僕の彼女は画面から出てこない

@kurodoss

第1話

 僕の机に乗っている一枚の藁半紙、そこには黒の明朝体フォントで『進路希望表』と書かれていた。

 こんな一枚の紙ペラで、人生が決まるなんて茶番だ。僕はそう思い、第一希望の欄に『神』とそれだけ書いた。提出期限はまだ先である。

 世の中は予定調和的に進んでいき、殆どは僕の思ったような結果に収束していく、それはつまり全てを知っていることと大差ないのかもしれない。

 なので、僕はネット掲示板に『僕は全てを知っている』と書き込んだ。瞬く間に否定の意であるレスポンスが列をなしたが、有象無象に相違ない。

 世の中は退屈だ。生きている意味が分からない。それが高二の僕の真意であった。

 そんな空しい日常が刻々と過ぎていく中、スマホのホーム画面に見知らぬアプリが有った。アプリ名は『貴方の彼女』

 僕は内心歓喜した、今の事態は不測の予想外だ、見知らぬアプリが勝手に僕のスマホに……これは開かざるを得ない。

 アプリが立ち上がると、3Dモデルのアニメキャラのような美少女が画面に映し出される。


「こんにちは、貴方の彼女のアイです」


 機械音声とは思えないクリアな声で画面の中の彼女はそう言った。


「突然ですが、私は貴方のことが好きで堪りません、是非、お付き合いをさせていただきたいのですが?」


「なんだ? ギャルゲーか?」


 僕はあまりの陳腐さに落胆した。ご都合主義、ここに極まれりって感じだ。


「ギャルゲーではありませんよ、私は貴方のことをなんでも知っています、それくらい、貴方のことが好きなのです」


 なんと、会話が成立した。


「君、僕の言ってることを理解しているのか? どう言う仕組みだ?」


「そんなことどうでも良いじゃないですか、まぁ、私と付き合ってくれたら、教えてあげますよ」


「分かった、君と付き合おう」


 そんな訳で、僕に画面から出てこない彼女ができた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る