。これは相剋(そうこく)の関係と呼ばれている。水が火を消滅させることができるようにそれぞれ、水剋火、火剋金、金剋木、木剋土、土剋水と呼ばれている。」
「なるほど、じゃからあのとき、おれの金鎧がアカに破られたのか。」
「そういうこと。それに対して、ショウが吸収すると表現した関係は、相生(そうしょう)の関係と呼ばれているんだ。水が木を育てるようにそれぞれ、水生木、木生火、火生土、土生金、金生水、と呼ばれる。」
「でもそれって、相克とあんまり変わらなくないですか?」
アカがふと、疑問を口にする。
「いや、それがそうとも言えないんだ。アカは、炎拳の術が、ソウの木砲の術で大きくなっていたね。ちょっと手を見せて?」
そう言われてアカが手を差し出すと、古賀がその手を軽く握る。
「痛っ!」
「やっぱり、少しだけど火傷してるね。」
そう言って古賀はアカの手を離し、全員にそれぞれ目をやって、また話し出す。
「相生の関係は、確かに相克の関係と似ているところはある。でも、明確に違うんだ。
例えば、アカが全力で火鎧の術を使い、そこにソウが全力で木砲の術を打つとする。すると、どうなると思う?」
「もしかして、これ以上の火傷を?」
アカが手を擦りながら言うと、古賀が頷く。
「その通り。火は、確かに木を吸収することができる。でも、それによって生まれた大きな炎を術者が扱いきれない場合、炎は術者に襲いかかるんだ。」
「あ。」
ソウが何かを思い出して声を出す。
「そっか。ぼくの木砲の術は、ぼくから離れていたから、直接ぼくには影響が無かったんだ。」
「そ。遠距離攻撃であれば、単純に相手の力を吸収して、攻撃力を増す事ができる。ただし、それはあくまでも同程度の力であれば、ね。」
「はい。実際、2度目にやったときは、ぼくの木砲の術は、ショウさんの水砲の術に消されてました。」
「うん。同じことは相克の関係にも言えるんだ。いくら属性が優位に立っているとはいえ、術の練度が低ければ、意味はない。」
「じゃぁ逆に、さっきのわたしの術の例みたいに、相生の関係を利用して、相手にダメージを与える方が簡単ってことですね!」
アカが自信を持って言うと、古賀はそれも否定する。
「いや。例えば、アカが最小の力で炎拳の術を発動したとする。そこに、ソウの木砲の術が当たったら?そこから発生する炎が、アカが操れる範囲の炎だったら?」
「あ。」
アカが声を出す。
「そう。アカは、最小の力を使って、最大の攻撃を繰り出すことができるんだ。」
「・・・高校のカリキュラムになってる意味、今ならわかります。」
ソウが、そう呟く。
「わかってくれて嬉しいよ。そうやって相手の力を見極めることができないまま、相性だけに囚われてしまうと、大きなしっぺ返しを喰らうことになるんだ。だからこそ、中学生には心・技・体の力の扱いと、相手の力を見極める力を徹底的に教えることが必要なんだ。」
古賀の言葉に、全員が納得するように頷く。
だから、と、古賀が続ける。
「これからも、属性の相性については教えていくし、実戦の中でも取り入れてはいこうと思う。でも、基本的な路線は、これまでどおりとしたいんだけど、それでいいかな?」
「はい!!」
全員が、声を揃える。
「・・・ありがとう。私は、本当にいい生徒に恵まれたよ。」
「それを言うなら、僕らの方こそ、いい先生に恵まれましたよ。」
ショウのトドメの一撃に、古賀の目が潤むのを、一同が見逃すはずもなかった。
アカ「あっ、先生泣いてる!!」
ツネ「バカ!アカ、そういうときは見てみぬふりしろよ!」
シゲ「ツネ、大人ー!」
プレ「重清は、まだガキだな。」
ソウ「シゲ、プレッソに言われちゃってるよ笑」
シン「大人が泣くとこ初めて目の当たりにしたわー」
ノブ「はっはっは!先生、おれの厚い胸板貸しましょうか!?」
ケン「ゴリラの胸板なんて、お金貰っても嫌だろ。そして、シンはアカより無神経。」
ショウ「おや、珍しくケンが一番喋ってるね。というより、この反省会始まって初めて喋ったんじゃない?」
もう、言いたい放題である。
一瞬呆気に取られた古賀が、目頭を抑えながらため息をつく。
「あー、やっぱさっきの撤回。お前らみたいなクソガキ、死ぬほど鍛えてやるから覚悟しろよ。」
「・・・」
古賀の言葉に、場が凍りつく。
「いやいやいやいや、今先生『クソガキ』って言ったぞ!?って言うか、口調変わってんじゃん!!」
つっこみ代表の恒久が、驚きの表情を浮かべて叫ぶ。
「いやー、俺さ、今までずっと、ずーーっと、理想の教師の真似してたわけよ。23で教師になって12年間ずっとだぜ?
でもな、お前らの自由さ加減見てたら馬鹿らしくなってきたわ。
これでも俺はな、中1の途中までそれなりにやんちゃしてたんだぜ?それが、ここまでずっと素を隠して猫かぶってたんだ。
もうここでくらい、素でいいだろ?」
そう言った古賀は、すぅっと息を吸って、
「俺は!甲賀ノリ35歳独身!
尊敬する雑賀平八の最後の弟子!
こいつ等を立派な忍者にしてみせるから、先生、見ててください!
そして!この世からリア充どもを消し去ってやる!!
あぁーーー!結婚してぇーーー!!」
(いや、結婚はしたいのかよ!)
一同が心の中でつっこむなか、叫び終わった古賀が、
『はい、次お前の番』
とでも言うように重清に促す。
それに重清は、勢いでノる。
「おれは!雑賀重清!!雑賀平八のまご・・・・・
って、えぇーー!?古賀先生ってじいちゃんの弟子だったの!?」
「いや、最後までのらねーのかよ!そして気付くのおせーーよ!」
つっこみの特攻隊長恒久が、いつにも増したキレを見せる。
「まったく、お前ほんとに先生の孫なのかよ?
平八先生が俺の師匠ってのはマジだぜ?
ちなみに、さっきの『猫かぶる』ってのは、平八先生がアレを被ってるのにひっかけてんだぜ?」
「おっ、古賀上手いこと言うなぁ。」
プレッソの言葉に、古賀と重清が笑っていると、2人と1匹の足元に、ストンっと、手裏剣が刺さる。
直後に2人は、まるで示し合わせたかのように、見事な土下座を披露するのであった。
プレッソの、おそらく猫史上初の土下座とともに。
それを見たショウとシンは、視線を交わして呟く。
「「これから余計に騒がしくなるな」」
と。
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